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光り輝く学園生活  作者: とっきー
第二章 消えゆく半影
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【第二話】 空の下の願い

 魔物の大規模出現による戦闘などにより一部破壊されていたマジクランタであったが、その周辺を立入禁止にした上で既に営業が再開されていた。商魂がたくましいのもあるが、それ以上にマジクランタが機能不全に陥ると、学園の北側に住む人々が不便を強いられるためである。


 マジクランタに着くと二人は立ち入りが禁止されている東出入口の方向に向かった。東出入口の近くには主に雅人が作り上げた大きなクレーターがあり、雅人が見たいと言ったためだ。そのクレーターはドーナツ型のクレーターとなっていた。


「うっひゃ~、俺の魔法すげ~!」

「改めて見るととんでもないね、これ」

「うん、満足! 浴衣を買いに行こう!」


 雅人は一目見て満足し、踵を返し中央出入口へと向かった。案内板によると、二階の東側に目的の浴衣が売っていると思われるお店があるようだった。しかし、昼も近いため、二人は一階のフードコートで昼ご飯を食べてから向かうことにした。


 二人で座ってご飯を食べていると雅人が周りに聞こえないような声で玄兎に話しかけた。


「……なぁ玄兎、お前の後ろにいる女の人凄いこっち見てくるんだけど、知り合い? 俺……あんな綺麗で可愛い人に見つめられたら……緊張して飯が食べられねーよ……」


 そう言いつつ雅人は寧ろさっきまでよりもがっついてご飯を食べていた。玄兎が後ろを向いて確認すると、少し後ろにこちらをじっと見つめる女性が座っており、気付かれたと思ったのか、飲み物を持って慌てて去っていった。


「う~ん、見覚えはないなぁ」


 向き直って雅人を見ると何故か涙目になっていた。

 

「お前もうちょっとバレないように見ろよ! 眼福がぁ……目の保養がぁ……飯がまずくなるぅ……」

 

 その後は何事も無かったかのように他愛もない話をしながら雅人と玄兎はご飯を食べ進めた。ご飯を食べ終え、浴衣を売っていると思われるお店へと移動すると早速店員の人が話しかけてきた。


「いらっしゃいませ。何かお探しですか」

「浴衣を探しているんですけど」

「それではこちらへどうぞ」


 店員の人に案内されるまま、着いていくと多くの浴衣が並ぶ場所へと着いた。雅人は早速あれこれと見ていたところ店員の人からの説明が入った。


「値札の左上に星のマークが描かれているものが、データでの販売が可能となっているものです。現物を買うよりお値段は高めですが、新しいデザインのものに変えたいときなどは格安で変えることが出来るのがメリットとなっておりますので、ご一考ください。何か御用がありましたらお呼びください、失礼いたします」


 そう言うと店員の人は去っていった。


「なぁ玄兎。店員の人が言ってたデータでの販売ってどういうこと?」

「あぁ、いつでもデバイスからその服に変えられるようになるやつだね。魔法使いが変身するのと同じだよ」

「なるほどな。面白そうだしデータで買おっと。で、そのデバイスからの変身ってどうやんの?」


 玄兎は転入初日に翔真からデバイスの機能に関する説明を受けていたため、変身の仕方を知らない雅人に疑問を感じた。

 

「ん? デバイス貰ったときに説明なかった?」

「今日の授業で説明されるって……あ、遅刻したんだったわ、俺」


 玄兎はしょうがないので、デバイスから別の服装に変身する方法を雅人に教えた。


「ふむふむ、なるほどね。しっかしこの便利な技術、なんで浸透しないんだろうな」


 実のところ、この技術は知名度こそ高いものの、学園以外では利用されていなかった。そんなことを言いながら、雅人は浴衣姿にデバイスからの変身で試着した。


「どう? どれが似合うと思う?」


 雅人はそう言いながら鏡の前で自分でも見ながら代わる代わる様々な柄のものに切り替えた。


「色はよく分かんないけど、柄が大きいやつが似合ってる気がする」

「やっぱり? 俺もそんな気がする。ん~……帯とかも一通り見て決めよっと。玄兎はどれにすんの?」

「これでいいかな」


 玄兎はファッションに対して興味が無かったため一番シンプルな柄の紺色のものに既に決めていた。データでの販売にも対応しているため、似合わなかったら後から変更すればいいかという安直な気持ちもあった。


