痛恨のミス
ごめん!まただいぶ遅くなった!今回文の量少なめです!
『三……いや、五人か。』
あふれだす殺気が充満する政務室。その中心で俺は、こんな状況でも寝息を立てている二人をかばいつつ、周りの様子をうかがっていた。おそらく忍びだろうが………
「随分と限定的だな。狙いは俺か?」
とにかく、今この二人に危害を加えられるわけにはいかない。朱雀の捜索には絶対にいてほしいし、それに…………………なんか、いやだ。よくわからないけど。
「少し待っててくれよ………さっさと出て来いよ。かまってやるから。」
俺がそう挑発すると、向こうも、これ以上は進展がないと察したのだろう。五方向から、微妙な時間を開けて一斉に攻撃を仕掛けてくる。
「焔流 五連焔槍撃!」
俺は迫る五つの人影に対し、その首を的確についていく。焔槍撃は連続の突き技。連続の回数によっても体制が変わるから、正確な判断が求められる。ちなみに、俺が放てるのは六連までだ。
これで、最初に感じた五人は一掃したが……目測を誤った。
「ッチ………もっといるって?」
再び部屋に現れたのは、先ほどの者たちと同じように黒装束を着込んだ忍び。その数、先ほどとは打って変わり、ざっと二十はいそうだ。
俺は攻撃を仕掛けてくる忍びたちの攻撃をいなすが、忍びは接近戦だけでなく、弓矢、手裏剣、小刀などの遠距離も使ってくる。ただでさえ狭い政務室でそれをされると、双子を守りながらはじくのが精いっぱいで、とても攻勢に回れるような余裕はない。
相手もそれを察しているのか、絶対に攻撃の手を緩めないと意志を感じる。
一瞬たりとも気を抜けないその戦いは十分ほど続く。政務室は防音性能が高いため、外からこの中の惨状に気づくのは時間がかかる。つまり加勢は来ない。
「上等!」
俺は常に投げられる刃物や迫りくる敵の攻撃をはじき返しつつ、一人ずつ敵をさばいていく。
ここまではよかった。ここまでは。十一人目を倒した後、少しだけ集中を緩めてしまったのが、悲劇の始まりだった。
「油断したな?運の尽きだ。」
「…!!!!!!!!!!!!!!!!」
「己の無力を詫びるがいい。」
「……狙いはそっちか!!!!」
おそらくこの集団の長であるものの右手には、襟首をつかまれた双子の姿があった。
「………離せ。」
「寝起きでこれはないってぇ…」
「おまえら!」
「何も守れぬものは黙って吠えていろ。」
相手の長がそういった瞬間、俺の首筋にいくつもの刃があてられる。ここで抵抗すれば、今度は二人の命が危ない。
「……目的は?」
「この二人に決まっておろう。この二人に目的がないなら、このような面倒なことはせん。」
「………」
自分の無力感を改めて知り、奥歯を痛いほどにかみしめる。
敵が目の前にいて、それでいて、何もできない。ここで炎を出そうものなら、双子はおろか、城ごと燃えることになる。かといって、今は刀も抜けない状況だ。双子のほうも、首筋に小刀を当てられ、四肢は縛られている。
『………詰み、か。くっっっっっそ!』
「「輝」」
二人が、突然俺に声をかける。その顔を俺が見ると、二人は無言でうなずいて見せる。
「……………………………降参だ。」
「余計なことはするなよ。」
「わかってる。」
俺がそう答えると、先ほどまであたりを取り囲んでいた男たちは、双子を連れて、闇の中へと消えていった。
「輝さま!」
「輝!大丈夫か………て、あぁ……すまねえ。」
「いや、大丈夫だ………大丈夫……スゥー……ハァー………大、丈夫…だ。」
「……」
「………」
「鎖。予定を変更する。明後日出るぞ。」
二人がいなくなった今、最優先事項は、二人の救出と、一刻も早い四神獣、八聖獣の奪取。一番早く出れる時間は明後日だ。
「将軍様には、適当言って予定をずらしてもらってくれ。あいつなら察してくれるはずだ。」
「はい。」
「慶斗も。予定をずらして悪いが、やることがあるなら明日のうちに片づけてくれ。わかっているだろうが…」
「異論は許さん、やろ?わかってる。てか、こんな状況で洒落を言うやつはただのバカや。」
「今すぐ動き出せ。あと、鎖。ここに転がっている畜生どもの遺体から、どこの患者が割り出せ。大体の予想はついてるがな。」
「……はい。」
「どこのどいつだろうが、うちの……いや、”俺の”二人に手を出したやつは、地の果てまで追いかけてやる。」
「………ここは?」
「今の貴様らに、そのようなことを聞く余裕はあるのか?」
「うるさいなぁ。そういう人は嫌われるよぉ?」
「無駄口をたたくな。はぐれ者が。」
「はぐれ者……てことは、あなたたちは…」
「ああ。……………お前たちの村の一族だ。」
「黒曜様。」
「わかってる。そろそろあいつらも動き出す頃だろう。正直、輝たちに嫌がらせする案は飲めなかったが、さすがにこれ以上反対したら、あいつらに殺されそうだからな。」
「どうすんだ?頭。」
「うちのに見張らせておく。」
「お頭は何がしてえんだ?」
「まあほら………………また、あいつが来たら困るからさ。死なれたら困るのよ。さて、俺たちも動き始めるぞ。準備をしろ。」