【第十一話】 星影灯篭祭り開幕
レゾナンス・ターミナルに着くと、十名程の人たちが玄兎と雅人の方にカメラを向けていた。
「あの、何か?」
玄兎がその人たちに話しかけても何も返事はなく、ただ無言で二人の方にカメラを向けるだけであった。
「契約者様、お帰りになりましたら共鳴石の返却をお願い致します」
「あ、はい。すみません」
後ろからレゾナンス・ターミナルの職員がやってきた。玄兎と雅人は再び浴衣に戻り、レゾナンス・ターミナルの中へと入っていった。
「お二人とも、今日の祭はお気をつけ下さい」
職員は中に入るや否や二人に話しかけた。
「え、何でっすか?」
「あの大規模出現以来、マギフォビアンの活動が活発になっております。彼らもその一派だと思われます。ではお着替えをお願いします、荷物を持って参ります」
そう言って職員の人は奥へと消えていった。
「……で、マギフォビアンって何だ?」
「魔法使いが嫌いな人たちのことだよ」
「ふ~ん……本人が魔法に覚醒したらどうなるんだろうな?」
「確かに?」
玄兎は雅人の指摘に思わず感心してしまった。玄兎自身もマギフォビアンについては詳しくないので、職員の人を待っている間調べることにした。
レゾナンス・ターミナルから出ると、玄兎はすぐに焼きそばを取り出して食べ始めた。
「あ、俺もお腹空いた! 一口くれ!」
雅人は玄兎が焼きそばを食べるのを見るや否や目の色を変えて焼きそばを要求した。
「さっぎ、ぼぐのケバブだべだじゃん……」
「ちょっとだけじゃーん!」
「しょうがないな……」
玄兎は雅人の口に焼きそばを放り込んだ。
「オープニングセレモニーもなんだかんだもうすぐだし、向かいながら何か買おうよ」
「それ゙もそゔだな。けばぶ美味しがっだし、おれ゙も買いだい」
「じゃ、あっち周りで行こ」
二人は屋台を見て周りながら、オープニングセレモニーの会場へとやってきた。
「あ、玄兎くーん! 雅人くーん!」
声のする方を振り返ると、そこにはいのりとその家族と思しき人達がいた。
「どっちが玄兎くんだね?」
「左の人だよ!」
「あぁ、お主か、握手してくれ」
「あ、玄兎は隣です」
いのりのお祖父ちゃんは、雅人と握手をした後に玄兎と握手した。
「二人ともカッコいいわねぇ……」
「確かにカッコいいね、いのりと付き合うならこうでなきゃ」
「いのりはやらんぞ!」
いのりのお祖母ちゃん、お兄さん、お父さんも好き好きに口にした。
「ごめんねぇ、玄兎くん、皆酔っちゃってるのよ〜……って私もだけどねぇ、あっはっは!」
フォローに入ると思いきや、いのりのお母さんもハイテンションで玄兎の背中を叩きながら笑った。
「いやぁ……久々に皆と会ったけど変わらないね」
いのりは何故か誇らしげになっていた。しばらくの間いのりの家族と皆で喋っているといよいよオープニングセレモニーが始まった。
「皆様、本日はお忙しい中星影灯籠祭りにご参加頂き誠にありがとうございます。開催に先立ちまして先般発生いたしましたエトワール学園大規模出現において犠牲になりました方々への黙祷を捧げたいと思います。黙祷」
会場は沈黙に包まれた。黙祷が終わり、しばし進行するとスーツに身を包んだ男が市長と紹介され、壇上に上がった。
「皆様こんばんは。ただいま紹介に預かりました大宮龍之介でございます」
市長と呼ばれるその男はとても礼儀正しく挨拶をした。
「先程、一週間程前の大規模出現により故人となられました方に黙祷を捧げて頂きましたが、魔物によりまた犠牲者が出たことが無念の極みであります」
その男は怒りと悲しみを込めたように発言した。
