八話 学校の異変
学校に登校した龍助達はいつものように自分たちの教室へ向かって行くが、颯斗だけ穂春を送って行ってくれるらしい。
二人が一緒に歩いている後ろ姿を見ていると本当にお似合いなカップルに見えてくる。
龍助は少し複雑な気分だ。
「ま、あの二人が付き合うのはまだだから大丈夫よ」
「な、なんでそんなこと分かるんだよ」
「だって颯斗、多分まだ恋を実感してないのよ」
龍助の考えを読み取った叶夜の言葉に龍助は耳を疑った。
周りが気づいて当の本人が気づいていないことはあるが、颯斗がそんなに鈍感なのかと考えてしまう。
「颯斗って、肝心な時に限って鈍いところあるから」
「そ、そうなんだ」
叶夜によると、普段の颯斗はかなり良い感しているくせに、取り乱したりすると実感するのに大分時間がかかったりするらしい。
つまり、恋をした颯斗はかなりポンコツになってしまうということだ。
(なんとも難儀な……)
心の中で颯斗に同情しつつ、自分の教室へと向かっていく。
廊下を辿って、教室に到着すると、龍助達はある違和感に気がつく。
「やけに静かだな……」
龍助達が一番乗りというわけでもなく、他の生徒達とも何度もすれ違っていたのに、いつもの賑やかさがない。
辺りを見回し、教室を覗いてみると、全員席に座っている。
異常なまでな静けさと無言で座る生徒達を見ていると、とても背筋が凍る感覚に陥る。
「龍助。今すぐ魔法を解かないと!」
「はあ? 何を言って……ッ!!」
龍助が言い終わる前に、一人の男子生徒が龍助達に向かって飛び込んできた。
不意だったが、ギリギリのところでかわせたが、おかげで男子生徒は体全体を床に叩きつけてしまう。
しかし、すぐに立ち上がってまた襲ってくる。
「な、なんだ?!」
「『人形劇』よ! 催眠術!」
龍助の疑問に叶夜が慌てたように答えてくれた。
催眠術と聞いて、龍助はこの間の廃村での一件を思い出す。
TBBの幹部の一人である前川史郎が京に使った「信仰」。
光を使った催眠術とはまた違うものかとハテナマークが浮かんでしまう。
「人形劇は言えば呪術の類よ。つまり呪い!」
「の、呪い!?」
叶夜の説明によると信仰は光を見せないと人を操れないが、人形劇は呪いをかけたら簡単に操れるようになるらしい。
それを聞いた龍助は、そんな恐ろしい魔法があるのかと内心恐怖に染まっていた。
「だけど、力が弱すぎるからすぐに解除するわ」
「じゃあ頼む!」
龍助のお願いを聞き入れた叶夜がすぐ教室全体に発動式を展開し、呪いを取り除いてくれた。
「あ、あれ? 俺、何して……」
龍助達を襲って来ていた男子生徒含め、教室にいる生徒達が全員目を覚ました。
「ついに動き出したわね」
「やっぱりあの子か……」
人形劇をかけた本人は分かっているので、すぐにその子の教室へと向かうことにした。
龍助達の新しい三年の棟から一年の棟までは廊下が繋がっているところがあるので、それを利用した。
すると途中で穂春と颯斗と出会い、二人も異変に気づいたので、孝介の教室へ行こうとしていた。
「ここだな?」
「いくぞ」
合流した四人が孝介のいるクラスへ突撃した。
しかし、なんとそこはもぬけの殻だった。
生徒はおろか、机などの道具もない。
「どうなってるんだ?」
「ようこそ。俺の世界へ」
龍助達の背後から聞き覚えのある声が語りかけてきた。
慌てて振り返ると、そこには愉快そうに笑っている孝介が立っていたのだった。




