【第十話】 不可解な魔物討伐
「え、そんな通知来てませんけど……?」
魔物の討伐となれば、クエストとしてデバイスに通知されるはずなのだ。しかし、今の今までデバイスにそのような通知は入っていなかった。
『俺もよく分かりませんが、委員長からの命令なのでお願いしますね。多分混乱を避けるためとかその辺じゃないですかね? じゃ、そういうことで……あ、近くのターミナルと魔物の位置送っときますね、それじゃ』
アランは一方的に捲し立て電話を切った。隣では雅人が玄兎のデバイスに耳を当てて話を聞いていた。
「な゙るほどね゙~」
雅人は玄兎から預かっていた食べかけのケバブをいつの間にか口に蓄えていた。
「あ! 僕のケバブ!」
「はら゙がへっではいぐさはでぎぬのじゃ……」
雅人はケバブを呑み込んだ。
「ふ〜、美味かった〜!」
「良いもん……まだ焼きそばあるもん……」
「はいはい、食いながらで良いから行くぞ! 道案内頼んだ!」
「僕のケバブぅ……」
玄兎は渋々共鳴石が保管されている近くのレゾナンス・ターミナルへと雅人と共に向かった。
人混みから少し外れたところにその建物は建っていた。銀行ほど豪華な建物では無いが、それなりには荘厳な建物であった。
「こんばんは。身分を証明できるものはございますか?」
中へ入るや否や、身分確認を求められた。玄兎と雅人は学生証を見せた。
「話は聞いております。あちらの席で少々お待ち下さい」
言われた通りの席で待っていると、別の人がすぐに二つの箱を持ってやってきた。
「こちらが共鳴石になります。今回は手続き不要ですので、魔物討伐後に返還をお願いいたします。荷物もお預かりしますよ」
「本当ですか? ありがとうございます、お願いします」
「どうも〜」
玄兎と雅人は焼きそば含め、持っていた荷物を渡した。
「じゃ、戦闘服に変わろっか」
「待て待て」
何気なく戦闘服に変わろうとする玄兎を雅人が制止した。
「俺の初戦闘服だぞ! カメラに収めとけ!」
「……いる?」
「いるわ!」
玄兎は渋々カメラを構え、動画の撮影を開始した。
「え〜っと……? これだな! とぅ!」
雅人はデバイスを持って、片手を挙げた変身ポーズを決めた。玄兎は数秒経った後、動画を切った。
「はい、おっけー」
雅人は何にも変わっておらず、ただポーズをとっているだけの動画が出来上がった。
「何もオッケーじゃねーよ! どう変身するんだよ!」
「……前に教えたし、今日も浴衣に着替えたよね?」
「覚えてないぞ。今日は見様見真似だったし」
悪びれも無く言い放つ雅人に呆れながら、玄兎は雅人にやり方を教えた。
「なんだ、さっきのも惜しいじゃねーか。よし、動画の準備だ、玄兎!」
「はいはい……ほい、どーぞ」
「行くぞ! へーんしん! は!」
玄兎は自分以外にも変身の掛け声を言う人が居たため少し安心していた。雅人は先程と同じポーズを取っていたが、先程とは違い浴衣が光に包まれ、雅人を覆った。そして束の間、雅人は金色を基調とした戦闘服に包まれた。
「お、おぉ? これは……カッコいいのでは!? 玄兎、動画を見せてくれ!」
「はい、どーぞ」
玄兎は雅人にデバイスを渡して動画を見せた。
「かっこよすぎんだろ! 玄兎、お前の変身も撮っといてやる!」
「別に良いんだけどなぁ……」
雅人からデバイスを返してもらい、玄兎は早速戦闘服に着替えた。
「よっと」
雅人のテンションが高かったからか、玄兎はテンションが乗らず、普通に着替えた。
「うわ! その色合いめちゃくちゃお前っぽいな! でも普段の服よりかは流石にかっこいいな!」
雅人の第一声はそれであった。玄兎にはそれが褒めてるのか貶してるのか分からなかった。
「動画見るか?」
「いや、別に良いよ。早く魔物のところに行こうよ」
「それもそうだな。後で動画送っとくわ!」
そう言うと雅人は背中から金色の翼を生やした。その魔法を玄兎も真似た。
「お、今は魔法使えるんだな?」
「うん、なんか使えるね」
雅人は玄兎をジロジロと見ると、徐々に顔が膨れ上がり、遂に吹き出した。
「ぷふっ! お前の戦闘服にその翼は似合ってねぇな!」
「うるさい、案内するから着いてきてよ」
「あいよ〜!」
まだ明るい空を金色の翼を生やした二人が翔けていった。玄兎は翼を動かす感覚に最初は四苦八苦していたが、それを掴むと次第に空を翔ぶのが楽しくなっていた。
「あ、あそこかな?」
「おうおう、光ってやがるぜ。あそこだな」
雅人は急降下したため、玄兎も慌てて着いていった。下へ着くと、そこには動きがおぼつかない人型の魔物の姿があった。
「なんだよ〜、もうちょっと強そうな魔物が良かった〜」
「僕達が討伐する魔物はこれくらいで十分だよ」
「はぁ、ぱぱっと終わらせるか」
雅人は手を前に出し、魔法を放つ準備をしたため、玄兎もミアとクレールが繰り出していた風を纏った氷の剣を用意して構えた。
『だめっ! やめてっ!』
突如として玄兎の脳内に女の子と思われる声が響いた。それは雅人も同様のようで二人は動きを止めてしまった。しかし、何もしていないにも関わらず目の前の魔物は地面に溶けて消えてしまった。
「なんだ今の? 魔物は精神攻撃も使えんのか?」
「そんなの初めて聞いたけど……。しかもそのまま消えちゃったし……」
再び玄兎の電話がなり、電話に出ると、その主はセキュリティ委員のアランであった。
『お疲れさまです。アランです。討伐を確認したので報酬を振込んでおきますね。それでですね、質問があるんですが、今回の魔物におかしなところがありませんでした?』
玄兎は隣で聞いていた雅人を見ると訝しげな顔をしていた。
「そうですね……いくつか」
『ほう、いくつかですか。全部教えてください』
玄兎が魔物の動きがおぼつかなかったこと、少女の声が聞こえたこと、その後魔物が勝手に消えたことを報告した。
『少女の声? それは二人とも聞いたんですか?』
「え、はい……」
アランは他の二つについては心当たりがあるようであったが、少女の声については何も知らないようであった。
『……それについては後で細かく報告をお願いします。では祭りを楽しんで下さい』
魔物のことを聞きたかった玄兎であったが、アランに電話を切られてしまった。
「ま、時間も時間だし戻ろうぜ。腹減った!」
「それもそうだね」
二人はまだ明るい空を再び戻っていった。
次回の更新は12/12(木)の予定です。
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