【第十二話】 魔物の大規模出現 三色の炎
「おいおい、今どこから出てきたんだ!?」
馬木が驚いたのも束の間、更に玄兎達の中央からどこからともなく背が低めの女性が出てきた。
「はぁ~い♪ おやおや……問題児がたくさん……。知らない顔もいるね?」
「杜若さん!」
「副委員長!」
急に出てきた女性は、少し前までいのりが連絡を取っていた杜若であった。
「よっと!」
掛け声と共に杜若は、少し前に玄兎達と共に戦っていた妖精とタコのような生物に加え、狼、鷹、魔法剣士のような人型の生物を出した。妖精はその場にいる全員にキラキラとした魔法をかけた。すると体の疲労回復に加え、全員の魔法がより強固のものとなり、玄兎たちは更に勢いを増した。これによりクレールは空からの魔法を防ぐのを止め、再び前線へと移動した。
「鹿くん、どうやってうちらが来たか気になる~? 気になるよねぇ……うんうん」
杜若が中央でニコニコしながら頷いていると翔真が口を開いた。
「皆、そろそろ本格的に作戦が始まる。心構えをしておいてくれ。……因みに蓬莱剛太という生徒の魔法によるものだ」
「あっ! ちょっと~、こういうのは焦らすから良いのに~!」
二人は玄兎が一度使用したあのワープの魔法で来たようであった。杜若が発言した束の間、すぐに校内放送が流れた。
『私は特殊作戦隊隊長のアレクサンダー・ドレイクだ。現在戦闘に参加している者は耳を傾けて欲しい。今魔物は複合施設マジクランタA館東出入口に向けて進軍している。学園生はデバイスを確認し近くの迎撃ポイントへ移動してくれ。デバイスを確認できない者はマジクランタ近くへ移動を頼む。繰り返す――』
放送が終わった。放送が終わるや否や、バスティアンは翔真と何かを話し合っていた。
「つまり、あとちょっと耐えれば楽になるってことか! やるぞぉ、俺様! やるぞぉ、皆!」
馬木が掛け声をかけると玄兎、クレール、いのり、小田切が呼応した。続けて戦っているとバスティアンとの話し合いが終わった翔真が玄兎に話しかけてきた。
「玄兎、お前と一緒に行動していた他三人は誰だ?」
「三人って言うと……いのりさんとクレールさんと馬木くんです」
「……そうか。玄兎は引き続きここで魔法を頼む」
そう言うと翔真は小田切と杜若を玄兎から離し、前線で戦っている三人の元へとそれぞれ赴いていき玄兎の元へ集合させた。そして翔真は開口一番申し訳なさそうな顔をして言った。
「すまない、四人とも。お前達は前線へと出ないでくれ」
「なっ、どういうことです?」
「戦力が激減するじゃねーか!」
翔真は少し考えた後腹を括ったように話した。
「今、魔物に狙われているのはお前達だ」
「そ、そんな……そのせいで……」
いのりはこの言葉により再び自責の念に駆られてしまった。
「それなら尚更私達も戦うべきかと」
「そうだぞ!」
「僕もそう思います。他の人にだけ迷惑をかけられないです」
どう説明すれば良いのか分からないのか、翔真の顔はやや困惑していた。そこにバスティアンがやってきた。
「会長、俺から説明する。会長は戦っててよ」
会長は申し訳なさそうな顔をしながらバスティアンと交代した。
「手短に話そう。今学園の被害は驚くほど最小限に抑えられている。それはひとえに魔物が君達をしつこく狙っているからだ。もし君達が死にでもして魔物が目的を果たしたらどうなると思う? 魔物は? 作戦は? 皆を生かしたいなら、君達は生きなければならないんだ。決して魔法を使うな、と言っている訳ではないんだ。……協力を頼む」
バスティアンは真剣な眼差しで表情一つ変えることなく玄兎達に説明をした。玄兎と他の三人がそれぞれ抱える思いは違っていそうなものの、全員納得し、その場に待機した。
クレールは前線で戦えなくなったため、再び上からの魔法攻撃を防ぐことに注力した。いのりは遠距離魔法を使えるはずであったが、ただその場に立ち尽くしているだけであった。遠距離魔法が使えないためか、馬木は玄兎たちの隣でぼんやり何かを考えていた。
「ん~……ねえ、いいんちょ、あの四人どうしたんだろね?」
杜若は何かを察知したのか、玄兎達に聞こえる声量で小田切に疑問を投げかけた。それを聞いていたバスティアンが小田切の代わりに答えた。
「これが無事に終わったら話す。あの四人を優先して守ってくれ。この作戦の要だ」
作戦の要と言われても玄兎は複雑な気分であった。もし魔物が自分を狙っているのだとしたら、この大規模出現自体も自分のせいで起こった可能性があるためだ。
バスティアンが戦闘に戻った直後、食堂方面の玄兎達に近いところで大きな爆発が起こった。
「こっちを――向けぇ!!」
近くからラッシュの声が聞こえた。どうやら光耀帝が既に近くまで来ているようであった。
「バスティアン! この前の魔物たちを一気に片付けるぞ! 俺達も参加する!」
「おーけー」
「会長! ちょっと待って!」
二人は魔法を放つ準備をしたが特殊作戦隊のオリヴィアの声が光耀帝の方から届いた。
「光耀帝がそっちに向けて構えだした! 備えて!」
その直後、突如として青色の炎の魔法が玄兎達の目の前の魔物を吞み込んでいき、更に玄兎達をも吞み込まんとするほどの勢いと大きさで向かってきた。
「っ!!!」
