【第十一話】 魔物の大規模出現 窮地
光耀帝は食堂に現れたらしく、現在生徒会と特殊作戦隊が対応に当たっているようだった。
「おいそこの女。こっちの魔物たちは貴様の鎖で抑えておけ。後でまとめて片付ける」
「私は小田切美佳です! いい加減覚えて……ってちょっと!」
ラッシュは物凄いスピードで入口側の魔物の波の中に突っ込んでいった。
「それなら俺様も……うぉ!」
馬木が走り出そうとしたのを小田切の鎖が止めた。
「あなたはせめてここにいてください! お願いします!」
「分かった! 分かったからこの鎖を解いちゃくれねーか! いてえ!」
「す、すみません! つい……」
ラッシュが去ったことにより、バスティアンが入口とは反対側の魔物と戦っていた。
「風紀委員長、ラッシュくんの発言は無視してくれていい。こっちは一人で十分だから、そっちは五人に任せたよ」
「わ、分かりました! いのりさんは引き続き杜若さんと連絡を……ちょっと待ってください」
先程までいた二匹の妖精とタコのような生物が丸いオーラのようなものに包まれた後に消えた。それを見た小田切は何か察したようであった。
「小田切さん、みーちゃん……ミアちゃんと連絡を取りましょうか? ミアちゃんなら状況を俯瞰できると思います」
「スターリーさんですか? ではすみませんがよろしくお願いします」
いのりは早速ミアに連絡を取り始めた。向こうにはパピヨンもいるようで馬木の現状を報告していた。
玄兎は早速バスティアンが使っていた魔法をまねクロスボウを取り出した。そして先程見た紫色の矢を放つと魔物はしばし苦しそうな表情をしたのちに溶けていった。それを見た小田切はかなり驚いたようで見て分かるくらい目を丸くしていた。
「えっとそれは副会長の魔法なのでは……」
「え! あの人副会長なんですか!?」
喋りながらも玄兎は次々と矢を発射していく。クロスボウを扱うのは初めてであるが、魔物は鎖によって動きが制限されている上、数多くいたために矢を当てることなど造作もないことだった。苦悩はどちらかといえば前で戦っている馬木とクレールに当てないように注意することであった。
どうやらバスティアンはこちらの動向をちょくちょく見ていたようで、こちらに話しかけてきた。
「そうか、君が松雪玄兎くんか。風紀委員長、後ろの魔物も抑えておいてくれ。俺と玄兎くんで前方に一気に押し込む」
「は、はい。分かりました」
すぐに小田切は後ろの魔物たちも鎖で抑え込んだ。
「そこの二人! ちょっとどいてくれないか!」
クレールと馬木は激しい戦闘音で声が聞こえないらしくひたすら戦っていた。
「しょうがないね。少し危険だけどやってしまおう。玄兎くん、俺の魔法を真似て俺より少し奥の魔物に向けて魔法を放ってくれ」
そういうとバスティアンはクロスボウをしまい手を床につけた。
「マレディクション・デュ・ブリュム」
魔物の足元の広い範囲に紫色の靄が立ち込めた。
「馬木! 下がるぞ!」
「なんだこれ!」
前で戦っていたクレールと馬木は異変に気付き下がってきた。すかさず玄兎も同じ魔法を使用した。バスティアンは床に手をつけたまま下がってきた二人に話しかけた。
「悪いね二人とも。電話しているお嬢さんと風紀委員長にそろそろ前に出ると伝えてくれ。それから風紀委員長には後ろだけに注力するよう伝えてくれ」
「分かりました」
「それから玄兎くん、前の魔物達に鎖の魔法も頼めるかい?」
「やってみます……!」
玄兎は前の魔物達に小田切がかけている鎖の魔法の上から更に鎖の魔法を掛けた。そしてすぐに小田切の鎖は消えた。しばらくすると魔法の範囲内にいる魔物はみるみると溶けていった。玄兎はすぐに前線となった奥の魔物達を鎖で縛った。
「さすがにこの2つの魔法同時使用はきつそうだね。だが少しの辛抱だ。玄兎くんはそのまま魔法を使っていてくれ」
バスティアンは床から手を離し立ち上がった。バスティアンが先程まで魔法を放っていた場所から魔法が消えた。
「玄兎くん、私に手伝えることがあったら言ってね。頑張るから!」
「あなた、本当に何者なんですか? 私の魔法まで……」
「お前そんな能力あったのか! すげーな!」
いのりと小田切、そして馬木は通り際に玄兎に声を掛けた。いのり達が20m程前に進むと再びバスティアンが玄兎が放っている魔法の奥に魔法を使用した。
「玄兎くん、君も移動してくれ! これを繰り返して徐々に前に出る! 風紀委員長、後ろの魔物と俺らの距離が一定になるように頼めるかい?」
