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双狐炎狼伝  作者: おかかのみやつこ
白骨の陣
15/39

最後の足搔き②(双子視点)

正直厳しいかなと思ったんですが、意外と出来そうだったので更新しました。来週はさすがに無理かな…。これと次の閑話でこの章は終わりです。前回の内容があれだった分、今回は割といい感じに出来たと思います。

これからもよろしくお願いします。

鋭い風が右頬のすぐそばを吹き抜け、髪を散らす。

足元にはいろんな人たちの武器が転がっていて、それがのる地面は、その頑張りをたたえるように、はたまた、その死をあざ笑うかのように真っ赤に染まり切っていた。

戦いのあった地面は、どこもそう。

こういう敵味方の死体にまぎれた中で戦う凄惨な光景は、私が特に嫌いとしている光景の一つだった。

「よそ見してる暇あんのかよ!」

私が一瞬目を離したら、右わき腹近くに鋭い槍の一撃が迫る。

クナイでそのやりの先端に触れ、約一センチ程度ずらしてから、体をひねってよける。

私が持っている武器はクナイと小刀、それに手裏剣程度だから、正直槍には分が悪い。自分的にも、完全に戦う相手を間違えていると思う。何せ、輝にこいつを任されてから、かれこれ十回はこの動きをしているのだから。

みぞおちあたりに突き出される五連撃を逆転で回避し、同じく刀をよけた影と背中を合わせる。

「大丈夫そ?」

「ぜぇんぜん。」

「どっち?」

「…きついに決まってるでしょ。影も気をつけなさいよ、応急処置なんだから。」

「わかってる。それ以上にへましないようにね。」

先ほどから自分でも気になっていたことなのだが、やはり、あの龍に傷つけられた部位の痛みが戻ってきているような気がする。

来る道中、応急処置をしてもらった後、痛みは戦闘の邪魔になるからという理由で、私の毒で一時的に痛覚を麻痺させていたのだが、その効き目が薄れてきているようだ。

おかげで今、あいつに踏みつけられていた背骨のあたりが軋むような痛みを上げている。

が、心配なのは影の方だ。

私は踏みつけられていただけだが―だけというのもあれだけど―影の方は口にくわえられていたから、私より出血量や傷の範囲が広い。痛みも、それ相応のものだろう。

影のことも考えると、何とか早く終わらせねばと思うのだが、そう考えて焦れば焦るほどに、動きが鈍く、相手に押されて行っているような気がする。

そして、私たちの持っている能力が使えないことも、この苦戦に拍車をかけていた。

さっきまでは幕府のお偉いさんたちが私たちの戦っているところに入るのを規制してくれていたらしいのだが、今は完全に町の人たちにも開かれた状態。いくら慣れ親しんでいるとはいえ、ここでいきなり狐になりでもすれば、次の日には大騒ぎになる。それは、手のひらから毒を出すなどしても同じことだ。

例外として、輝は炎を操れるということは告知しているらしいのだが、その頼みの綱の輝も輝で、見慣れない武器に苦戦しているようにも見える。

影の方も、動きの切れが欠けてきているのだろう。ま、私も同じことなのだが。

それに対して相手はというと、私たちが車でふんぞり返って待っていたようだから、体力が有り余っている。状況だけで言えば、私たちが完全に不利だ。とはいえ、私が突破口を開けるわけでもないし…

