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双狐炎狼伝  作者: おかかのみやつこ
四神八聖黒ノ獅子
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蒼き侍

今回は朝早くに投稿できました。

今回の話は、前回の話よりはボリューミーだと思います。

好きな時に、好きなように読んでもらえると幸いです。

どこかしらの洞窟の中。

本来誰もいないはずのこの場所で、二つの刃が互いを滅ぼしあう音だけが響き渡る。

『クッソ、硬い。』

先ほどから、手を止めることなく刀を振り下ろし続けているのだが、俺が相手にしている青い侍からは、疲れる気配が全くと言っていいほど感じられない。

ただ、自分の疲れを押し込み続けて刀を振り続ける俺に飽きたのかそうでないのか、突然打ち合いをやめ、俺との間に十歩分ぐらいの空間を作る。そして下がった次の瞬間には、手荷物刀を鞘に一度納め、刀の柄を持ったまま足を引き、体制を低くする。

攻撃してきた相手を真っ向からはじき返すための、反撃の構え。

「それにしても……この覇気、いったい何者だよ…」

向こうから攻撃にすることがないか前でも、この圧。先ほどから頭の中で試行錯誤を繰り返しているが、こいつ、一切のスキがない。どこから攻撃しようが、確実に反撃を決められる。それも、必ず致死の一撃を。この圧倒的強者感は二流や三流の者が出せるものではなく、今は亡き父、焔雲 閃光や、今も俺の頭の中にこびりつく怨念、呪骨 鮮血と同じものを感じる。ただ、その威風堂々と構えたその足元に、違和感を覚えるのは気のせいだろうか…

「その構え、受けてやるよ!『焔流(ほむらりゅう) 草薙(くさなぎ)』!!」

言い終わるが早いか、俺は蒼の侍の膝あたりを狙って一閃。

俺たち焔雲家独特の剣技「焔流」。中でも先ほどはなった「草薙」はその名の通り、下方向への攻撃を(むね)とする近距離広範囲型の斬撃で、そのうえ、もともと刀にまとわせる炎を最大限利用することを主においているため、どちらかといえば動きが少し遅い技が、焔流には多い。だが、草薙はその中でも一位にいを争うほど早い技のため、今のように敵が抜刀型や居合型での反撃を狙った際にその体制を崩すのに使用したり、素早く広範囲への攻撃が必要な際に利用する。………………が、

「この速度でしっかり受けて、そのうえでできる限り無効か、って、恐ろしいな。」

あの侍、想像以上に恐ろしいかもしれない。遅い剣技とは言っているが、日本全体でみれば、炎での加速もあるため、本気を出せばその速度は疾風にもとどくといわれる。その中でも早いといわれるあの斬撃を、蒼の侍は抜刀した刀で、いとも簡単にいなしたのだ。反応するだけでも至難の技を、完璧に受け切ったのだ。末、恐ろしい。

だが、そんなことを言っている場合でもない。青の侍は、俺の攻撃を受けたのもつかの間、即座に体勢を立て直して、そのまま突進突きを放つ。

その剣技の速度と正確さ。もはや、刀が本体化と見間違えるほどに美しく恐ろしい、正確無比な技だ。もともと突進突きは、刀を正面に突き出した状態で動くため、微妙に目標点からずれることがほとんどだ。そんな突き技を、この侍は、一切のブレなく放ったのだ。

たとえるなら、正確無比な弾を撃つ超強力な狙撃手が、刀を撃ってきているようなものである。

「…⁉」

そのうえ、本来この技はあとスキが多いはずが、そのすきすら吸収し攻撃に転用してくるあたり、戦闘に対する勘の高さも一級品らしい。






何度も、何度も、何度も、何度も。

幾星霜、幾星霜、幾星霜、幾星霜。

ついては離れ、突いては離れ。

斬り、受け、走り、よけ、跳び、頭と体をフル回転させながら、目の前の逃げられない脅威に抵抗する。もしここであきらめれば、どうなるかわからない。遺骨すら残らない可能性だってある。まずまず、ここで止まるわけにはいかないのだ。

が、繰り出され続ける蒼の侍の攻撃をよける暇もなくなってきて、致命傷になる可能性のある(ほとんど全部が該当する)斬撃のみをはじき、それ以外は、歯を食いしばりながら受け続ける。

身体のあちらこちらに斬撃の痕がつくが、気にしている場合ではない。

肩から、腕から、胴から、脚から赤が飛び散るが、どうだっていい。

無事に進む。青龍に会う。あいつらのもとに帰る。それ以外の望みなどない。

が、そんなことを言っていても、こちらの動きは疲労によって鈍りつづける。向こうの足運び、刀さばきに、後れを取り続ける。

「このままじゃ……ま、死ぬだろうな。」

途切れかけていた意識をも再度集中し、体のリソースをできるだけ割く。目の前の剣鬼を前に、施行を、思考を巡らせる。巡らせ続ける。常に目を開き続けるため、次第に乾いて痛くなってくる。関係ない。呼吸をする暇がないから、次第に苦しくなってくる。関係ない。

『唯一の打点は、首か。』

相手が着ているのは、鎌倉より続く形の、日ノ本の甲冑。機動力を関節を意識したつくりのため、必然的に首は覆われなくなる。

一つ問題といえば、その後ろ側は、しっかりと鎧でおおわれていること。そのため、真っ向から、先ほど蒼の侍が繰り出したような、正確無比な突きで貫かねばならない。

額に冷や汗を浮かべている暇など、ない。

「やればいいんだろ?やれば!」

蒼の侍との距離は、約七尺(今でいう約2メートル)。この距離なら…

俺はもう一尺ほど蒼の侍から距離をとると、刀を持つ右手を水平に後ろに引き、逆に左の手を前に出し、重心を低くする。刀の切っ先の狙いを定める。

右足を後ろに、左足を前に。

右に腰をひねり、自身の体を弓に、刀を右腕を、それにつがえる矢に。

深呼吸、一つ。

筋肉を弓と同じように引き絞り、灰の中の酸素がいっぱいになった瞬間、一切の動きを制止する。

静かに、炎の火力を上げ続ける。

侍がこちらに向けて駆け出す。突きを出す前に仕留めようとしているのだろう。

こちらの間合いまで、五秒。

侍が刀を構える。

こちらの間合いまで、あと四秒。

刀の温度が上がり続ける。

こちらの間合いまで、あと三秒。

侍が刀を振り上げる。

互いの間合いまで、あと二秒。

侍が足を踏み込む。肩にまとわる炎の温度が、過去最高まで達する。

互いの間合いまで、あと一秒。

刀が眼前に迫る。

侍の青い目が鈍く光る。

目を見開く。

首を見据える。

もう一度、地面を踏みしめる。

刀を突きだす。

一点の狂いも、ない。

時間にして、約コンマ一秒。

「『焔流 焔流烈穿(えんりゅうれっさい)』」

炎をまとった刃は、一切の音を立てることもなく、ただただ無慈悲に、蒼の侍の首を貫いていた。

刀を抜けば、蒼の甲冑に身を包んだ体が、地に崩れ落ちた。

今回初めて出てきた剣技「焔流」。

生まれたのは、意外と室町時代だそうです。(by閃光なので、嘘か本当かはわかりません。)

一個前の将で、先決に向けて輝が打った技、「赫冥激狼」も、焔流そのものではありませんが、そこから派生した技です。

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