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双狐炎狼伝  作者: おかかのみやつこ
四神八聖黒ノ獅子
31/39

心配性

ごめん!あとがき抜きます!

あの後。俺たちは全員でおばあさんに礼を伝えた後、後も振り返ることもせず、超特急で甲斐の国へ戻ることになった。

なかなか集まることのない面子(メンツ)だ。本来ならここまで急いで国元に帰ることもなく、近くの町の観光などをしても……なんていう想定を、土地勘のある慶斗たちとしていたのだが、あいにく、そんな余裕が今はない。なぜなら…

「……どうなった?鎖。」

「はい。反乱は見事鎮圧。そのほとんどが、あの双子の功績といってもいいでしょう。」

「いくら徳川家臣団といえど、あの二人に勝つことはできなかったか。改めてすごいな。」

「話は変わりますが、なにゆえ、天下人の一門である徳川家臣団が、われらごときに反乱を起こしたのでしょう?」

「さあ。だが、俺たちは理由あれど、徳川から受けている待遇はいい。外から見れば、まさに虎の威を借る狐ならぬ、幕府の威を借る小さな一族。徳川の中にも、それに不満を持っている者たちもいるんだろう。実際、持たれていても何も文句を言えたものでもないし、大体想定内だ。」

「そうですか…」

「実際、向こうの軍勢に、徳川本家はいないんだろ?てことは少なくとも、幕府が命令した攻勢ではないだろう。これに関しては、また今度俺が殿様に報告することになるから、反乱……というかは怪しいところだが、攻撃してきた徳川分家は、お(とが)めを受けるのは間違いないだろうな。」

「徳川親族が、古からの家臣団の一員である家に攻勢を仕掛ける…本家も素通りはできないでしょうね。」

「だな。」

「輝に鎖。どこや思って探してたら、ここにおったか。」

「どうした?」

「お探しの朱雀と、もう一体の四神獣。場所わかったぞ。」

焔雲家の家宝として置いてあったものの中に、やけに詳しい日ノ本の地図がある。何かあるのかと思って売らずにあったのだが、それはどうやら、四神獣、八聖獣が授ける宝石をその付近に置くと、自動的にその持ち主の場所を示してくれるというものだった。

「こんなことなら、青龍ン時もこうやって探せばよかったな。」

「あの時は宝石に意味があることすらわかってなかったんだ。仕方ないだろ?」

「では次に行く場所は、ほぼ確定しているということでよろしいでしょうか?」

「少なくとも、前みたいにぶらぶらすることはないやろな。明日にでも行くか?」

「いやいや。やっといろいろが治まったところだし、そのせいで荒れたところの整備も残ってる。あいつらも相当お疲れだろうしな。」

「ですが、早くいかないと、また黒…盗人にとられる危険が。」

「ああ。出発は一週間後にしよう。そこまでなら、何とか俺も、諸々を終わらせられる。鎖。桜に伝えといてくれるか?」

「承知しました。」

「慶斗も、準備のほう頼む。」

「りょうかいりょうかい。相も変わらず、人使いの荒い殿様やな?」

「じゃないとお前、前日まで用意しないだろ?」

「さあ?」






その夜のこと。

一週間後という期限を出したからには、その本人が遅れるわけにはいかない。ということで、俺は一人静か、戦の事後処理にあたっていた。

「ったく、誰だよこれ起こしたやつ。まさか俺たちに迷惑かけるためだけにやったんじゃないだろうな?」

愚痴をこぼしながら、俺は次々と、やるべきことを終えていく。

江戸の将軍ク…将軍様に出すための、戦鎮圧の経緯・被害報告。首謀者に対する処分の願書。部下への説明。領土の取り決めなどだ。俺がたまっていた仕事の半分を終わらせたとき、後ろから、唐突に、あくびのような声が聞こえた。人が苦労しているときにあくびができる奴など、俺はこの世で三人しか知らない「俺を入れて六分の三だから……割と多いな。」

「そういう時は、二分の一っていうんだよぉ?算額苦手?」

「今は数の話だからいいの!…て、こんな夜中に珍しいな、陰。眠れなかったか?」

そう俺が利くと、陰は小さく首を縦に振る。

「戦のほてりが残ってたみたいでさぁ。後は何というか……やっぱり、思い出しちゃうしねぇ、あの日のこと。」

「こんなこと聞くのはあれだけど、それはどっちの「あの日」?」

「……どっちも、かな。戦もそうだし、昔のこともそうだし。」

「じゃあもう一個聞くけど、いい?」

「なぁに?」

「一本道で、後ろには仲間の屍。前には倒すべき、だけどとても強い敵がいる。陰はどっちw…」

「まえ。」

俺が問題を言い終わるより先に、陰がその口を開く。

「どれだけ後ろを見てもさぁ……死んだ人が、戻ってくることはないんだよねぇ…」

「……」

「怖いんだよ。」

「何が?」

「誰かが死ぬのが。」

「…」

「輝とか影を見てるとさ、ガンガン前に進んでいくじゃん?イイんだよぉ?それで。でも……私には、そのどっちかが危なくなったときに、助けられるほどの力はないし、どっちか選ぶってなったときに、選べる自信もない。」

「……」

「だから………………怖いよねぇ………」

「……なんだ、そんなこと。」

「そんなことってさぁ…」

「お前は、影の方みてたらいいんだよ。影とお前は一心同体だろ?まずは自分の半身を見ろ。あと、必要な時以外、過去は思い出すな。さっき自分で言ってただろ?」

「……輝は?」

「そんなときになったときは、意地でも二人を助けるよ。」

「なんで?」

「なんでだろ……まあでも、ほら。二人なら、何とかしてくれるだろ?」

「……そか。」

「……あと、言わないようにしてたんだけど、さも当たり前のように膝に乗るのやめ………」

「……」

「…まあ、今日のところはいいよ。」

そうして話していると、声が聞こえていたのか、目を半開きにした影もこちらへやってくる。

「何してるの?陰。迷惑でしょ?」

安らかな眠りを邪魔され、陰に抜け駆けされ、影は至極不機嫌そうである。

「……輝は、私の時も、同じこと言える?」

「当たり前だろ?」

「本気?」

「超本気。」

「そう。」

そういいながら、影は俺の空いている方の膝に腰かける。そんな眠そうな二人を見て、大きなあくびをしようと、俺が体を伸ばした、そのとき。

「……!」

部屋に充満する鋭い殺気に思わず寝ている二人を着ていた羽織で隠し、刀の柄を手に取る。

殺気が放たれるのは、この部屋の天井。視線は、主に三方向。

「……誰だ、お前ら。」

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