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光り輝く学園生活  作者: とっきー
第一章 光る学園
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【第四話】 学園祭準備

 あれから二日後、玄兎は学園内にある複合施設マジクランタで買い食いをしながらぶらぶらしていた。生徒会長から魔法訓練場に呼び出されたが、その時間まで授業もなく暇だったためである。すると、大きなバッグを携えた20代と思われる茶髪の男性が話しかけてきた。


「ちょっと良いかな?」


 玄兎は口に含んでいた唐揚げを急いで飲み込んだ。

 

「はい、何でしょう?」

「俺は報道委員会委員長のジョナサン・パーカーだ。君の名前は松雪玄兎君、であってるかな?」

「はい、あってますけど……」


 ジョナサンがなぜ自分の名前を知っているか玄兎は不思議だったが、それを聞く前にジョナサンが続けた。


「毎年、学園祭で一年の間に転校してきた生徒の紹介をしててね。君は直前に入学してきたから急いで探してたんだ」


 困ったように笑うジョナサンであったが、玄兎はどこかジョナサンの余裕を感じていた。


「それじゃ、早速インタビューを開始して良いかな? 音声はとらせてもらうが、写真は任意だ。音声も無許可に外に出すことはしない」

「えぇ。大丈夫ですよ。自由にやってください」

「それじゃ遠慮なく。質問があったら適宜そちらから聞いてもらっても構わない。じゃ、始めるよ」


 そう言ってジョナサンはバッグからカメラや三脚などを取り出し、インタビューを始めた。名前や好きなものなどテンプレートな質問が続いたあと、この前の魔物討伐の話になった。


「君は初日で魔物討伐に行ったみたいだね。普通そんなことはないんだけど、何か特別な魔法でも使えるのかな?」

「えっと……むしろ逆で特別な魔法どころか何の魔法も使えないんですよ」


 玄兎は生徒会長から魔法をまねたことを口外するのは止められていた。玄兎の能力がはっきりするまでは混乱を防ぐためとのことだ。

 

「ふふ。それは変わってるね。確かに生徒会長が直々に行くだけある。さてこちらからの質問は以上だ。協力ありがとう。何か質問はあるかな?」

「あの、最近入った他の転校生は誰かいますか?」


 ジョナサンは少し笑みを浮かべて言った。


「それがいないんだよ。魔物の大規模出現の前に覚醒する人は少ないからね。寧ろ君が珍しいんだよ」


 玄兎は少し残念だった。同時期に入った人ならば気持ちを共有し、仲良くなれると思ったからだ。


「さて、他に質問は? ないならインタビューに答えてくれたお礼に何か対価を渡そう。何か所望するものは?」

「ん~? 特にないですかね」


 そう言うとジョナサンは真面目な顔になった。玄兎は何かまずいことを言ったのかと思い顔がこわばった。

 

「ふむ。遠慮することは良いことだが行き過ぎるといいことはないよ。誰かに利用されないように気を付けることだ」


 そう言った後、すぐにジョナサンは笑みを戻した。

 

「さて、君のことを待っている人がいるみたいだから俺はここで退散しよう。学園祭の日にデバイスで君のことを紹介するからぜひ見てくれ。ではまた」


 ジョナサンが去っていくと聞き覚えのある声が耳に入ってきた。


「おやおや~? 君は松雪玄兎くんじゃない? 美味しそうなものを食べてるね~」


 たくさんの荷物を抱えたいのりが荷物の裏から顔を出しながら、玄兎に話しかけてきた。玄兎はいのりの顔は覚えていたが、名前が思い出せなかった。


「あぁ、こんにちは。何たら何たら何たら部部長の何とかさん」

「ほとんど覚えてない!? む~、酷いなぁ。私は覚えてるのに。今回特別サービスでもう一度自己紹介をしてあげよう。次はないよ~?」


 そう言っていのりは持っている荷物を下ろすと、この前と同じように手を胸に当て自己紹介を始めた。


「私は何でもお助け助っ人部部長、霧山いのり。今は来たる学園祭に向けて色んな部活や委員会をお手伝い中だよ」

「あぁ! そうだ、いのりさん!」

「思い出してくれて良かったよ~」


 そういうといのりは心配そうな顔をして玄兎の顔を覗き込んできた。


「さっきは大丈夫だった? あの人に何もされてない?」

「うん、大丈夫だったよ。心配してくれてありがとう」


 そういうといのりは何やら嬉しそうにニコニコしながら言った。


「どういたしまして。さて、何でもお助け助っ人部の部長である私に何か頼み事はあるかな? 何でも言ってね」

「えぇ~っと、じゃあ魔法訓練場ってどこか分かる?」

「うんうん、そのくらいなら任せて! じゃあ早速……」


 いのりは魔法訓練場に向けて歩き出したが、荷物を思い出し後退した。


「ちょっとここで待ってて! すぐにこれ全部届けてくるから!」

「手伝おうか?」

「大丈夫だよ! お助け助っ人部として助けられるなんてあっちゃならないから!」


 そう言っていのりは大量の荷物を持って走り出した。前がちゃんと見えていないのか何度か壁にぶつかったりしていた。そして何度かぶつかった後に玄兎の方を向き泣きそうな目で訴えた。


「お助けを~……」


 玄兎は残っていた唐揚げを食べ終わった後、結局二人で荷物を運んで行った。

 


 

 交替制転向反応部なる部活に着いたとき、玄兎はあまりの盛り上がりにびっくりしてしまった。いのりはその勢いに慣れている、どころか混ざっていた。


「おぉ! やっと来たか! ありがとな! いのり!」

「いいの、いいの!」

「やっと来ましたね! 部長!」

「これで今度の学園祭こそうちの部が最優秀賞とりますね!」

「行けるね! 間違いないね!」


 交替制転向反応部の部員(といのり)が盛り上がっており、玄兎も部長である馬木に呼ばれ楽しそうだったため、そこに混ざろうとすると一人の女性に止められた。


「待った! あんたもそっちのタイプなわけ? あんたまで入ったら誰があれを止めるのさ」


 玄兎は少し悔しがった。乗り遅れた、と思ったが目の前の女性に反抗すると酷い目に合う気がしたため、しぶしぶ了承した。


「じゃあ、私はうちの部員を止めるから、あんたはいのりさんをお願い」


 そう言ってその女性はずんずんとその輪の中に入っていった。


「お! パピヨン! 遂にお前も――」

「さっさと学園祭の準備を始めるよ」

「お、おおおおおう! やるぞ! みんな!」


 たった一言で部内をまとめ上げた。凄い気迫だった。そしてその中に混ざっていたいのりに玄兎は呼びかけた。

 

「いのりさん、そろそろ次の部活に荷物を届けに行こっか」

「はっ! そうだった! 行こう行こう!」


 こうして二人は様々な場所に荷物を届けたのち魔法訓練場に向かった。

次回の更新は5/11(土)の予定です。

感想やアドバイス、疑問点をくれると凄く嬉しいです。

考察とかも大歓迎です。

頭を空っぽにして読むのも大歓迎です。

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