「ご存知の通り、このお祭りは緑川市の大規模出現により亡くなられた方を追悼するために始まりました。どうか皆さん、今日は緑川市だけでは無く、エトワール学園で亡くなられた方への想いも馳せてお祭りに参加して頂けますと嬉しいです。さて――」
その後も男は暫く喋った後に壇上を降りた。
「二人とも、そろそろ向かう?」
「おー! 向かおう向かおう!」
「急ぐぞ! エリスちゃんが待ってる!」
三人はいのりの家族に挨拶を済ませ、舞台裏へと移動した。舞台裏へ着くと様々な面々が揃っており、その中には見知った顔であるミアとメラニーもいた。
「はぁ、上手くできるかしら……」
「みーたん、大丈夫! 俺が付いてるから!」
「あんたがいるから心配なのよ」
ミアは相変わらず冷たく雅人をあしらった。そこへクレールが慌てた様子でやってきた。
「皆、すまない。間に合っただろうか?」
「うん、くーちゃんバッチリだよ!」
「うぉ! くーたんの浴衣姿もちょー素敵!」
「あぁ、ありがとう」
皆でわいわいと喋っていると、エリスがやってきた。
「皆、今日はよろしくね!」
「任せてエリスちゃ〜ん!」
「エ・リ・ス・さ・ま!」
エリス過激派と思われる人物から雅人はひんしゅくを買った。これはこの1週間弱の間よく見た光景だった。
「じゃあ皆、今日はよろしくね!」
皆で最後の準備をしていると、いよいよエリスの出番がやってきた。舞台袖で玄兎は服を着替えて待機していた。
エリスが舞台へ出ると、拍手と共にいくつかの歓声と共に怒号が聞こえた。
「魔法使いを祭りへ呼ぶなぁ!」
この声を皮切りにそこで喧嘩が始まった。すぐに警備員がやってきて喧嘩をしていた全員が連れて行かれた。エリスの方を見ると、エリスは至って冷静であった。
「皆さん、こんにちは、エリス・カンティーヌです! 今回このお祭りで歌わせて頂けることに感謝しています。是非皆さん、一緒に盛り上がりましょう!」
そう言うと、舞台のライトが消された。日も落ち、かなり暗くなっている舞台上にエリスは立っており、その顔ははっきり見えなかった。反対側の舞台袖で待機している雅人を見ると、雅人はじっとエリスを見つめていた。
エリスの音楽が始まった。エリスは魔法を使用し自身の周りに光る波紋のようなものを作り出した。
『 Nuits de Feu……Nuits de Feu…… 』
歌に合わせるようにエリスの周りの波紋は出ては消えてを繰り返した。そしてイントロが終わると一気に曲のテンポが上がった。
『夜が包み込む 冷めた街の隅で 一瞬の煌めき 火花が踊り出す』
これに合わせるように両方の舞台袖から炎の魔法が飛び出し舞台を華やかに彩った。そして次から次へと様々な魔法によりエリスの立つ舞台は大きなライブ会場の様相を呈していた。
「玄兎くん、今だよ! えいっ!」
いのりが魔法で出した爆弾、もといけむり玉に紛れ玄兎は舞台の端後方へと移動した。
『騒げ Nuits de Feu! Nuits de Feu! 果てない夜を』
サビに合わせ、反対側に立つ雅人と共に金色の翼で上空へと舞い上がった。サビの間二人は上空を飛び回った。
『 Nuits de Feu……Nuits de Feu…… 』
サビが終わると同時に二人は舞台の袖へ移動し、舞台上は再びエリス一人になった。そしてエリスは自らの魔法で再び舞台を染め上げた。
音楽が終わり、舞台のライトが点くと、エリスはマイクを片手で持ち、もう片手を突き上げて言った。
「皆さん、祭を楽しみましょ~!」
星影灯篭祭り開幕である。
次回の更新は12/13(金)の予定です。
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