祠の中で、
今日は割と朝早く出せました。これからも頑張ります。後、今回の話はちょっと分量少なめです。多分次の話は長くなるんじゃないかな?キリが悪かったので。
というわけで28話。おたのしみ(?)ください!
緊張の一瞬が過ぎ去り、約一分。
集中の糸が切れた俺はあれから、へなへなと地面に座り込んだきり、そのまま立ち上がれずにいた。
「ハァ~、何とか勝てた~。もう少し遅かったら死んでたな。」
極度の緊張、その余韻で震える筋肉。それを無視して俺は、壁を支えにして立ち上がる。
「でもまだ、一区切りついてもないんだよな。」
実際、ここは洞窟に入ってすぐのところ。ここが最奥なわけがない。その気持ちを感じたのだろうか。俺の首にかかっている青い宝石が、まるで「早く行け」とでもいうように明滅する。
そうして、まだ消しきれぬ疲労をそのまま、勢いに任せて歩き出す。
「青龍を見つけるまで、止まらせてはくれなさそうだな。」
【—ここからはダイジェストでお送りします。—】
「—っと、これどうすればいいかな…」
俺の体は今、落とし穴の中にあった。この洞窟、落とし穴がやけに多いのだ。そのうえ、穴の下には無数の刀が待ち受けている。
「………どうするかな」
「—なんで!なんで!」
場面は打って変わり洞窟中盤。俺が追いかけられているのは、通常の大きさの二十倍にも迫るほどの大蜘蛛だった。
「無理!無理!ただでさえ虫苦手なのに!」
おまけにずっと追いかけてくるから、攻撃しようにも方向転換する機会がないのだ。つまり俺が今できるのは、しっかりと前を見据えて逃げることのみ!
「なんでだよ~!!」
「なんだ?これ。」
さらに場面は変わり、俺がいるのは洞窟内のくぼみの一つ。そこには、明らかに何か入っていそうな木箱が置いてある。ただ、その箱を開けるには鍵が必要らしい。来るまでにそれらしきものは見なかったけど……うん?
「まさか……」
後ろに戻り、先ほどなんとか巻いた蜘蛛の首元を確認すると…
「ああ!!」
「本当に萎える。」
結局、さんざん苦労してあけた木箱に入っていたのは、右手しかない篭手だった。
元からないのか、それとも何者かに盗まれたのかは定かではないが、少なくとも、今のところの使いどころはないだろう。
その後も、弓仕掛けに殺されそうになったり、毒沼を飛び越えたり……って、
「さすがに警備が厳重すぎないか?いや、神様がいるんだからわかるけど。それにしても、よ。これ、この宝石持っていてもたどり着けなかった人多そうだよな。」
そんなことをぼやいていると、いつの間にか、大きな扉の前に来ていた。
「扉?」
様々な装飾が施された、青銅色の扉だ。今まで木箱と罠以外人工物は見ていなかったから、こういうものを見ると、なぜだか少し安心する。
そしてその扉をよく見てみると、両開きになっている扉のちょうど真ん中に、何かがはまりそうなくぼみがある。
「これを入れるってことか?」
まあ、もし入らなくても、また道中へ探しに戻るだけだ。俺が首にかけていた宝石を外し、そのくぼみ近づけると、宝石は、俺が想像していたよりもぴったりと、そのくぼみにはまった。
「ええっと、合言葉か何かがいる感じか?俺知らないよ?」
「聞こえているぞ。」
「ゲッ」
俺が扉の開け方について疑問をこぼすと、扉の奥から声が聞こえてきた。話し方からすると、今までのボヤキは諸々聞かれていたらしい。
「その石は、私が認めたものしか手にすることはない。それだけで合言葉のようなものさ。」
扉の奥の何者かがそういうと、青銅色の扉は、「ギギギ…」というきしむような音を立てて開いた。扉が完全に開き、まず眼前に広がるのは、様々な青系統の色に装飾が施された、荘厳な空間だった。
そしてその中央には、一つの剣と、その近くの椅子に、一人の女性が座っていた。先ほどの声の主だろう。
まるで海のように濃く、それでいて空のように明るい青色の髪は膝あたりまで伸び、流麗な着物を身に着けている。腰には刀ではなく、この広間の中央に立つ片手剣の鞘と、芭蕉扇のようなものをさしている。
「自己紹介が遅れたな。すまない。」
みたところ三十台前半くらいに見える女性は、透き通るような、それでいた覇気のある不思議な声で言う。
「いや、別に。そんなことであやまられるようなら、俺は十回土下座しても足りなくなる。」
「それもそうだな。」
女性は口端で笑うと、柔らかな笑顔で、その名を名乗った。
「改めて、我が名は四神獣・青龍。審判を下す神龍とされていたものだ。」
どうでしたか?青龍が女性で、少しびっくりした人もいるのではないでしょうか。
今回は初のダイジェストを入れてみました。あの場面、ダイジェストにすると分量が少なくなるんですが、一つ一つ書こうとすると、これもなかなかに大変なんですよね……。楽しみにしていた方は、申し訳ありません。
それにしても、輝が手に入れた篭手、何の意味があるんでしょうね。片手ですし。篭手ってもともと、中世の騎士とかがよくつけてるはずなんですけど……