「相変わらずだな、お前」


 二人はその後、帯やバッグ、下駄なども決め、会計を済ませた。バッグや下駄などの荷物は住んでいるところに届けてくれるというので、二人はそのサービスに甘え、結局店を出る頃には入った時と同じ荷物しか持っていなかった。店を出ると、昼ご飯のときに会った女性が今度は遠くからこちらを見つめていた。


「……なぁ玄兎。もしかして俺らストーカーされてる!?」

「なんでそんな嬉しそうなの?」


 雅人は言葉の並びとは裏腹に凄い笑顔であった。遠くにいる女性は玄兎たちに見られているのに気付くと、今回は慌てることなく胸の前で人差し指を立てたのを見せて去っていった。しかし玄兎と雅人にはその意図が分からなかった。


「いち……?」

「なんだ? 忍者の真似事か?」


 結局二人は考えることをやめ、ゲームセンターに行こうとすると何故か出入口にその女性が立っていた。今度は目を合わせることなく顔の横で人差し指を立てながら何かを呟き、すぐに去っていった。二人は女性との距離が遠かったこともあり、ゲームセンターの音で何も聞こえなかったため、追っかけて聞こうとしたがすぐに見失ってしまった。


「やっぱり忍者だな! すぐ消えた!」

「う~ん……」


 玄兎は女性が何かを訴えているような気がしてならなかった。


「探しに行く?」 

「楽しそうだな! やろうやろう!」


 玄兎は割と真剣に探しに行くつもりであったが、雅人は完全に女性を忍者だと思っておりかくれんぼをするかのような気合いの入り方であった。


「よーし、じゃ早速――」


 ふと吹き抜けから二階を見ると先程の女性が玄兎たちを見下ろしていた。女性は胸の前で小さく指を横に指し、その方向に去っていった。


「どこかに来て欲しいのかな?」

「まさか俺に一目惚れで……!? 玄兎! 急ぐぞ!」

 

 女性とつかず離れずの距離を保ちながら追いかけていくと、戦闘の影響で現在立入禁止となっている屋上の扉の前に着いた。


「おいおい、これっていよいよ……! 楽しみだなぁ! 失礼しま~す」


 扉を開けると女性が後ろを向いて待っていた。こちらを振り返ると一度微笑み、深呼吸をした。たったこれだけの動作であったが二人は彼女が作り出す儚い空気感にのめり込み黙り込んだ。そして彼女は歌いだした。


 『明るい光を浴びて痛みを忘れて 暖かい温度に包まれて救いを覚える 笑っておやすみ』


 三人を静寂が包み込んだ。玄兎には吹き抜ける風の音すら無音に感じられた。

 

「……綺麗だ」


 雅人は小さくそう呟いた。


「ふふっ、そう? ありがと」


 彼女はこなれた言い方で感謝を述べた。


「二人とも、名前はなんていうの?」

「松雪玄兎です」


 玄兎が自己紹介しても雅人は黙っていた。というよりもぼっーっとしていたという方が正しかった。


「お~い、名前は~?」


 彼女が呼びかけてはっとした雅人はようやく自己紹介をした。


「お、俺は長岡雅人です!」


 それを聞くと女性はニコニコしながら頷いた。


「うんうん、そっかそっか」


 彼女は雅人の方に真っ直ぐ体を向けた。


「長岡雅人くん、君にお願いがあるの」


 彼女は笑顔を崩さず言い放った。


「私を殺して」

次回の更新は12/4(水)の予定です。


感想やアドバイス、疑問点をくれると凄く嬉しいです。

考察とかも大歓迎です。

頭を空っぽにして読むのも大歓迎です。

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