「やってみせます!」
「ああ、難しいことを頼んですまないがお願いするよ」
やがて入口から外に出ると、上空を含めて多くの魔物が玄兎達を取り囲んだ。しかし、魔物の数だけでなく魔法使いの数も同様に増えており、玄兎と小田切の魔法もあるため、そこまでの危機感は無かった。
いのりが少し微笑んで電話を切ると上空から声が響いた。
「こ~こ~~よ~~~!」
上空から、ミアが叫んだ。ミアとパピヨンは道中にいる飛んでいる魔物を風の魔法で墜落させ、玄兎達に合流した。
「……なんでこんなに囲まれているわけ? 最初の魔物がマシに思えてくるわね……」
「さあ……? でも風紀委員長さんの魔法のお陰であの時よりは余裕だよ」
「うぇ! 風紀委員長!?」
ミアの視界には小田切が入っていなかったようで、心底驚いていた。一方でパピヨンは馬木が迷惑をかけていなかったか心配なようであった。
「皆、部長が迷惑をかけなかっただろうか」
「俺様を誰と心得ている? 俺様が迷惑を――」
「とても頼もしかったぞ」
共に前線で戦っていたクレールが代表して答えた。パピヨンは安心そうな顔をしていた一方で、その言葉に調子づいたのか馬木が大声で笑った。
「だっはっはっは! そうだろう! そうだろう!」
笑う馬木を横目に未だに傷心気味のいのりをミアは察したのか、ミアはいのりに話しかけた。
「いのり、何があったか知らないけど、こういうときは思いっ切り体を動かすに限るわよ。学園祭に来てた卒業生たちも参加してる。この戦い絶対生き延びるわよ! ……あ、フラグじゃないからね?」
「……うん。そうだね、やんなきゃ」
いのりは自分の頬を両手で2回叩いた。吹っ切れたかのように魔法を発動し、魔物を吹き飛ばした。
「いのりさん、大丈夫なんですか?」
「はい、大丈夫です」
まだ少し心の迷いがありそうだったが、これまでに比べればいのりは溌剌としていた。それを見てクレールは安心したような表情をしていた。
そんな和んだ雰囲気の中、バスティアンが冷静な口調で聞いた。
「二人とも、光耀帝は今どうなっている?」
「あ! 副会長!」
ミアはバスティアンにも気付いていなかったようだ。だがなにやら悪巧みを考え始めたようで悪い顔をしていた。ミアがあれこれ考えている間にパピヨンが答えた。
「まだ食堂の中にいることは確かですが中でどうなっているかは分かりません」
「ふむ、そうか……ん? 二人とも、申し訳ないが上から食堂の様子を見ててくれないか?」
パピヨンは不思議な顔をした一方で、ミアは不敵な笑みを浮かべながら返事をした。
「はい! 任せてください! パピヨンさん、早速行くわよ!」
「あ、あぁ」
二人が上へと上がってすぐに大きな音が鳴った。
「しょ、食堂が……!」
食堂は音を立てながら一面が大きく崩れた。
「二人とも! 降りてきてくれ! 一気に来るぞ!」
その言葉通り、砂煙の中からは空を飛ぶ魔法使いの魔物が次々と出てきた。木々に隠れて分からないが、下からも多くの魔法使いの魔物が出てきていることは明白なほど、魔法が飛び交いさらに多くの砂煙が舞い上がっていた。
そして空を飛ぶ魔法使いの魔物達はこちらを見るや否やすぐに遠距離魔法を大量に放ってきた。ミアとパピヨンは戻れなくなったことを察し、その場を去っていった。
「ブクリエ・ドゥ・グラス!」
「あ、えっと! 鎖鋼壁!」
クレールと若干遅れて小田切が遠距離魔法を防いだ。クレールの魔法は比較的壊されやすいものの、小田切との魔法の組み合わせによりかなり強度が増していた。しかし、それでも耐えきれるかが怪しいほどの飽和攻撃が続いていたため、玄兎も二人の魔法を真似て更に守りを堅固にした。
「おいおい、まずいぞ! 魔物の勢いが増してやがる!」
クレールと玄兎が守りに専念していること、学園生や卒業生が魔法使いの魔物に目を奪われていることも影響してか玄兎達を囲む魔物の勢いも増していた。小田切と玄兎の鎖の魔法も徐々に押され始めていた。
「ど、どうすれば……」
皆必死でほとんど会話もなくなっていた。魔物が玄兎達を囲む円が直径10m程までになったとき、中央に突然人が現れた。
「――炎の円っ!!」
周囲の魔物が炎によって一瞬で倒されていき、辺りの地面が眩しく光った。
「会長……! 随分遅かったね」
「すまない、遅くなったな、バスティアン。……反撃開始と行くぞ!」
次回の更新は5/18(土)の予定です。
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