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双狐炎狼伝  作者: おかかのみやつこ
白骨の陣
10/40

赫冥王 

風…治りました!

もし心配していた人がいたのなら、心配してくださってありがとうございます。

心配していなかった人は…いつもと変わらないので、ご安心ください。

これからも、日々頑張ります‼

「ひか…る?」

戦場に響いた巨大な咆哮で耳鳴りがする頭をおさえ、今の一瞬で何が起こったのかを整理する。

輝の様子が変わったのは、敵の当主が、輝の目の前で輝のお父さんを燃やしたのが原因だった。

輝だけじゃなく、周りに集結しつつあった焔雲家の人たちも、目を見開いて立ち尽くしていた。

膝をつく人もいれば、涙を流す人も…。

逆に敵の方は、みんな嫌な目をして、にやにやと笑っていた。

そんな空気が変わったのは、輝が、突然刀を鞘に戻した時だ。

カチン、と音がして。

輝の足元から、赤色とも黒色とも、紫色ともつかないような、とにかく邪悪な色をした炎を吹き出し始めて。

輝の身体が、完全に炎に包まれる瞬間、その顔が、何か言って笑ったのが見えた。

そのあとは…正直、よく思い出せない。

とても大きな衝撃波と、鼓膜を突き破るような咆哮音が聞こえた後は、かなり後方に、陰と一緒に吹き飛ばされたから…

「影。あれ…輝だと思う?」

隣で倒れていた陰が指さす方向を見ると、大きな骨の龍の前に、何かがたたずんでいるのが見えた。

よく見れば、それは後ろ脚だけで立ち上がった狼…人狼だ。

手と足には大きく鋭いかぎづめが生え、関節や体毛の間、そして口の端からは、さっきの凶悪な色をした炎が、絶え間なく揺らぎ噴き出している。

脱力しきった二の腕を重そうにぶら下げ、血のように真っ赤に爛々と光る眼を、まっすぐと龍に向けている。

「…」

「…影?」

『輝…大丈夫かな?』






痛い。

熱い。

苦しい。

体のあちこちが悲鳴を上げるようだ。

視界が真っ赤に染まり、呼吸が荒くなる。

「どうした?焔雲のせがれよ。姿が変わったとはいえ、その反動で動くこともできないか、愚か者め。」

焔雲家に伝わる能力、獣化。

だが、この能力には、隠されたもう一つの特徴がある。

父も言っていたように、この能力は能力保持者の感情によって変化しやすい。

その中でも特に、「負の感情」つまるところの、「怒り」や「恨み」といったものには、特に反応しやすい。

そしてそれが極限にまで高まると、能力は完全にその感情に飲み込まれ、もう一つの姿へと変貌する。

その名は「赫冥王」。二つ名を「怨恨の滅帝」ともいい、どちらも「怒りと恨みのままに暴れ狂うもの」という意味がある。

が、この能力には重大な欠点が存在し、一時的にいつもの五倍ともいわれる力を手に入れることができる代わりに、その保持者の身体に多大な負荷を与えるのだ。

『とにかく…さっさとこいつを倒さないと。』

そう思ったとたん、突如として赫冥王の腕が動き出し、咆哮を上げ始めた。

「なんだ、八つ当たりか?」

「少しは黙ることを知ったらどうだ?」

そして、次の呼吸を垣根に、戦闘を開始する。

龍が振り下ろす腕やかみつくあぎとをすり抜け、確実に弱点部位だけに爪を突き立てていく。

突き立てるたびに炎が噴き出し、その傷跡を再生させまいと焼き尽くしていく。

爪を、牙を突き立て、焔をふかし、体をぶつけ、傷を負わせんと一人かける。

視界の端には、援護しようとして炎に焼かれる、無残な呪骨家の部下たちが見える。

その光景を見て、無意識的に、人狼が凶悪な笑みを浮かべるのだった。

というわけで、今回は初めての輝以外の登場人物からの視点で書いてみました(前半だけ)。ちょっと違和感があったかもしれませんが、今回の話は流れ的にこちらの方が描きやすかったのでこうしました。

次回もおそらく前半だけ他人支店になるため、だれになるのか予想してみてくれると嬉しいです。

後、前回予告していた人狼…もとい、「赫冥王」のイラストを乗せておきます。

少し見にくいかもしれませんが、ご了承ください。


「赫冥王」

挿絵(By みてみん)

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