【第一話】 少女の声
祭の翌日、玄兎と雅人はセキュリティ委員会室にやってきた。セキュリティ委員会室も報道委員会室と管理棟にあった。
「失礼しまーす」
セキュリティ委員会室の中は玄兎の想像と違いモニターなどは設置されておらず、応接室のような感じであった。そして中央のソファにセキュリティ委員の委員長が座っていた。
「やっと来たね〜、じゃあそこに座ってよ」
気怠げそうに喋る委員長に言われるがまま二人は机を挟んで対面のソファに座った。
「呼んだのはあの声について聞きたいんだよねぇ」
早々に本題に入る委員長に対して、雅人が突っ込んだ。
「ちょちょちょ、委員長の名前を聞いても良いっすか?」
「え〜、いる〜? ……まぁいいや。名前はジャン・ルノワール。他に何か質問ある?」
ここを逃したら聞くタイミングが無さそうな感じがしたため、玄兎は気になっていることを質問することにした。
「何か部屋があんまりセキュリティ委員っぽくないですよね」
「そりゃあねぇ、人が簡単に入れるようなところに重要な設備は置かないよぉ」
言われてみれば当たり前のことであった。しかし、セキュリティ委員会室に対してモニターがたくさんある、というイメージを持っていた玄兎は少し悲しい気分になった。
「はいはい、質問っす! 彼女いますか!?」
雅人は前のめりで質問した。ジャンは今まで以上に気怠げに答えた。
「いないよ~。奥さんならいるけど」
「え、結婚してるんですか!?」
「じゃ、もう本題入ろっか〜」
ジャンは雅人をテキトーにあしらい、再び声の話題について戻った。
「二人とも聞いたのは女の子の声で間違いないの〜?」
「はい」
「完全にあれは可愛い女の子の声でしたね、はい」
「なるほどね〜」
ジャンは雅人のおふざけ発言を無視してパソコンを操作した。
「その子は何て言ってたの〜?」
「う~んと、やめて、みたいなことを言っていた気がします」
「うんうん、なるほどぉ」
ジャンは相槌を打ちながら手元を動かした。するとパソコンから音声が流れた。
『なんだよ〜、もうちょっと強そうな魔物が良かった〜』
『僕達が討伐する魔物はこれくらいで十分だよ』
玄兎たちが祭りの日に魔物と戦っているときのものであった。
「なんか、こうして自分の声を聞くと、ゾワゾワするな」
「確かに」
普段喋るときに聞こえている自分の声との違いに玄兎は嫌な気分を覚えた。
『はぁ、ぱぱっと終わらせるか』
雅人のこの発言と共に、魔法を放とうとする音が聞こえたが、突如として止まった。
『なんだ今の? 魔物は精神攻撃も使えんのか?』
『そんなの初めて聞いたけど……。しかもそのまま消えちゃったし……』
ここで音声は途切れた。
「今のところで声が聞こえたので間違いないね〜?」
「はい」
「っていうかデバイスの音声って常に録音されてるんすか!?」
雅人の発言に玄兎もハッとした。ジャンはパソコンを操作しながら答えた。
「まぁね〜。ただ、条件を満たさなきゃ僕たちも聞くことは出来ないから安心してよぉ」
それ即ち録音されているということであり、玄兎は何だか息苦しくなった。
「なんだぁ、俺のカッコいいところが常に聞かれてるわけじゃないのかぁ……」
なぜそんなにも雅人がポジティブシンキングを出来るのか玄兎には分からなかった。ジャンはパソコンの操作を終えると、雅人の方を向いて言った。
「じゃ、君はもう帰って良いよ〜」
まさかの言葉だったのか雅人は驚いてジャンに早口で立て続けに質問をした。
「ちょっと待ってくださいよぉ。なんで俺だけなんすか? 俺がふざけすぎたからですか? っていうか、なんで俺たちに魔物の討伐を任せたんですか? そもそもあの魔物おかしかったですけどなんなんですか? というか奥さんは可愛いんですか? 見せて下さい」
雅人は一息で言い切った。それに対してジャンはゆっくりと返答した。
「玄兎くんに用があるから〜。違うよ〜。君の初クエストにちょうど良かったからだよ〜。ウェイラーズで調べてね〜。可愛いけど見せたくな〜い」
玄兎は、よくもまぁ雅人の質問を全部返せるもんだと感心した……本当に全部返せてたのかは分かっていないが。雅人は納得したのかは分からないが、食い下がることなく大人しかった。
「なるほど〜……。じゃあ、玄兎、また明日な! 失礼しました〜」
そう言って雅人は部屋を出て行った。そしてジャンは玄兎に向き直った。
「さーて、玄兎くん。僕は君に興味があったんだ」
「……というと?」
ジャンは今までより口調が真面目になり前のめりになった。
「いやねぇ、大規模出現のときに魔物が生徒を狙っているという話があってね」
学園会議のときの話であった。
「色々カメラを追っていたんだけど、どうも君を狙っているんじゃないのかなぁ、と」
「確かにやたら魔物に狙われていた印象がありますね」
玄兎は言い逃れする気にもならず正直に答えた。
「それに君の他人の魔法をコピーする魔法……はっきり言って異質だよねぇ」
「はい、自分でもそう思います」
「う~ん、なるほど〜……」
ジャンは少し考え込む素振りを見せた。
「君、本当に少女の声について何も知らない?」
「はい、何も」
「因みにあれは魔法だと思う?」
さっきからジャンが玄兎から何を引き出そうとしているのかが分からず、玄兎は困惑していたが、少し考えて質問に答えた。
「う~ん、分かりませんけど、魔法、なんじゃないですかね?」
玄兎はあの時のことを思い出し魔法をコピーして使おうと試みた。使えれば魔法で確定するのだが、やはり出来なかった。
「ふ~ん……」
ジャンは興味無さそうに返事をした。その醸し出す空気感に玄兎は居心地の悪さを感じた。
「なるほどね~、よく分かったよ。それじゃ玄兎くんも帰っていいよ〜」
何が分かったのか、玄兎には分からなかったが、また再び気怠げな感じのジャンに戻った。
「ありがとうございました、失礼します」
「こちらこそ〜」
玄兎は管理棟を出ていのり達との集合場所であるマジグランタへと向かった。
次回の更新は5/20(火)の予定です。
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