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双狐炎狼伝  作者: おかかのみやつこ
四神八聖黒ノ獅子
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祠を知るもの

「ねぇ輝、ほんとにこの辺にあるのぉ?そろそろ疲れたんだけど…」

小鳥の鳴き声と、木々の葉音が静かに響く森の中。

陰が文句を言い始めたのは、休憩から、まだ一時間も経過していないころだった。

結局あのあと、俺と鎖とでさくらを何とかかんとか説得し、四神獣の調査隊に引き込む―引きずり込む、巻き込むともいう―ことができた。そのうちのほとんどが鎖の手柄といってもいいのだが、本人は否定している様子。

そして俺たちは、慶斗が目星をつけていた場所のうち五つ目。とある森に足を踏み込んでいたわけである。珠海、といってもいいほどに木々が生い茂るこの森に、何かがあるとは思えないのだが。まだ、先ほど休憩をとった村近辺のほうが可能性がある気が…

「ねぇ、ヒ~カ~ル~?」

「わかったわかった。おぶってやるから、せめてもう少しは歩いてくれ。影、そんな目しない。…足けがしようとするのやめろ!その場合俺は二人をおぶらないといけなくなるんだが⁉」

「いいご身分やな。」

「そう言っていただけて何より…」

「ほめてねえぞ?」

「笑いながら言うのやめろ、余計に怖い。」

「一言多いぞ?」

話が脱線したが、陰が文句を言いたくなる気持ちもわかる。

事実、ここまでの四つの場所は無駄足だったわけだし。

一つの場所を確認するのに、短くても二日、長ければ一週間かかることもあったから、低く見積もっても、確実に二週間は、城を空けていることになる。

そんなに空けていて大丈夫かと心配になるが、そこは、留守を任せてきた家臣たちを信じるほかないだろう。

「桜姉さまぁ~」

「相手してくれなくてさみしいのはわかるけど…鎖。よろしくね★」

「勝手に話を進めないでいただけると。慶斗様。」

「ああ。正直、ここが一番確率が高い。今までのは、寄り道だったって考えてくれればええやろ。」

「ここまで長い道のりを寄り道というのか…」

「ええやんええやん。」

「そんなこと言ったってな。ほら、二人もだいぶ疲れてるじゃねえか。」

「私を一緒にしないでくれる?」

「二人」という部分が気に入らなかったのか、影が顔をしかめ真る。

が、その顔に疲労の色が浮かび上がっているのも、これまた(しん)である。

「ま、確率が対っていうなら、頑張って探してみようぜ。もしなくても、何とかはなるだろ。」

「でた。輝の楽観主義。」

「それ、自分もきついときに出るから、正直何の助けにもならないんだよねぇ。」

「おい、そんなこと…?」

俺は、懸命に俺のプライドを傷つけようとする二人から目を離し、ふと前を見る。するとそこには、俺たちの身長の半分ぐらいの、小さなおばあさんが立っていた。

「あなた方。このような場所で、何をされているのですか?」

不思議そうに尋ねるおばあさんに、この手の話が得意な慶斗が応答する。

「ああ、俺たちは今、祠?みたいなのを探してるんやけど、おばあさん知らんか?そこで探したいもんがあんねん。」

「…あなた方が探しておられるのはよもや、青龍神様のお祠ではありませんか?」

「せやせや!」

どうやら、おばあさんは、青龍について、何かしらの情報を持っているらしい。

「青龍神」という言い方には少し違和感を覚えるが、「祠のある地域の近くでは、青龍は神として祀られている」という、慶斗からの情報を思い出し納得する。

「……………あなた方、どこの家の出でございますか?まさか、呪骨家なんてことは…」

「いえ…でもおばあさん、なぜ、その家の名を?」

呪骨家はおろか、派生元である焔雲家でさえ、そこまで名の知れた家ではない。知っているのは、俺たちの行きつけの店と、現徳川将軍家とその一族、後は、焔雲本家と、そこからの派生先しか知らないはずである。つまり、このおばあさんは、何かしら焔雲家とのつながりがある、ということになる。

「詳しくは私の家で話すとしましょう。どのみち、もう夜です。」

「助かります。」

こうして俺たちは、この不思議なおばあさんの家に泊まらせてもらうことになった。


「で、ばあさん。結局、あんた何者なんや?」

どうやら、慶斗の脳内辞書に、「敬語」というものは存在していないらしい。計算も早く、鎖や桜と並ぶ切れ者のはずなのだが、ところどころ、こういう抜けているところも見受けられる。それがおそらく、焔雲の仲間たちから「まだまだ青い」と揶揄(やゆ)される所以(ゆえん)なのだろう。

「あなた方は、焔雲家の方々ということで、間違いはありませんか?」

「ああ。俺たちは焔雲の人間で、今は俺が当主を務めている。できることなら、何か証明できるものを持ってこられれば良かったんだが…鎖、何かないか?」

「…あそこに積みあがった政務ぐらいでしょうか。」

鎖につられるように家の角を見てみると、そこには、山のようにうずたかく積みあがった白い用紙が。

それは、俺が城においてきた…否、おいてきた()()だった政務という名の義務たちだった。

「うそ……だろ?………いや、前向きにとらえろ。ここには家紋やらなんやらが書いてある。少なくとも、俺の名前は書いているはずだ。」

「「「「「…」」」」」(調査隊の面々)

仲間たちに白い目を向けられながら、俺がその髪の山から家紋が書かれているものを取り出すと、おばあさんは、俺たちが焔雲の人間であると確信したようだった。

連絡事項が一つ。前に言っていた閑話の話ですが(言っていました。詳しくは活動報告を!)少し先送りにさせてください。

あと、かく時間ないのでここで豆知識。

前回の章で焼失した焔城、実は実際に存在する”とある場所”に立っています。割とヒントはあると思うので、頑張って探してみてください。もし分かった人がいれば、次回本編をかいたときの活動報告のコメントで書いてくれると嬉しいです。

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