翔真はすぐに魔法で押し返そうとしたが翔真の赤い炎は青色の炎に呑み込まれてしまった。
他の全員が立ち尽くす中、玄兎は呟いた。
「希望を、つなぐんだ」
玄兎は体が勝手に動くのに身を任せ、同じ規模の青色の炎を撃ち放った。
「うぁっ――」
玄兎の体に疲れと大きな痛みが走った。この痛みは外部からの痛みではなく、筋肉痛のような内からの痛みであった。
玄兎の放った青色の炎は光耀帝の放った炎とぶつかり合いとてつもない爆発が起きた。
ある程度爆発が収まり、周りを見ると様相が大きく変わり果てていた。マジクランタの出入口は原形が分からないほど壊れ、付近の魔物は消え去っていた。付近に残っている魔物は光耀帝ただ一人であった。
「あれが……光耀帝……」
その姿は狼男のようであった。もし、光の魔物に目という概念があったらとてつもない眼光を放っていただろうと想像してしまう程、屈強であった。玄兎が光耀帝に目を奪われていると玄兎の耳にバスティアンと翔真の会話が入ってきた。
「会長、ありがとう。助かったよ」
「皆を守るのが俺の責務だ。……とは言え玄兎の魔法がなかったら危なかったが。玄兎に感謝しないとな」
周りを見ると、その場にいた全員にうっすらと炎の障壁魔法がかかっており、全員無傷であった。玄兎は気付かなかったが、翔真は爆発が起こる前、全員に障壁魔法をかけていたようだった。
「全く……危ないことしてくれるわね」
「くくく……面白い……! こいつをやったら……」
不自然に光耀帝の後ろに立っていた土の壁が崩れ、後ろから特殊作戦隊とラッシュが出てきた。
完全に爆発の砂煙が収まると、マジクランタの屋上に集まっていた学園生が空を飛んでいる魔物と交戦を再開し始めた。そして空からの魔法が再び玄兎たちを襲い始めた。
「はぁぁぁぁぁあああああ!」
光耀帝との戦いもラッシュの攻撃により再開した。ラッシュが光耀帝を殴りにかかるも光耀帝の体に触れることは出来ず、シールドで防がれてしまった。更に翔真やバスティアン、杜若に特殊作戦隊が光耀帝へ飽和攻撃を仕掛けるも光耀帝のシールドを破壊するには至らない。
光耀帝は着実に歩みを進め、徐々に玄兎たちへと近付いてきていた。
「俺様が! やる!」
馬木が突如光耀帝の元へ走り出した。
「おい! 鹿之丞!」
そしてその勢いのまま紫色の雷を拳に纏い、光耀帝に殴り掛かった。しかし、これもシールドを破壊するには至らない。
「貴様、邪魔だ」
ラッシュは鹿之丞の腕を掴み、そのまま玄兎たちの元へと投げ飛ばした。そしてその勢いのまま振り返って光耀帝に攻撃を仕掛けた。その後もラッシュを中心に攻撃をするもシールドを破るに至らない。
光耀帝だけでなく、他の魔物も再び玄兎たちを囲み始めていた。マジクランタの出入口はがれきでふさがれているが、魔物たちが向こうから攻撃をしているのか瓦礫が玄兎たちの方に押し出されてきており、いつ魔物が出てきてもおかしくなかった。
「今だぁぁぁぁあああああ!」
全員が光耀帝から離れた瞬間、上から声と共に白色の炎が降ってきた。空を見上げると顔は見えないものの、金色の翼を生やした私服の魔法使いが飛んでいた。その魔法使いは光耀帝に白い炎を浴びせ続けた。
「皆! 一斉に攻撃をするよ!」
「鹿之丞、皆にシールドを頼む」
翔真は馬木に緑の魔法を渡した。
「……分かった」
馬木は自分が直接力になれないことが悔しかったのか、落ち込んでいた。オリヴィアの指示により、遠距離魔法が出来る者は光耀帝に向けて攻撃を仕掛けた。玄兎は既に体が疲れ切っていたが、光耀帝が放った青い炎を再び放った。
「っあ――」
玄兎の体は限界を迎え、立っているのがやっとの状態となってしまった。
翔真の赤い炎や玄兎の青い炎、バスティアンの毒の矢など様々な魔法が光耀帝の元へと集まり、再び大きな爆発が起きた。
「どうなったんだ? 煙が邪魔で何も見えん」
砂煙が完全に落ち着くとそこには光耀帝の姿は無かった。
「やった……のか?」
「ふん。周りを見てみろ」
ラッシュの言う通り周りを見ると魔物が一匹もいなくなっていた。
「大規模出現が……終わったのか……?」
先程まで明るかった地面は元の色を取り戻し、雲間からは光が漏れ出した。周りからは歓声やすすり泣く声が聞こえたが玄兎の周りは至って静かであった。
「ちっ……こんな呆気なく終わるとは……次こそは……」
ラッシュはぶつぶつ言いながら一足早く去っていった。
玄兎は安心と体の疲れからその場で倒れこんだ。そして戦いの終わりを告げるかのようにお腹の音が鳴り響いた。
「お腹空いたな……あれ?」
空を見上げていると上空を飛んでいた金色の翼を生やした魔法使いの翼が突如として消え、落下し始めた。
「アストル!」
「はい、すぐに」
特殊作戦隊の一人の女性が落下する魔法使いの元へと飛んでいき、タオルのように首の周りに巻くような独特な担ぎ方で担ぎ、降りてきた。
意識を失っていたその魔法使いであったが、玄兎はその顔に見覚えがあった。
「ま、雅人?」
ここで第一章は終わりです。
次回の更新は書き溜めた後に投稿予定のため未定です。
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頭を空っぽにして読むのも大歓迎です。




