姉の面影
「何を怒ってるんだ? 変なやつだな(笑)」
頭を優しくポンポンし、長躯のハル君は私の目線を合わせるように姿勢を下ろし微笑む。破壊力抜群の笑み。大ダメージでほぼライフポイント0。ゲーム上なら即死レベル。
ある意味瀕死な状態の私を放置し、ハル君は「そう言えば……」と口を開く。
「野菜を切っている時の芽亜里、昔の姉さんに凄く似てたな」
「姉さん? ママの事?」
「あぁ。姉さんに瓜二つだよ。料理をしている時の姉さんの後ろ姿にそっくりで正直驚いたよ。芽亜里は姉さんの娘なんだなって……」
そんなに私ってママに似てるのかな?
でも、悪い気分ではないし、寧ろママと瓜二つと言われた事が凄く嬉しい。
けど、どことなくハル君の表情から寂しさも感じた。
「ごめんな、芽亜里。しんみりとさせちゃって……」
「ううん、大丈夫だよ。ハル君からママの話を聞けて私は嬉しいよ」
私もママとの昔の思い出がふっと脳裏に浮かんだ。幼い頃に一緒にキッチンで料理を作っていた思い出を。懐かしさに少し涙腺が緩み、ほろりと涙を零す。その姿を見たハル君が血相を変えて、慌てて私をギュッと抱きしめる。
「ごめん! 辛い事を思い出させたか!?」
「え? えっ!? だ、大丈夫だよ、事故の事を思い出して泣いたわけじゃないから安心して」
「そ、そっかぁ……」
ホッと安堵するハル君の顔。多分、両親を失ったあの事故の事を私が思い出したのではと勘違いをしたのだろう。
私はゆっくりとハル君の腕を解き、逆に私がハル君をギュッと抱きしめると彼の頬がうっすらと赤く火照る。
「ハル君、心配してくれてありがとう」とハル君の耳元で囁いたあと、私はそっとハル君の頬にキスを。
「なっ?!」
「私からのハル君へのお礼の気持ち……」
キス挨拶に不慣れなハル君は困惑し、顔を真っ赤に染めた。小っ恥ずかしく照れているハル君の顔がとてもチャーミングで可愛いかった。