二十三話 孝介の罪
孝介の弟である洋介の危機をなんとか救えた龍助達は今現在、京の到着を待つために、洋介が隠れていた部屋で待機していた。
京が足止めしていた智洋は秒殺で倒し、もうTPBに連れて行ったらしい。
「先輩達、本当にありがとうございました」
「どういたしましてと言いたいけど、まだ終わってないからね」
「……はい」
怖がって居る洋介を抱きしめながら肩を落としていた。
洋介を危機を救えたのは良いが、だからといって、全てが解決したわけではない。
孝介に指示を出していた人物の捜索はもちろん、彼自身も窃盗をしたという事実が残っている。
誰がどう裁くかは分からないが、それなりの償いをすることになる。
「兄ちゃん……。もう会えなくなるの?」
「まだそう決まった訳では無いですよ」
暗い顔で孝介に聞いた洋介の姿が自分と重なったのだろう。
穂春が励ますようにそう言うが、洋介はあまり元気にはならなかった。
自分のただ一人の家族が捕まってしまうのは、あまりにも辛い現実だと龍助は思う。
「京さんにどうにか出来ないか聞いてみるよ」
「でも先輩……」
「おまたせぇ!」
龍助の言葉に孝介が何かを言いかけたが、それを遮るように京が部屋のドアを開けて入ってきた。
部屋の暗い雰囲気とは真逆のテンションで入ってきた京に半分感謝したが、もう半分はもう少し静かに入ってきてほしいと思う龍助。
「さて、残念なお知らせが一つあるんだよ」
「なんですか?」
「真鳥くんを利用した奴が見つからなかったよ」
京の話では、途中までは追跡は出来ていたが、その先は消息不明になって見つけられなかったとのこと。
「大分厄介でね。まあこの先も追い続けるけどね」
京の言葉は軽く聞こえるようだが、それにはわずかながら殺意を感じた龍助だった。
◇◆◇
「さて、君のことに関してだけど、もう罰は決まっているからね」
「ま、待ってください! 兄を見逃してくれませんか?」
「それは無理だね。罪を償わせないと」
洋介が京にすがりつくようにお願いしてきたが、本人はそんなお願いをあっさりと切り捨てた。
その姿はあまりにも見ていて気の良いものではなかった。
「お願いします……。お願いします!」
だが、洋介は何度も何度も頭を下げた。
まだ中学生くらいの少年がこんなことをしているのはあまりにも悲しい。
龍助が何か言葉をかけようとしたその時だった。
「京さん。イタズラにしては度が過ぎるのでは?」
京の背後から聞き覚えのある優しい声が語りかけて来たが、その声を聞いただけで背筋が凍った。
声のする方へ目を向けると、そこには千聖が立っていた。
「その子たちは保護すると言われてるはずでしょ」
千聖が京を不気味な黒い笑みで見つめている。
その顔に京は背筋を伸ばして怯えていた。
この光景を見て、龍助はなぜだかスッキリしていた。




