十五話 拘束
孝介に再び襲われた龍助は叶夜達と協力して、見事に撃退することが出来た。
今孝介は気絶して横たわっている。
「少しやりすぎたか?」
「うん。力加減間違えたね」
気絶してからすでに一時間が経とうとしていたが、孝介が目覚める気配がない。
先程の龍助の拳が原因なのは変わりようのない事実。
龍助もまだ完璧に使いこなすことが出来ているわけではないようだ。
「仕方ないわね。とりあえず縛った後に魔法で起こしましょ」
そう言った叶夜が颯斗に孝介の拘束をお願いすると、颯斗は一つため息を吐いた。
彼はため息をしつつも、魔法で出した鎖を孝介にしっかりと縛り付けていく。
「ちなみに颯斗の鎖は魔法か?」
「これは『魔縛』。縛るのに特化したものだ。」
龍助の質問に颯斗は表情一つ変えずに答える。
「魔縛」は、人を縛るのはもちろん、霊体をも捕らえることが出来るという魔法だ。
度々颯斗が使っているのは目撃していたが、説明をされたのはこれが初めてかもしれないと思う龍助。
穂春も颯斗の魔法を見るのは初めてだからか、少し興味深そうに見つめている。
「それじゃ、起こすね」
叶夜が魔法で孝介を起こすので、龍助達は身構えた。
颯斗の拘束があるにしても何をしてくるのか分かったもんじゃない。
叶夜が孝介の額に手を当て、小さな光を出現させる。
光は孝介の額から体全体に広がり、しばらくすると消えた。
「ん……」
光が消えたのと同時に孝介の意識が戻った。
「なんだ? 体が動かない……ってなんだこれ!?」
「あなたにはしばらく大人しくしといてもらうわ」
目覚めて間もなく、縛られている状況を見て驚いた孝介に叶夜がそう告げた。
孝介は憎たらしく龍助達を睨んでいたが、襲って来たのは紛れもない彼からだった。
返り討ちにして捕縛されていても仕方ないと龍助は思う。
「どうするつもりだ?」
「どうもこうも情報を聞かせて欲しいんだよ」
「情報?」
孝介の問に龍助が答える。
情報という言葉で何を聞かれるのか察した孝介は龍助達からそっぽ向いた。
「俺は答える気はない」
「まあ、予想は出来ましたけどね……」
孝介の言葉に穂春が肩を落とした。
そう簡単にはいかないのも予想済みだが、やはりめぼしい情報は欲しい。
「なんで君はそこまでして俺達の力が欲しいの?」
「それは……」
龍助の純粋な質問に孝介は言葉を詰まらせる。
なぜ龍助がこの質問にしたのかという理由はいくつかあるが、まず一番の理由を口にする。
「君、一度俺の力を奪ったけど、その時に力が強すぎたことを実感したはずだよね?」
一番の理由は前回の戦いで龍助の力の一部を奪った時に、恐ろしい表情をしていたことだ。
恐ろしい力を直接目の当たりにしたのなら普通二度も手を出そうとは思えないはずだからだ。
実際、前回あの後、奪うのではなく戦闘を続けていただけだ。
龍助が語る理由に孝介は否定しなかった。
それどころか、何かに怯えるように肩を震わせている。
「聞かせて? 理由を」
龍助が語りかけると、孝介の固かった口が開き始めたのだった。




