【第五話】 魔物の行動動機
「どどどど、どういうことなのですか! 生徒が狙われていたですと!? 二の句が継げませぬぞ! 説明してくだされ!」
「裁判長、継げてます。……しかしこれは説明して頂かないといけないですね?」
「も、もしかして狙われてたのって……!」
「そういうことかもね~」
「……これはまずいかもね」
「ふ~ん、あれは生徒を狙ってたんだね」
会場内では皆が思い思いの言葉を発していた。
「会長、タイミングを失敗しましたね」
「というより口を滑らせたというのが正解じゃない?」
翔真の隣に座る真希とバスティアンは冷静に分析していた。
「二人ともやめてくれ……。皆さん、生徒のことについては後に詳しく説明しますが、その前に教授にお聞きしたいことがあります。魔物の動きが変というのはどういうことですか?」
オリバーは少し考え込んだ後、鞄の中からでかめのデバイスを取り出し話し始めた。
「魔物が弱かったこと、特定の生徒が狙われていたこと、魔物が妙な動きをしていたこと、この3つは恐らく関係しているんじゃないかな。だからまとめて説明するよ。ルッセルイケメン、デバイスをスクリーンに繋げてもいい?」
「ちょっと待ってくださいよ」
バスティアンはなにやら手元で作業をし、スクリーンの画面を消した。
「どうぞ」
「ありがとう」
そう言うと、オリバーは手元で作業をし始めた。
「講義で使用しているものだから余分なことも書いてあるだろうけど気にしないでね」
そう言いながら何回かデバイスをスワイプした。オリバーがデバイスをスワイプし終わる頃には、映像にはその時に映っていたと思われるスライドが映された。そのスライドのタイトルには【大規模出現一覧】と書かれており、以下のようなことがまとめられていた。
【 発生年 名称 ターゲット
魔暦0年 マルキエラ大陸原初魔災 不明
魔暦164年 南部天連山脈大規模出現 負傷兵士
魔暦247年 ストナリア・リバーブライズ州軍事基地支配 武器・戦闘車両
魔暦409年 フォーブロン・クレストラ県大魔災 住民
魔暦513年 日和国・緑川市支配 研究所 】
「一応だけど、まだ研究中だから仮説の話でしかないからね? 間違ってても勘弁してね?」
オリバーは不安そうな顔で翔真を見てそう言った。
「それでも参考になるのでありがたいです。よろしくお願いします」
翔真が真剣な表情で答えるとオリバーは少し安心したような顔をすると、会議場の全員を見ながら話を始めた。
「まず、今回の大規模出現の分かりやすい大きな異常は前回の大規模出現からほとんど時間が経っていないということです。大規模出現の予兆から起こるとは予想していましたが、まさかたったの十年で起こるとは驚きでした」
この発言を聞いて映像内のジョナサンが手を挙げて質問した。
「教授、話の腰を折ってしまってすみませんが、1つ質問を良いでしょうか?」
オリバーは質問があるのが想定外だったのか少し驚いた顔をしたが、すぐに返答をした。
「もちろん。皆さんも質問があればどんどんしてください」
「ただの興味なんですが、大規模出現の予兆というのはいつ頃から出ていたんでしょうか?」
この質問に対し、オリバーは歯切れが悪そうに答えた。
「小さな予兆で言えば十年前の大規模出現後からずっとあったよ。ただ、大きな予兆と言うと数ヶ月前からだね」
「つまり、今回の大規模出現は十年前の大規模出現の続きだと言うことですか?」
この質問に対しては、オリバーははっきりとした口調で答えた。
「それは無いかな。十年前の大規模出現のときとは明らかに魔物の目標も違うし、魔物はあの地域をあれ以来支配し続けてるからね」
「ですが、リバーブライズ州では数年ごとに大規模出現が起こっていたんですよね?」
ジョナサンはオリバーに問いかけた。
「よく知ってるね。でも、あの一連の大規模出現では魔物の目標は変わらなかったからね。そこが大きな違いかな」
「なるほど、ありがとうございます。話の腰を折ってしまいすみませんでした」
