【第十四話】 花火に照らされて
「二人ともお待たせ〜!」
「あんたたちはしゃぎ過ぎじゃない?」
一瞬なんの事を言っているのか分からなかったが、玄兎は自分たちがお面を着けていることを思い出した。
「ちょっと聞いてよ、二人とも! 玄兎くんが私の部活に入った理由! 酷いんだよ!」
「そうなのか? 松雪?」
「そんな酷くないと思うけど……。実は――」
玄兎が入った理由はアレックスと初めて会った日、つまり魔法訓練場でアレックスが去った後、翔真に頼まれた事の一つだったからだ。
「あのときは部員が一人だなんて聞いてなかったけどね。廃部寸前とは聞いてたけど」
「それを私に言う!? 嘘でもさ、私に憧れて、とかさ! あるじゃん!」
「ごめん、ごめん」
玄兎はテキトーに謝った。いのりの明るく戻った様子を見てか、クレールは安心したように笑い、ミアは不思議そうな顔をしていた。
「む〜……」
いのりは不満そうにほっぺを膨らませていた。
「ちょっとちょっと」
「ん? みーちゃんどうしたの?」
ミアはいのりを連れ出し、玄兎に聞こえないように何やら話をし始めた。その間にクレールもいのりに聞こえないように配慮してか小さな声で玄兎に話しかけた。
「松雪、ありがとう。久し振りにあんなに明るいいのりを見たよ」
「それなら良かったよ」
クレールと他愛もない話をしているとすぐにミアといのりがやってきた。
「じゃあ、早速向かおっか!」
「あぁ。どうせなら道中何か食べるものを買っていくか」
クレールの提案に乗りかけた玄兎であったが、大事なことを思い出し、踏み止まった。
「あ、それなら大丈夫だよ」
「……どういうことだ?」
「まあまあ、着いてきてよ」
不思議そうな顔をするクレールであったが、玄兎は説明を後回しにして、とある場所へと向かうことにした。
「それで二人ともさっきは何話してたの?」
「私も気になっていた」
玄兎はいのりとミアが何を話していたのかを聞いた。
「ふふん、乙女の秘密よ」
「そ! 乙女の秘密!」
そう言われると益々気になってしまう玄兎であったが、深く突っ込むと何を言われるかたまったもんじゃないため、玄兎は追及するのをやめた。
「気になるな〜」
「クレールには後で教えるわよ」
「本当か? ありがとう」
「えぇ! それはちょっと……」
いのりは何故かそれに後ろ向きであった。
「なに、恥ずかしがってんのよ。……余計に怪しいわね」
「ほらほら! 玄兎くんが話についていけてないから別の話しよ!」
「私もついていけてないんだが……」
「後で話すから!」
いのりは無理やり話を変えた。そんなこんなで騒いで着いた場所は本部であった。
「ん? 何か用があるのか?」
「ちょっと待っててね」
そう言って玄兎は荷物置き場からいのりと共に手に入れた景品や食べ物を持ってきた。
「食べ物はまだ良いわ。なにその景品の量。あんたたち子ども?」
ミアはやや引いていた。
「たくさん買いすぎたからこれ祭見ながら皆で食べよ」
「良いのか? ありがたく頂こう」
ミアは玄兎が持つ袋の中を全て覗いた。
「デザートばっかじゃない! やっぱり道中何か買いましょ」
四人は屋台に寄りながら集合場所へと向かった。集合場所へ着くと、既に着替え終わったエリスもいた。
「うわぁ……エリスさん凄く綺麗です!」
いのりは感嘆の声をあげた。エリスはシンプルな落ち着いた着物を着ており、それでいながら周りに負けていなかった。
「エリスさん、本当に同席しても良いのですか?」
クレールは礼儀正しくエリスに聞いた。
「良いよ良いよ~! あと年齢近いんだし敬語なんて使わないでよ!」
「え、良いの?」
松雪は思わず敬語をやめて聞いてしまった。エリスは悩む素振りを見せた。
「う~んと……男の子はマズイかなぁ?」
「え〜、エリスちゃん、許してよお」
雅人は不服そうに言った。
「あなたは気を使いなさい」
「本当にメラニーさんと同感だわ……」
エリスは少し考えて言った。
「まぁ、皆祭りに夢中だろうしいっか! 無礼講でいこう!」
「あ、私にも敬語は良いわ」
「若く見られたいか、ら゙っ?!」