「おいっ!」

相手の突き技を避けに避けつつ反撃のすきを窺っていると、突然戦っていた輝が声を上げた。一泊の間を開けて、それが私たちに向けられたものであると気づく。

一瞬だけ輝の方を見やると、輝がかかとで地面を二回たたく仕草をした。来る途中で決めていた、一か所に集合しろ、という合図である。

それに気づいたか確認しようとすると、影は目だけこっちを見て小さくうなずく。

そして、輝が出した小さな火花の音がすると同時に、私は突き出された槍を避け、そのまま後ろも見ずに、後退する。

そうすると、不思議なことに、影と輝の肩が片方ずつ当たる。

「よく覚えてたな。助かる。」

「さっき言われたこと。覚えてなかったら頭悪いと思う。」

「それ忘れかけてた人の前で言うかなぁ…」

三人、互いに互いの顔を見合ってから、もう一度自分の相手の方を見る。

その顔と、いまにも突撃してきそうな体制から、「三人寄ったならまとめてやってやる」ということなのだろう。

が、こちらからすれば好都合。何せ…

「二人とも、十秒。」

「了解。」

「いいよぉ。」

私の応答を聞き、輝が一人城の方に駆け出す。それを見て、輝の相手をしていた蛇腹剣使いも駆けだそうとするが、それをクナイを投げて阻止する。

十秒間、輝の方に敵を寄せ付けず、なるべく固めさせる。こんなことすらできなければ、輝のそばにはいられない。

「いかせないよぉ。」

「チっ」

蛇腹剣使いは追いかけるのをやめ、私の方へと標的を変える。別にそれはありがたいのだが…

「後ろから挟み撃ちは、やめてほしいかな。特に槍は苦手なんだよねぇ。」

前からはうねる刀身が、後ろからは鋭い切っ先がほぼ同時に迫る。でも。

「避ける必要は無いかなぁ?」

「自分で避けて。やることが増える。」

私の背後から迫った槍先を、影が間一髪で弾くと同時、私もクナイに刀を巻き付けて遠ざける。

「ありがと♪」

「ハァ…どういたしまして。」

二人で話していると、私の左、影の右から、先ほどまで影と戦っていた飛輪使いが飛輪(輪の形をした刃、チャクラム)を投げてくるが、それを二人同時に叩き落とす。

「器用な真似しやがる。」

「好きにいいなよぉ。」

「ま、そんな暇無いだろうけど。」

「「「?」」」

「待たせたな、二人とも。」

後ろを振り向くと、刀を横で構えた輝が立っていた。

相手からはみえないだろうが、その刀には恐ろしいほど膨大な量の炎が纏わり付いている。

この戦場にいる大多数の人間は気付いていないが、この数秒の間に焔城の火は完全に沈静されていた。

そしてその城を燃やしていたものが、すべて輝の刀に集結しているのだ。よく耳を澄ませば、周りの激しい熱により刃がキシキシと音を立てるのがわかる。

「避けろよ。」

「わかってる。」

「言われなくとも。」

そう言った後、輝が大きく前に踏み込む。

そのただならぬ熱を感じて、先ほどまで私たちに目を向けていた三人も、それぞれの武器を構え直す。でも、もう遅い。

「俺の城を燃やした報い、たっぷりと受けてもらうぞ!」

私たちが左右に展開し、さらにもう一歩飛び退いた、その刹那。

滅烬炎刃(めつじんえんば)!!!!!」

振り抜かれた炎の刃の軌跡が、何よりもきれいな紅の曲線を描き、そこにある全てのモノを消し去った。

万物を焼き付くさんとする爆跳と炎光の(のち)、あとに残ったのは燃やすものを探して揺らぐ炎と、熱に焼かれた焦土だけだった。

「-ふぅ」

「…終わったところ申し訳ないけど」

「まだ一個、仕事あるよ。」

「…だな。」

そう言って、輝は少し高くなっているところに立つ。

「聞こえるか、呪骨家のもの!おまえたちの将は俺が討ち取った!」

輝の声を聞き、今まで戦っていた兵たちが一斉に輝の方を向く。

「好きにするといい。おまえたちが使えていた者たちの弔い合戦をするもよし。俺達に加わるもよし。国に帰るもよしだ。俺達が追い打ちすることはない。無駄な血は流さん。もし国元に帰るなら、幕府がしばらくの暮らしの支援をしてくれるとのことだ。おまえたちが望むことをしろ。」

輝が声を張り上げて話していると、兵たちの中心から呪骨家の武士が出てきた。

「我らの将討たれし今、其方らに仇なす必要はない。が、其方らの家に組する必要も、毛頭無い。おとなしく国元に帰らせてもらおう。」






それからしばらくして、呪骨家は兵を引き、あとには燃え尽きてなんとか形だけ保った焔城と、なんとか耐えきった焔雲の面々があった。

「…終わったな。」

「お疲れ様。」

「おつかれぇ。」

「早馬から連絡来たよ。もうすぐ合流できるって。」

「そうか。向こうも労ってやらないとな。」

「それよりも、先に自分の心配もしなよぉ。」

「それはお互い様だ。」

「うん。」

「だねぇ。」

被害はあった、というか大きかった。零なんか、口が裂けてもいえない。

でも、終わったのは確かだ。

「余韻に浸ってるところ悪いけど…」

「まだやることは多いよぉ。」

「…というと?」

「被害状況の説明、城の修繕の目処、あとは輝のお父さんが残した政務とかがいくつか…」

「あのくそ親父!死んでも問題残して逝きやがって!!」

「まあまあ。」

「がんばれぇ。」

「…手伝ってくれるか?」

「聞く必要ある?」

「少しは信頼してほしいところだねぇ。」

そう言って、三人の顔を見て笑い合う。

またこういうことができるのも、支えてくれた皆のおかげだ。

「よし、やるか。」

もうすぐ日が昇ることだ。

というわけでどうでしたか?

書いてる途中で意外と長くなったのに気付いたのですが、そのときにはもう遅く…。

次回は割と短い、ほんわかとした話にする予定です。楽しみにしてください。

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