「いいのいいの! 寧ろ質問ありがとう」
映像内のジョナサンはデバイスに何やら書き込んだ後、考え込んでいた。オリバーは他に質問がないことを確認すると話を進めた。
「まず、魔物が弱かったことは前回の大規模出現から十年しか経っていないということが原因だと考えられます。ではなぜたったの十年で起きたかということなんですが……」
オリバーは申し訳なさそうに手を挙げるアレックスを見ると、話を止めた。
「教授、すみません。私からも質問いいでしょうか?」
「ええ、どうぞ」
アレックスは顎に手を当て、考え込みながら話し始めた。
「私は十年前、日和国の戦闘に参加しておりました。確かに今回の大規模出現の魔物は、前回の大規模出現の魔物よりも全体的に弱かったですが、十年というスパンにしては強いように感じました。それに普段出現している魔物よりも弱いというのはどういうことなのでしょうか?」
「ご質問ありがとうございます。前者に関しては今回の大規模出現では魔物が一日にエネルギーを集中させたのかと。光耀帝が初日に現れたのもそれが原因と考えます。後者に関しては、魔物が質より量を優先したのではないかと考えます」
オリバーは淡々とそう答えた。
「そこまでギリギリの状態で今回魔物は攻めてきたのですか」
「えぇ、そういった意味でも今回の大規模出現はかなり特殊です」
「なるほど、ありがとうございます」
アレックスは頷きながら感謝を示した。
「いえいえ」
そう返事すると、オリバーは再び元の話題に戻り話し始めた。
「えっと、ではなぜ十年で起きたかということなんですが、これに関しては魔物の動きが参考になると考えます。……さっきの映像出せる?」
オリバーはバスティアンに先ほどの映像を出すように求めた。バスティアンがすぐに映像を流すと、オリバーは説明を続けた。
「今までの大規模出現では魔物は生まれたらすぐに目標に向かって進んでいました。しかし今回の大規模出現では、最初は不規則に動いた後、途中から一か所に集まりだしています。つまり、そのとき初めて目標を見つけたことになります」
この発言に対して、裁判長と呼ばれていた男性が疑問を呈した。
「おかしくないですかな? 目標があるから大規模出現が起こるのにこれでは大規模出現が起こってから目標を見つけていることになってしまいますぞ」
「恐らくですが、魔物は学園に目標があることだけは分かっていたのではないかと」
この回答に対して、その男性はあまり納得したような顔をしていなかったが、オリバーに話を進めるように促した。
「ふむ、なるほど……。時間を取らせてすみませんな。して、僅か十年で発生した理由はなんですかな?」
「……正直分かりません。魔物が過去に個人を狙ったことなんて無いですから、狙われた生徒が持っていた何かなのかな、と。それが魔物にとって重要であるが故に十年という短いスパンで大規模出現が起こったと個人的には考えています。……と、こんな感じでどうかな? 鷹巣イケメン」
「他に質問が無ければ、私からも質問いいでしょうか?」
オリバーは周りからの質問が無いことを確認すると、翔真に質問をするように促した。
「今後再び学園で大規模出現が起こることはあるのでしょうか?」
「はっきり言うと分からないね。魔物が目的を達成したか次第だよ。こればかりは魔物の狙いがはっきりしないとなんとも……」
「では再び起こると考えて行動した方が良さそうですね。ありがとうございます。それではそのまま次の議題に――」
次の話に進もうとしたとき、ジョナサンは映像を止めた。玄兎が不思議そうな表情でジョナサンを見ると、ジョナサンは真剣な表情で玄兎に話しかけた。玄兎はその表情に少し恐怖すら感じた。
「松雪くん、魔物が狙っていたのは君自身じゃないのかい?」
次回の更新は12/7(土)の予定です。
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