メラニーは思い切り雅人を小突いた。
「まだ20代前半です」
「うわぁ……相変わらず最低ね、あんた」
「えっと、敬語を使わないように頑張りま……頑張る、頑張ろう」
クレールは意識しすぎて変な言葉になっていた。
「さ、席はこっちだよ!」
エリスの案内に従い六人は席へと移動した。そこは川沿いにシートの引かれた場所であり、七人でも余裕のある広さだった。
「こんな席本当にいいの?」
いのりはエリスに確認した。
「良いよ良いよ! 色々手伝ってもらったし!」
「クレールと私はライブしか手伝ってないんだけどね」
「あはは、そこはほら! ラッキーってことで! 座って座って!」
エリスは皆に座るように促した。
「これ、四人で買ってきたから皆で食べようよ」
玄兎は来る途中に買ってきたものも含めて全てシートの上に出した。
「随分派手に買ったわね~、そっちの景品は?」
「それは玄兎くんと私で取ったやつだよ!」
七人はわいわい喋りながら待っているといよいよ花火が打ち上がり始めた。最初は玄兎たちの目の前で仕掛け花火と共に打ち上げ花火が打ち上げられた。
「うぉー! 最初から飛ばすねぇ!」
「本当に綺麗……」
「こんな大人数で見る機会無かったから嬉しいな」
見えてから遅れてやってくる花火の音はとても早かった。
「見て見て! 川にも反射しててすごい綺麗だよ!」
「あ、あっちにも上がってるわよ!」
「どこを見たら良いか分からないな」
川沿いいっぱいに打ち上がる花火は皆の顔を色々な角度で様々な色に照らした。エリスは皆に聞こえるようにわざとらしく言った。
「まだ雅人くんと松雪くんの口からあの言葉が聞けてないなぁ? 皆も聞きたいよねぇ?」
エリスが女性陣に同意を求めると、女性陣は基本的に同意した。
「聞きたいわね〜」
「聞きたい聞きたい!」
「私は別に……」
「嘘ばっかり〜、言われたら嬉しいくせに」
玄兎にはさっぱり分からなかったが、雅人はすぐに察したようで咳払いをし、声のリハーサルをして格好つけて言った。
「花火より君たちの方が綺麗だ」
「よくできました! ほら、松雪くんも!」
玄兎は言うつもりは無かったのだが、空気感に負け口に出した。
「皆……綺麗……だよ?」
打ち上がる花火を見ながら玄兎は言った。
「ふふ、何それ! 松雪くんこういうの慣れてない?」
「確かに松雪からそういう言葉あんまり聞かないわね」
「そういうのはちゃんと口に出せるようになっておいた方が良いわよ」
「玄兎は高校のときからそんな感じだよなぁ」
玄兎は恥ずかしさで押し黙ってしまった。
「確かに玄兎くんから可愛いって言われたこと無いかも!」
「私は簡単に言わない方が良いと思うが……」
「恥ずかしくなっちゃうから?」
「違う!」
その後、何故か一人一人に言っていく流れになり、玄兎は恥ずかしさの余り、まともに花火を見れなくなっていた。
その後、皆思い思いに喋り、笑い、食べ、今後の不安など頭から吹き飛んでいた。そうして長い間打ち上がり続けた花火もいよいよクライマックスを迎えた。玄兎たちと共に会場も最高潮の盛り上がりを見せた、と同時に後ろから花火とは別の爆音が響いた。
「皆、逃げろ! 魔法使いが暴れている!」
後ろを振り向くと、遠くの屋台が集まる場所で様々な魔法が飛び交い会場が荒らされていた。
「な、何が……」
混乱するいのりたちであったが、雅人と玄兎はレゾナンス・ターミナルで職員に言われたのもあってか冷静だった。
「玄兎、行くぞ!」
「うん!」
すぐに雅人と玄兎はレゾナンス・ターミナルへと向かうことにした。女性陣はデバイスで着替えられないタイプの浴衣なため、雅人と玄兎とは別行動となった。エリス、メラニーは怪我人の応急処置、いのり、ミア、クレールは風紀委員会へと合流した。
「どこに行ったんだ」
玄兎と雅人が現場に到着した頃には暴れていたと思われる魔法使いたちはいなくなっていた。
次回の更新は未定です。第三章を書き終わり次第投稿を再開します。それでは、皆さん、良いお年を!
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