【第七話】 輝く新星
一行は支配地域横の川の対岸へとやってきた。ゴムボートを降りると、そこにも何名かの軍人が待機していた。対岸から、支配地域を見ると、そこの様子が先程までよりありありと見えた。建物は一部が崩壊していたものの、まだ原型を留めているものが多く、魔物は彷徨うように動き回っていた。時折、軍人たちの魔法を使う音が響いていた。
「うぅ……あんな大量の魔物をいつか相手にしなきゃいけないなんて……」
「で、アレックスさん、俺達は今日は何をするんです?」
「ここら一帯に現れる魔物を倒してもらう。……ほら早速来るぞ」
アレックスが目線をやった方を見ると、ルミナリングが発生していた。周りにいた軍人のうち何名かが準備を始めたが、アレックスが制止するよう手で合図した。
「そうだな、まずは雅人くん、自由にやってみたまえ」
「任せてくださいよ!」
そういうと雅人は魔物が現れる前から、魔法を溜め始めた。
「いっけえぇぇぇ!」
ルミナリングから魔物が現れた瞬間、雅人は魔法をぶっ放した。
「……ふむ。次、魔物が現れたら今度は玄兎くんの番だ」
「え、僕もやるんですか?」
玄兎は自分もやるとは思っておらず、不服そうに聞いた。
「どうでした!? 俺の魔法は!」
そんな玄兎とは対照的に、雅人は楽しそうに期待するような声でアレックスに話しかけた。
「玄兎くんが次の魔物を倒したらそのことについて話そう」
「玄兎! ぱっぱと倒せ!」
「じゃあ魔物に早く出てくるように交渉してきなよ」
「出てこーい! 魔物ぉぉぉ!」
雅人は大声で叫び始めた。周りに軍人もいる中、悪目立ちする雅人に対して、玄兎は呆れを隠せなかった。
「はっはっはっ! 言葉が通じたらどれだけ良かっただろうな」
笑いながら言うアレックスであったが、その顔はどこかさみしげであった。
数分後、歩き回っていると近くに再びルミナリングが現れた。玄兎はルミナリングから一定の距離を取り、魔物が現れるのを待った。待っている間に魔法を使い、準備しようとしたが、魔法を使うことが出来なかった。
「玄兎! 早めに頼むぞ!」
雅人の言うことを無視して、玄兎は自分のペースで行くことにした。さっきまでまるで魔法の感触すらなかった玄兎だったが、魔物が姿を現した瞬間、体に魔力が満ちるのを感じた。
「テール・グラッセ!」
玄兎はまず、魔物の足を氷で拘束した。そしてそのままエクラ・ソレールで留めを刺そうとしたが、全く使えるイメージが湧き上がらなかった。なるべく遠くから戦いたかった玄兎だったが、有効打になるものがないと判断し、魔物に一気に接近した。
「くらえぇぇぇ!」
そして魔物の手の動きをしっかり確認しながら、馬木の魔法、紫色の雷を手に纏い、そのまま貫いた。そしてそのまま魔物は地面に溶けていった。
「わわっ、いてっ!」
玄兎は自分が凍らせた地面で足を滑らせ、転んだ。
「なんか、お前結構ノリノリじゃなかった?」
雅人が転んだ玄兎の元にやってきた。
「よし、二人の現状はよく分かった」
アレックスも玄兎の元へとやってきた。
「まずは雅人くん、君は魔法の威力は申し分ない。あとは戦い方だな。性格通り無鉄砲すぎる。敵を確認し、それにあった魔法を使わなければすぐにガス欠するぞ」
「はーい!」
雅人は本当に理解したのかどうか分からないが、楽しそうに返事をした。
「そして玄兎くん、君はまず自分の魔法を理解することだ。魔法が使えるときと使えないときの差は何なのか? どういったときにどんな魔法が使えるのか? これを把握してこそ君の能力は輝く」
「う~ん……そうですね……」
玄兎は今までのことを思い出し考え込んだ。
「さて、じゃあ今からは各自、今言ったことを意識して……そうだな……一人十体、魔物を倒してきてもらおうか。この周辺ならどんどん湧き出てくるはずだ。では出発するように」
「えっ!?」
「しゃあ! やるぞおおぉぉ!!」
雅人はすぐに走って行ってしまった。
「安心してくれ、玄兎くん。この辺ならそこら中に軍がいる。何かあれば駆けつけてくれるさ」
「うぅ……はい……」
玄兎はアレックスに説得される形で雅人とは違う方向にとぼとぼ歩き出した。すると突如として玄兎を中心とした大きなルミナリングが発生した。
「え? え?」
戸惑う玄兎だったがすぐにアレックスが滑るように飛んできて玄兎を抱え、ルミナリングの外へ出た。そして軍人たちもすぐに集まってきた。
「魔物がこちらに向かって大量に飛んできてるぞ! 気をつけろ!」
軍人のうち、一人が大声を上げ、すぐにトランシーバーでどこかへと連絡を始めた。支配地域の方向、その上空を見ると大量の空飛ぶ魔物がこちらに向かってきていた。
「まずは目の前の魔物からだ。他は軍に任せておけ」
「は、はい」
玄兎は言われるがまま、目の前のルミナリングから出てくる魔物に備えた。空を飛ぶ魔物とは既に軍が交戦を開始していた。
「間に合ったぁ!」
