【第七話】 魔力測定、再び
「あ、ごめんなさい! 集中しちゃうと周りが見えなくなっちゃうんです……。暑いですよね? 中へ行きましょう!」
女性は落ち込んでいる玄兎を見て、気を使ったつもりなのだろう。そういうことじゃないのだが、玄兎は案内されるがまま彼女へと着いていった。
「あの、名前は何ていうんですか?」
玄兎が名前を聞くと女性は慌てて自己紹介を始めた。
「す、すすすみません! 名乗りもせず、研究に協力させるなんて失礼ですよね……。そんな失礼な女の名前なんて覚えなくていいですぅ! ゴミとでも呼んでくださいぃ!」
その女性は小走りで総合研究棟の入口へ向かっていった。そしてカードをかざして、総合研究棟の入口を開くと、そのまま中へと消えていった。
玄兎は入口の前で立ち尽くすしか出来なかった。
「え、どうすれば良いんだろう? っていうか研究に協力って言ってた?」
十秒も経たない内に彼女は戻ってきた。
「す、すみません……私の名前はクララ・フィンチです……お願いします……」
クララの隣を見ると学園会議に参加していたオリバーの姿があった。
「君が松雪イケメンか! 会いたかったよ〜!」
そう言ってオリバーは無理やり玄兎に握手をしてきた。
「パーカーイケメンから聞いてるかも知れないけど、僕の名前はオリバー・マイケルソンだよ。よろしく」
「よろしくお願いします、あのパーカーイケメンって?」
どこかで聞いたような名であったが、誰の事か思い出せなかった。
「えっと、報道委員長といえば分かるかな?」
「あぁ、ジョナサンさん! それで今日はなぜ僕が呼ばれたんです?」
「あぁ、それは君に是非フィンチとてシャンの卒業研究の手伝いをしてあげ――」
先程まで遠くで小さくなっていたはずのクララがいつの間にか笑顔になっており、いきなり玄兎を引っ張り出した。玄兎を総合研究棟の中へと引きずると、そのまますぐ近くの部屋へと引き込んだ。その後ろを遅れてオリバーが着いてきた。
「あのですね! 魔力ってRGBで表されるじゃないですか! これって何でだと思います!?」
興奮するように質問するクララに対して、玄兎は気疲れからテキトーに返事をした。
「いや、分かんないです」
遅れてオリバーが入ってきた。彼は玄兎とは対照的に身体が疲れていた。
「はぁはぁ……若者、体力ありすぎ……」
そんなオリバーを放置してクララは話を続けた。
「その理由はですね! 魔力をスペクトル解析することが難しかったからなんです!」
「すぺくとるかいせき……?」
クララは玄兎の疑問を無視してそのまま話を続けた。
「でもですね! 遂に! 人類は! その課題を! 克服できたんです! これが何を意味するか!? 分かりますか!? それはですね! 今まで同じ魔力量だと思われていた魔法使いも実は違いが――……」
クララはすっかり自分の世界に入り込んでしまった。そんなクララの代わりにようやく落ち着いたオリバーが玄兎に説明した。
「つまるところ、詳しく魔力量を測定できるようになったと考えてくれていい。そこで特殊な魔力量を持つ君を測定してみたいわけだ」
「なるほど、それでどうすればいいんですか?」
玄兎は科学の話など微塵も興味が無かった。
「フィンチとてシャン、これを見るんだ」
「へ……?」
オリバーはクララに向かってデバイスの画面を向けた。その瞬間、急にクララが慌てて謝った。
「す、すすすみません! 何か御用でしょうか、マイケルソンさん!」
「松雪イケメンが何をすればいいのかと聞いているよ」
「あ、えっと……こちらへどうぞ……」
玄兎は案内されるがまま奥へと進むと、ケーブルに繋がれた機械がいくつも並んでいた。そしてその中央には魔法覚醒検査で見慣れた機械が置いてあった。
「すみませんけど、ここに手を置いてください……そ、そのまま少し待っててください!」
そう言ってクララはケーブルのつながった機械たちを一通り確認した後、そのケーブルの行き着く先と思われるパソコンの前に座った。玄兎は手を固定しながら、数分間だらだらと喋っていると、突如として音が鳴った。ふとパソコンの画面を見ると、そこには黒い背景に横一直線の白い線が引かれていた。
「う~ん、やっぱりこれだと非術者と一緒……」
クララがそれを見て悩んでいると、オリバーがデータを見ながらクララに話しかけた。
「これは発光スペクトルかい?」
「は、はい! そうです……」
「吸収スペクトルと透過スペクトルも一緒に測ってみたらどうだい?」
クララは少し考える様子を見せてから、答えた。
「で、でも、それも非術者と一緒になるんじゃ……」
「仮説を立てるのは大事だが、仮説を前提に動いてはいけないよ」
言い方が少し厳しかったため、玄兎はクララが驚くかと思ったが、クララはかなり冷静であった。
「確かにそうですね……やりましょう! 松雪さん! 協力お願いします! あ、手はもう退けていいですよ」
玄兎は慌てて手を引っ込めた。オリバーとクララは二人で機材を何やら弄り続けた。そして直ぐに同じように測定を開始した。
測定が終わり、グラフが表示されるとクララとオリバーは二人して驚いていた。
「な、何ですか、これ……ど、どういう……?」
「……もう一度測ってみよう」
玄兎もグラフをみたが、さっきと同じように横一直線になっており、何に驚いているのかが分からなかった。だが、何かしら特異なことが起きていることは二人の反応から明らかであった。
「すまない、松雪イケメン。長くなると思うがもう少し手伝ってくれ」
そう言われ、もう2回同じようなことを繰り返した。結果としては、2回とも横一直線のグラフになっていた。
「え~っと、つまり? 何がおかしいんです?」
玄兎は二人の反応がいよいよ気になったため、聞いてみた。
「え、えっと、グラフが一直線なのがおかしいんです……。そ、それが何を意味するかは、私には……」
オリバーがパソコンのグラフを何やら操作しながら、少し考え込んでからゆっくり口を開いた。
「確たることは言えない、が……君の魔法の構造はそう単純なものじゃないらしい」
玄兎は詳しく聞こうとしたが、オリバーはもう少し確証を持ってから答えたいということで引き上げ、先に話が済んでいた雅人と合流することにした。
次回の更新は12/9(月)の予定です。
感想やアドバイス、疑問点をくれると凄く嬉しいです。
考察とかも大歓迎です。
頭を空っぽにして読むのも大歓迎です。




