十九話 ビルに潜む影
孝介の案内で日本橋室町にある一つのビルへとやって来ていた龍助達だが、そこは既にもぬけの殻となっていた。
しかし、その場には異質なほど強い力が漂っていることに全員気づく。
京はその力はTBBのトップに立っている人物のものらしく、今回の事件にも絡んでいると予想している。
「あの男は時々介入してきて厄介な存在だ」
「見たことあるんですか?」
まるで前から顔見知りだったかのように言ってきた京に龍助が聞いてみると彼は何度か頷いた。
TBBのトップというだけあって、かなりの力の使い手だと京は言う。
そんな人物が今回の事件に関わっているとなると解決が困難になる可能性が高い。
「とりあえず、一通り見たら出ようか」
京の指示に龍助達は従い、二階含むビルの全ての階を見て回った。
しかし、手がかりとなりそうなものがなかなか見つからず、全員諦めかけていた。
「ねえ、これなんだろ?」
全員が諦めかけていたその時、叶夜が何かを見つける。
叶夜のところに集まった龍助達が見たものは紙の束だった。
「何が書かれてるんだ?」
「龍助達のことだね」
龍助が聞くと、叶夜が答えてくれる。
書類を見てみると、確かに龍助と穂春の写真が貼られ、その下に詳細などが書かれていた。
「気持ち悪……。こんなのいつ撮ったんだよ」
「本当に気分が悪くなりますね」
龍助の言葉に穂春も同調する。
自分たちの情報をつらつらと書かれた上に、隠し撮りをされているわけだから気持ち悪く感じるのは当然のことだ。
しかもこんなに書かれたものを無造作に置かれていることに対しても気味が悪く感じていた。
「龍助達を狙っているのに、これをここに置いてるのは不自然だな」
書類を一通り見た京が疑問を口にする。
貴重な情報をこんな誰もいない場所に置いてあるのはなかなかないと京が言う。
「とりあえず、これは持っていっとこうか」
京が叶夜から書類を受け取る。
そして、一通り見たので、ビルから出ることになり、出口へと向かっていた。
「さて、そろそろ出ようと思うけど、その前に」
京が出口のドアの前で立ち止まり、急に龍助達の方へ振り返る。
突然なんだと思った龍助達も背後を見てみるが、特に何も無かった。
「いるんだろ? 出てこいよ」
京の声に誰も答えない。
何がいるのか龍助達は分からず、辺りを見回していた。
すると京が突然手を銃の形にして、その指先を一つの柱に向けた。
そして、その指先から青い光が現れ、一定量大きくなると、それを放った。
光の球は柱にぶつかるとドンッと音を鳴らした。
それが魔弾だということに誰もが気づいた。
「えっ!? 京さん何して」
龍助が驚きを隠せないでいたが、その行動の意味を知ることになる。
「結構乱暴だな」
突然柱の後ろから声が聞こえてきた。
それと同時に、柱に隠れていた人物が姿を現した。
全身黒ずくめの服を着て帽子をかぶっている一人の男だった。
「智弘さん……」
「知り合い?」
「俺が所属していた組織の人……」
龍助の問いかけに答える孝介。
その言葉だけで、龍助は今目の前にいる人物は敵だと察した。