雅人が凄い勢いで飛んで戻ってきた。
「良いタイミングで来てくれたな。さっき言ったことは気にするな。今は全力でやってくれ」
「はいさー!」
そしてすぐにルミナリングから魔物が現れた。その数は10を超えていた。
「コンダクティブ・ペリメーター、サンダー・バラージ」
アレックスは青色の雷を巧みに操り、魔物たちを雷で囲った後、雷の弾を一斉に浴びせた。躱そうとした魔物は周りの雷に触れると硬直し、雷の弾を喰らうとそのまま溶けていった。しかし、すぐに新しい魔物が湧き上がり、数は減らなかった。
「うおぉぉりゃぁぁ!」
雅人は全力で白色の炎を放った。目の前にいた魔物たちは全員消え去っていた。
「へっへーんだ! 何匹でもかかってこい!」
雅人の挑発に乗るように、すぐに次の魔物が現れた。
「玄兎くん、上からの攻撃を防げるか?」
「は、はい!」
玄兎が空を見ると、既に上空の魔物が何匹か近付いてきていた。空を飛べる魔法使いが明らかに不足しており、地上からの攻撃があるものの、完全に防ぐには至っていなかったのだ。玄兎は小田切の魔法である鎖を用いて、上空からの魔物の攻撃を防いだ。
「玄兎くん、雅人くん、俺達が上空へ行くぞ。下からの攻撃に注意するんだ」
玄兎と雅人は羽で、アレックスは足裏に電気を纏い飛び上がった。
「魔法を撃とうとしてる魔物からだ。雅人くんは右側に、玄兎くんは左側に集中してくれ。俺は、下からの攻撃に警戒しておく」
「はい!」
玄兎は言われるがまま、向かって左側の魔物の中で魔法を撃とうとしている魔物目掛けて、順に先ほどのアレックスの魔法を繰り出していった。
「そいやあ! てぇい! たぁ!」
雅人はこの状況でも楽しそうに魔法を放ち、次々と魔物を倒していった。
たまにアレックスも状況を見て加勢し、三人で多くの魔物を倒したはずだが、それでも魔物は一向に減っていなかった。
「ドレイクさん! 大変です!」
前で戦っていた軍人の一人が慌てた様子で玄兎たちの元へと飛んできた。
「どうした?」
「光耀帝が! 飛んできます!」
「なんだと?」
玄兎が遠くに目を凝らすと確かにゆっくりと飛んで近付いてきている人型の魔物の姿があった。
「あ、あいつ! また出やがったな!」
「ど、どうすれば……えぇ、なになに!?」
玄兎があたふたしていると、雅人が玄兎の手を引っ張り魔物たちの更に上空から一気に光耀帝の元へと近付いた。魔物たちは玄兎と雅人の方向へと転換した。
「玄兎、俺が気絶したら後は頼む!」
「え、えぇ? どういう――」
「はああぁぁぁぁぁ! いっけえぇぇえええ!!」
雅人は周囲の魔物諸共光耀帝を大きな白い炎で包みこんだ。そして十秒ほど放つと金の翼も消え、落下を始めた。
「ととっ!」
玄兎は咄嗟に雅人を掴み上げた。
「油断するな!」
「――っ!」
アレックスの呼びかけで玄兎はなんとか飛んできた魔法を避けた。そう、光耀帝はまだ生きていたのである。
「アークブラスト!」
アレックスが大きな一発を光耀帝に向け放った。それに続くように周りの軍人達もそれぞれの大きな魔法を放った。だが、前回と同じく硬いバリアに弾かれ、有効打にはなっていなかった。
「まだ……やるぞ……」
雅人の意識が戻った。だがまだ魔法を使えるような様子では無かった。
「君! その子を下へ落としたまえ!」
下を見ると軍人が一人立っており、雅人を落とすよう要求した。玄兎は不安ながらも手を放し、雅人を落とそうとすると、雅人は再び金色の翼を携えふらふらと飛んだ。
「雅人、無理しちゃダメだよ!」
「俺が、やるんだ……!」
雅人はそう言って玄兎の方を見て笑った。そして――
「これは……」
雅人の体から、オレンジ色の光が放射状にあふれ出した。そしてその光は玄兎のみならず、アレックスや軍人たちを包み込んだ。そして、すべてを出し尽くしたように――雅人は、ふっと意識を失い落下していった。
「覚醒したか……!」
今まで飛べなかった軍人たちも金色の翼を生やし、空での戦いは一瞬にして形勢を逆転することに成功した。
「ふっ、こんな状態で覚醒するとは面白い子だな、アレックス」
更にチャールズが飛んでやってきた。
「お前も似たようなもんだろう。いいのか? お前が戦って」
「なに、俺は体を動かす方が好きでね。頭を使って疲れていたところだ。やらせてもらおう」
遅れて金色の翼を携えたローク、オリヴィア、篁、レミーもやってきた。
「キャプテン、自分も戦います!」
「妾の強さを見せてやる! ……でござる!」
「レミー殿、冷静に行くでござるよ」
「さぁて! あのときの決着をつけてやるわ!」
アレックスは、まっすぐに光耀帝を見つめた。
「――支配地域奪還作戦前哨戦、勝利といくぞ」
次回の更新は5/25(日)の予定です。
感想やアドバイス、疑問点をくれると凄く嬉しいです。
考察とかも大歓迎です。
頭を空っぽにして読むのも大歓迎です。




