二十一話 発動式の発見と破壊
孝介の弟の危機に急いで駆けつけようとしたが、その道中がまるで迷路のように同じところを回っていた。
「どうしよう! このままじゃ洋介が……!」
「落ち着いてください! ここで焦っても……」
「じゃあどうしたら!」
「だから落ち着け! 闇雲に焦っても解決しない!」
慌てふためく孝介を穂春と颯斗の二人で落ち着かせていた。
しかし、慌てていても落ち着いていてもこのループから抜け出す方法が見つけ出せない。
(どうする……。魔眼を使おうにも見極めるのに時間がかかる……)
龍助の鮮血の魔眼で術の弱点をつこうにも、術以外にもある数多くの丸印から一つを見極めるのに相当な神経と時間を有してしまう。
急いでいる今、そんな時間を過ごしている暇はない。
龍助はこの場合どうしたら良いのかの知識がない。
叶夜達もこのようなループは初めてで解決策を見い出せないでいた。
(せめて、この術の発動式の場所が分かれば……!)
龍助がそんなことを考えた矢先に、龍助はある気配を感じ取った。
その気配は今まででも感じたことのあるもの。
(この感じは、力の流れ?)
龍助が感じたのは力者が魔法や術を使用の際によく使う発動式の気配だった。
そして気配がした方へ向くと、まるで道標というように地面に光が連なっている。
「この光を辿れば良いのか?」
「えっ? 龍助、光なんてないわよ」
「えっ、うそ! いやそんなことより行くぞ!」
どうやら連なっている光は龍助にしか見えていないようだ。
龍助は一瞬驚いたが、今は優先すべきことがあるので、一か八かで、その光を辿ることにした。
叶夜達は龍助の言っている意味が分からなかったが、背に腹はかえられないので、彼について行くことにした。
光は右に曲がったり左に曲がったり真っ直ぐだったりとしていたが、先程のように、同じ光景にはなっていなかった。
「待て龍助。その先は行き止まりだぞ!」
颯斗の声に足を止め、前を向いた龍助の前には壁が立ちはだかっていた。
(嘘だろ……。ここで終わりかよ)
龍助が諦めかけたその時に、彼はあることに気がつく。
「いや、まだ続いてる!」
「あ、おい!」
そう言った龍助が壁に向かって突撃すると、壁にぶつかった。のではなく、まるで何も無かったようにその先へと進んでいた。
「嘘だろ……」
「この壁は偽物だったな」
「ど、どうして分かったのですか?」
「弱点がなかった」
龍助が壁を見た時、いつも見えているものがそれにはなかった。
それは弱点となる赤い丸印だ。
以前龍助は京にあることを教えられていた。
それは、彼の鮮血の魔眼は実在するものにしか弱点は見えないというものだ。
幻術で見えている実在しないものの弱点を見ることは出来ないらしい。
つまり先程の壁は実在するものではなかったので、弱点は見えないが、それは逆に偽物だと断定出来たのだ。
「凄いです! 兄さん」
「ありがとう。もうすぐそこに発動式がある」
龍助の言う通り、術の発動式がもう視界に映っていた。
龍助は走った勢いのまま警棒を取り出して、発動式の弱点を思いっきり攻撃した。
弱点を攻撃された発動式はバラバラに砕け散っていく。
「あ、見て! さっきとは違う場所にいるよ!」
「急ごう!」
叶夜の言葉で、龍助達は術から抜け出せたのだと確信する。
そして、すぐにいつも通りの道を辿って行くと、三井本館へと辿り着いた。
ここは先程龍助が読み取った景色と同じだったので、急いでその方向へと向かって行った。




