一騎討ち
投稿~遅れまして~すいませんでした!!
結局遅いまま。
天罰か、先週の金曜からずっと膝の痛みを耐える毎日です。
今回で、とうとう決着…か?
乾いたような、はたまた湿ったような。生乾きといえばいいのか、湿ったといえばいいのかわからない、少なくとも心地よくはない風が、顔に、体にあたり、吹き抜けていく。
折れた刀や槍や弓、矢が地面に無造作に散らばり、敵味方関係なく倒れる屍の濁った眼が、地面や、何もない空間を、動くことなく凝視している。
「…最後に、言い残すことは?」
「ここで何かを言えば、それこそ未練がましいのではないのか?焔雲のせがれよ。」
そう、不敵な笑みを浮かべる仇の首に、俺はそっと、だが確かに刀をあてがう。
「俺は、行くぞ。」
「フ…この時代にかようなこと、やれるものならやってみるがいい。」
紫の目が閉じると同時、俺は、最後の一振りを放った。
「ガアアアアアア!」
「グルォォォォォォ!」
戦場の真ん中。
敵味方入り乱れ周りの奴らが槍を突き合う中、二つの巨大な咆哮が、その音をかき消すように響き渡る。
『くそ…いっこうに倒れる様子がないな。』
目の前に立つ巨大な骨の生き物は、強大な力を持つといわれる赫冥王の力をもってしても、簡単に突き破ることのできない相手ではないことは、先までの戦いで理解していた。
だが、唯さえ固い巨大な骨に、能力者の中でもトップクラスの再生能力だ。
いくら攻撃しようと、向こうの体力が減る様子がないのは、火を見るよりも明らかだった。
こちらの戦いが長引けば、仲間たちの被害も比例して広がる。何か弱点を見つけなければ…
「どうした、焔雲のせがれよ。そのような攻撃を繰り返そうと、無意味であることは明白だろう。」
「…」
「さっさと死んではくれぬか?」
そういうと、龍はその巨体を振り上げ、両足を深く地面に突き立てた。
「まずい…みんな、さっさと離れろ!」
仲間たちが何とか俺の忠告に気が付き、一歩後ろに飛びのいた、次の瞬間。
「ぐ…うぅ!」
鮮血が足を突き立てた地面から、黒と紫色の炎が吹きあがった。
その威力は、炎を操る赫冥王の状態ですら、後ろに押されるほどの威力だ。
その時、炎を巻き起こし戦場を燃やし尽くさんとする怪物の背で、何かが光ったような気がした。
『…確かめるしかないか。』
そうと決まれば、あとは簡単だ。
両手両足を地面につけ、龍の腹の下めがけて、一直線。
鮮血が俺を見失っている間、足の内側に両腕の鈎爪を深く突き立て、そこから炎を流し込んだ。
「グゥ…しつこいやつめ。」
俺が折ったのは左側の後ろ脚。もちろん、体勢を崩すだけなら、折る場所などどこでもいい。だが今回は…
俺は足から後方に飛びのき、支えが折れて傾いた腰に向けて飛び乗った。
背に降りた瞬間、しっかりと着地するためにもう一度骨に爪を差し込む。
どうやら背に乗られた本人は、俺が背に乗ったことに気付かずに、そのまま地上への攻撃を続けているらしい。
「さて、これからどうするか…ん?」
腰から頭の方に視線を向けると、その中央に、何やら紫に光る結晶体のようなものが五つ並んでいた。
「もしや…あれが急所か?」
そう一人でつぶやいた時、ふと、昔、父の言っていたことを思い出す。
自分本来の身体よりはるかに大きくなる能力を使う際、体がその反動に耐えられるように、そしてその体を動かし続けられるように、体のどこかしらに、原動力をためておく器官が構成される…。
もしそれがなければ、その姿になった途端、人の身体がその力に耐えきれず爆散するか、もし耐えることができたとして、その体を動かすことができなるのだという。
「つまり…これを壊せばいいわけだ!」
時間をかけることはできない。下にいる仲間たちのためにも、五つの結晶体すべてを、一発で。
やれるのか?俺に…。
否。
やれるか?じゃない。
やれることは大前提。どれだけ早くやれるか、だ。
意外と、あの父親に学ぶことも多いものだ。
俺は腰骨から背骨に乗り移ると、助走をつけて走り出す。
炎を、顔に、腕に、爪に、足に、体に纏い、酸素を肺いっぱいに吸い込み、体からあふれ出す炎の火力を上げていく。
炎で爪を肥大化させ、体の両側に構え、脇を占める。
そして…
「やってやる。」
「赫冥檄狼‼‼」
結晶の中心めがけ、その炎の爪とともに一閃すれば、爆風とともに、五つの結晶が粉砕する音が聞こえた。
「グゥ⁉」
突然のことに迷いを見せながら、人の姿に戻っていく鮮血に、俺はすぐさま、人の姿で切りかかる。
鮮血もさすがというべきか、一瞬の驚きを見せつつも、次の瞬間には感覚を切り替え、俺の振り下ろした刀を受け止める。
俺からは真っ赤な、鮮血からは真紫な炎が出て、互いを抹消せんと激しくぶつかり合う。
「潔く死ね!なぜそこまで粘る必要がある!焔雲の若造がぁ‼」
「理由なんか知るか!少なくとも、相手の気持ちも理解しようとせず、自分勝手な復讐を果たそうとするお前には、一生理解できない理由だろうよ‼」
俺は炎の威力をさらに一段強め、それにこたえるように、鮮血も炎を猛らせる。
その光景に、周りの者たちは、武器を持つことさえ忘れ、俺たちの戦いを見つめている。
その時、鮮血の出す炎が、より一段と強まった。
「もうよい。このまま焼き尽くしてくれる。」
「出るぞ、鮮血様の奥義!」
「焔雲に復讐するためだけに生み出した、呪骨家最大の大技!」
「輝!」
「大丈夫?一回離れた方がいいんじゃなぁい?」
呪骨家の家臣たちの声に、不安になった影と陰が声をかける。
「…まあ、見てなって。」
「調子に乗りおって。塵とともに、永久によみがえることのないようにしてやる!」
「やってみろ!」
そして、さらに二人の炎の火力が増していく。
「焔々抹消漸‼‼‼」
目の前に、紫の炎に包まれた刀の刀身が、まっすぐに振り下ろされる。
俺はそれを間一髪のところで交わし、そして…
「赫炎裂斬」
鮮血の、左肩から右腰にかけて、紅とも、紅蓮ともとれるような色のしずくが飛んだのは、その直後であった。
「やっと…か。何人死んだ?」
「ざっと、三分の一、といったところでしょうか。」
「そうか…でも、これで終わったんだな。」
「ですね。」
「輝!」
「どうした?影。」
「いや…」
「なんかぁ、国元から早馬(伝令部隊)が来てぇ…」
「何だ、話せ」
「は。それが…~」
「…なんだって?」
と、言うわけで、今回はちょっと先に結末を出していく形になりました。
読者の皆さんの中には、先に実質的なネタバレを食らってゲンナリした人もいるかもしれません。
本当にすいません。
投稿頻度は…とりあえず、日曜の夜までには絶対にあげられるように頑張ります!!