表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光り輝く学園生活  作者: とっきー
第一章 光る学園
2/35

【第二話】 魔法学園入学

 結局学校に戻ることなく魔法学園への転校が決まった。魔法学園入学に際して、外部との連絡が制限されるため、その前に玄兎は友達の雅人に【教室に行けなくてごめん】とだけメッセージを送った。


 魔暦523年06月14日、玄兎はエトワール学園の学生寮前に立っていた。この学園はマルキエラ大陸に存在する唯一の魔法使い養成機関であり、大陸の中央にそびえる山脈のくぼみに位置している。学園といっても、その中に複合施設や一軒家、他の都市と繋ぐ乗り物、学園内を移動できる乗り物まであり、1つの街と言っていいほど充実している。玄兎は生徒会長が案内してくれるとのことで、やることもないので生徒会長の顔を想像しながら待っていた。


 数分すると、少し変わった制服を着た銀髪の男性がやってきた。その男性は笑みを浮かべながら自己紹介を始めた。


「待たせてすまなかったな。俺はお前と同じ日和国出身の生徒会長、鷹巣翔真だ。よろしく頼む」

「松雪玄兎です! よろしくお願いします」


 玄兎は背を正して挨拶をした。

 

「そう固くならなくていい。なんなら敬語も使わなくていいぞ」

「それは流石に……」

「ふふっ。そうかそれは残念だ。俺はタメ口でも気にしないからいつでもやめてくれていいぞ」


 突如玄兎のお腹が鳴った。


「腹が減っているのか?」

「……えへへ~」

「ならば食堂にでも移動するか」


 玄兎たちは早速、学園内の食堂に移動した。そして玄兎はこの学園で使用するデバイスの使い方を翔真に教えてもらい始めた。しかし、翔真は機械に疎いようで、手に持っているメモ用紙らしきものをまじまじと見ていた。


「ふむ……。やはり俺は機械音痴だな。何一つ分からん。副会長が来られればよかったんだがな」


 玄兎は口に含んだご飯を急いで飲み込んだ。

 

「なんならその紙を僕に貸してくれますか?」

「ん……、あぁ」


 翔真は申し訳なさそうな顔をしながら紙を差し出した。


「……読めない。え、会長これなんて書いてあるんですか」

「む、やっぱりそうか、これはな――」


 結局、文字を翔真に解読してもらいながらデバイスの基本機能については理解した。


「会長は一体それでどうやってデバイスを使っているんです?」

「ん~……あまり使ってないな。通話の仕方だけは分かるから基本的に通話と、あとは戦闘服と制服を切り替えるときだけだな。それ以外は生徒会の誰かにやってもらっている」

「それは不便そうですね……。とりあえず会長の連絡先貰っといていいですか?」

「あぁ、もちろんだ。それでこの後なんだが……」


 翔真が途端に真剣な顔になり玄兎の顔をじっと見つめた。玄兎は何か嫌な予感がした。


「授業を受けた後、すぐに魔物討伐に一緒に行こう。お前の出来ることを確認したい」

「えっ」


 玄兎は持っていたお箸を落としそのまま固まってしまった。

 

「あぁ、安心してくれ。これから受ける授業で魔法の扱い方は分かるようになるはずだ」


 玄兎の心配はそこではなかった。心配どころは人生が終わるのではないか、という所である。それを察したのか翔真が笑みをこぼし言った。


「なに、そんなに強い魔物じゃない。それに俺がついているし、基本戦うのは俺だ。ただ試したいことがあるからついてきてくれ、と言った方が良かったか?」


 玄兎の耳には既にそんな言葉は入っていなかった。半分放心状態の玄兎は味のしなくなったご飯をゆっくりと食べ、その後翔真と共に授業を受ける教室へ向かった。




 授業を受け終わった玄兎は授業内容を振り返るためにデバイスをまじまじと見つめていた。玄兎は未だに魔物討伐のことを引きづっており、授業をほとんど聞けていなかったのだ。


「ちょっとあんた!」


 玄兎の目の前におさげの女性が立っており話しかけてきたが、玄兎は全く気付かなかった。


「ちょっとあんたってば!」

「ふぇ!?」


 その女性がより大きな声で話しかけてきたことで玄兎はようやく気付いた。ふと教室をみると授業を共に受けた他の二人の女性も玄兎の元へ駆け寄ろうとしてきた。しかし一人の女性はもう一人の女性に制止されしぶしぶ机に戻っていった。

 

「あんたさっき生徒会長と話してたでしょ!」

「えぇ、話してましたけど……」

「おいミア。あまり初対面の相手を困らすな。私の友人がすまないな。私はクレール・ルモンドだ」

「学園不思議研究部のミア・スターリーよ。それより生徒会長に……」


 ミアはクレールの剣幕に気圧され押し黙った。そしてクレールは玄兎に自己紹介するように促した。


「僕は松雪玄兎です。よろしくお願いします」

「む、その名前は日和国出身か。あそこにいる友人も……どこ行った?」


 先ほどクレールに制止され前の机に居たはずの女性が教室をざっと見渡してもいなかった。ミアとクレールは目を見合わせ頷いた。

 

「まさか逃げたんじゃない!?」

「はぁ……松雪、すまないな。また今度会ったらゆっくり話そう」

「えぇ、また今度」


 二人は荷物を持って慌ただしく教室から出ていった。玄兎が再びノート整理をし始めると、前の教卓が突然動き出し、人が出てきた。


「じゃじゃーん! ここでした! ふぅ、二人にバレなくて良かった」


 先ほどいなくなったはずの女性であった。その女性は玄兎を見ると誇ったように笑いながら自己紹介を始めた。


「ふっふっふ~。私は何でもお助け助っ人部部長、霧山いのりだよ。君は最近ここに来たばかりだろうから私がこの学園について色々教えてあげるね」


 いのりがそう言い終えると図ったようにミアとクレールが教室に戻ってきた。あまりに凄い剣幕だったので玄兎は手を止め固唾を飲んで見守った。


「やはりここか!」

「ば、ばれてた!? なんで!?」

「誰のせいでこの授業を受ける羽目になったと思っているんだ!」

「そうよ! こんな授業、普通転校生しか受けないんだから! あんたはさっさと勉強に戻って次のテストを合格しなさい!」

「さぁ今から勉強の続きをしようか」


 そういってクレールはいのりを引っ張った。いのりはクレールに引っ張られながら泣きそうな顔で玄兎を見た。


「お助けを~!」


 そして今だと言わんばかりにミアがそーっと玄兎の元へやってきた。


「ねぇ、さっきはごめん。それで生徒会長に――」

「さぁ、行こうか」


 クレールはミアを引っ張った。ミアもクレールに引っ張られ悔しそうな顔で玄兎を見た。


「なんでよ~!」


 クレールはいのりとミアを引きずり教室を出ていった。静寂が訪れた教室で玄兎は再びノート整理を始めた。


 玄兎は魔物討伐のことを半分忘れていたが思い出し、再び憂鬱な気分となっていった。

次回の更新は5/9(木)の予定です。

感想やアドバイス、疑問点をくれると凄く嬉しいです。

考察とかも大歓迎です。

頭を空っぽにして読むのも大歓迎です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