【第五話】 長岡雅人、初クエスト開始
「いくぞぉ〜……白き鉄槌!」
それから二日後。玄兎たちは、今日も今日とて訓練場で汗を流していた――というより、雅人が騒いでいた。
「う~ん、なんかピンとこねぇなぁ……」
雅人は自分の魔法にカッコいい名前をつけると言い、ずっと色んな名前を言いながら魔法を放っていた。
「名前なんて何でも良いじゃん」
「馬鹿野郎! 魔法の威力に直結するんだぞ! お前も考えろ!」
「えぇ……。そうだなぁ……」
雅人は玄兎には全く期待していないようで、すぐに次の魔法を放った。
「うおおおおぉぉ! 天下の白炎! ……う~ん、これも違う……」
玄兎は雅人を放って、訓練を再開した。
少し経った後、雅人の携帯が鳴り響いた。
「はい、もしもーし!」
雅人は相手が誰かも見ずにすぐさま電話をとった。
「えぇ、大丈夫です! ……え、マジすか!?」
雅人は上擦った声で驚いた。
「えぇ、もう是非! ……なんなら明日でも良いっすよ! ……特殊作戦隊!? ……あぁ、分かりました。代わりますね」
玄兎は雅人からデバイスを受け取った。
「もしもし、松雪です」
『玄兎、俺だ。翔真だ』
「えっとどうされました?」
玄兎は雅人の反応からして碌でもないことに巻き込まれる気がしたため、警戒しながら聞いた。
『さっき雅人には話したんだが、三日後、雅人には初クエストに出てもらおうと思ってな。その時にお前に付いて行ってもらいたいんだ』
「え、僕がですか?」
玄兎は学園に入学してまだ一ヶ月も経っていない。在学期間で言うと雅人とほとんど変わらないのである。
『安心してくれ。引率はアレックスさんに任せてある。お前にはそれに帯同してほしいんだ』
「はぁ、分かりました」
『頼んだぞ。じゃあ雅人にもう1回代わってもらっていいか?』
玄兎は隣でデバイスに耳を立て聞いていた雅人にデバイスを返した。
「はい、元に戻りました、雅人です。……はい聞いてましたよ。……任せてくださいよ! では!」
雅人は勢いよく電話を切った。
「よし、玄兎! 魔法の名前なんて後回しだ! とにかく特訓するぞ! あと特殊作戦隊について詳しく教えてくれ!」
「めんどくさぁ……」
玄兎は雅人に巻き込まれる形で、訓練を再開した。
――そしてクエストの日、玄兎は西門でアレックス、オリヴィア、そして特殊作戦隊の他一名と落ち合った。引率はアレックス一人だったが、クエストの現地近くにストナリア国軍が駐留しているため、後の協同作戦に備えて顔合わせと軽い打ち合わせを行うことになり、特殊作戦隊からも数名が同行することになった。
「こんにちは。松雪玄兎です。よろしくお願いします」
「初めてお目にかかる。拙者の名は篁宗真。よろしく頼むでござる」
やや古風な喋り方をする篁の自己紹介が終わるや否や、遠くから女性の声が聞こえてきた。
「間にあったでござるかぁ〜!?」
すごいスピードで走ってきたその女性は、玄兎の前で急ブレーキをし、そのまま自己紹介を始めた。
「妾の名はレミー・タヴァネル! 宗真殿を師として仰ぎ、修行中の身でござる! よろしくお頼み申す! ……えっと、そちの名は?」
「松雪玄兎です、よろしくお願いします」
「話は聞いているで御座候! 妾、日和国に興味がある故、向後お頼み申す!」
よくもまあ、日和国の古風訛りを勉強しているもんだと感心していると、アレックスが玄兎に話しかけてきた。
「玄兎くん、今日はよろしくな」
アレックスは手を差し出し、握手を求めた。
「しませんよ!」
が、しかし、玄兎はあの屈辱の初対面をしっかり覚えていたため、断った。
「おぉ、玄兎くんも成長したねぇ……、これは特殊作戦隊に入っても良いレベルだよ! ね、パパ?」
「入りませんよ!」
「はっはっはっ! やっぱり君は面白い! ……して」
急にアレックスが真面目な顔になった。
「約束の時間まであと一分なのだが、雅人くんはどこだ?」
玄兎もそれで気付いたが、雅人がいない。玄兎は雅人に電話をしてみたが出ることは無かった。
「……えっと、多分ですけど、寝てます」
玄兎には心当たりがあった。あの日から今日までの間、雅人との訓練に巻き込まれていた玄兎であったが、玄兎が帰った後も雅人は残って訓練をしていたのだ。そのため、前日も夜遅くまで練習していたであろうことは容易に想像が出来た。
「ほう、玄兎くん。雅人くんの住んでいるマンション名と部屋番号は分かるか?」
「分かります。起こしに行ってきます……」
「いや、俺が行こう」
玄兎がアレックスにマンション名と部屋番号を伝えると、アレックスはすぐに走って出発した。
「あ~あ、雅人くん、ご愁傷さま……」
「……?」
玄兎が特殊作戦隊の面々と喋っていると、アレックスと楽しそうに喋る雅人が歩いてきた。
「お待たせしてすみません、長岡雅人です……えへへ」
何故かやたら上機嫌そうな雅人を見て、玄兎のみならず、オリヴィア、篁、レミーも不思議そうな顔をしていた。
「ねぇ、パパ? 雅人くんはなんでこんな嬉しそうなの?」
「きっとドMなのだろう」
「違うわ!」
雅人はこの発言にすぐさまツッコミを入れた。
「ふむ、タメ口か。もう1セット追加しよう」
「やったぜ! 玄兎も一緒にどうだ?」
「嫌だ。勝手にやってなよ」
玄兎には何が何だか分からないが、どうせ碌でもないことなので断ることにした。
「じゃあ始めるぞ。お手本はあの三人のうち誰かがやってくれるだろう。真似するように」
そういってアレックスは特殊作戦隊の3名を見たが、誰も名乗り出なかった。
「ふむ、ここでやった者には褒美――」
「任せて!」
「拙者が」
「ござる!」
アレックスが褒美と言った瞬間一斉に名乗り出た。
「では全員にやってもらうとしよう。……玄兎くんは本当にやらなくて良いのか?」
「……結構です」
玄兎の嫌な予感は当たっていた。軽めの準備運動の後、見るからにキツそうな運動を始めた。
「うぐっ、もう、無理……」
1セット終わった段階で雅人は音を上げた。しかし、容赦なく2セット目が開始された。
「……本当に玄兎くんは――」
「あぁ、本当に大丈夫です」
門の近くで、運動をする四人と、それを眺める二人。傍から見たらおかしな光景だった。近くを通る人がちらちらと玄兎たちの方を見ていた。
「はぁ……はぁ……。本当にもう、無理……」
雅人は完全に限界を迎えていた。
「よし、では少し休憩した後、クエストに出発するとしよう」
玄兎たちは学園を出発し、ストナリアへと向かった。
次回の更新は5/24(土)の予定です。
感想やアドバイス、疑問点をくれると凄く嬉しいです。
考察とかも大歓迎です。
頭を空っぽにして読むのも大歓迎です。




