七話 予告
休日にTPBで修行をしていた龍助達は帰り道に孝介と対峙していた。
「天地さんに先輩方。奇遇ですね」
「下手な演技はやめなさい」
「別に光金先輩達に用はないんですが……」
孝介が嘘くさい笑顔で話しかけてきたが、叶夜に下手と言われたのが気に入らなかったのか、僅かに頬が動く。
するとその笑顔をやめ、じっと龍助達を睨みつけている。
「まあいいや。今日は天地先輩達に予告しにきただけなので」
「予告?」
「あんたらの能力は俺が貰う。下手に抵抗しないようにしてくださいね」
睨みつけてきたかと思えばまた笑みを浮かべながら予告をしてきた孝介。
彼は堂々と龍助と穂春の能力を奪うと宣言してきたのだ。
もうこの時点で彼が敵だと確信した龍助は思わず構えてしまう。
「おっと、あまり挑発しない方が良いですね」
龍助が構えたのを見た孝介は両手を上げて無害アピールをしてきたが、それにはなんの意味もない。
「それじゃあ天地さん、先輩方。また学校で」
そう行って孝介は一瞬にして姿を消してしまった。
驚いた龍助達の視線の先にあったのは宙を舞う、何枚かのジョーカーカードだった。
(瞬間移動が使えるのかよ……。厄介だな)
京と同じように瞬間移動が使える力者が相手だとかなり対処が難しくなるのではないかと思う龍助だった。
◇◆◇
孝介に予告された翌朝、龍助と穂春は叶夜達と共に学校へ登校していた。
登校している道中はいつ孝介が襲って来るか分からないから、警戒心マックスで進んでいく。
「なんか、かなり面倒なやつに目をつけられたよな……」
「でも、彼はおそらく好戦的ではなさそうね」
龍助の呟きに叶夜が反応する。
叶夜から見たら、孝介自身はあまり積極的に戦おうとは思っていないように見えるらしい。
もし好戦的なら、龍助達と会う前に戦いの準備をして、龍助が構えた時に積極的に戦おうとするはずだと叶夜は言う。
「確かに。もしかして戦闘よりただ盗むのが得意とかですかね?」
「その可能性はあるな」
穂春の予測に颯斗が答える。
関係ないが、颯斗は穂春といる時は結構喋っている。
龍助達と一緒にいる時は全くと言っていいほど口を開かないのにだ。
(惚れた相手には積極的なんだな……)
そんなことを一瞬考えた龍助だが、それよりも孝介がどんな手で襲ってくるかを予測する必要があると切り替えた。
仮に戦闘が苦手だとしても何かしら仕掛けてくるのは間違いない。
「にしても、能力を貰うって、どうやってだ?」
「魔法によるコピーの可能性もあるけど、それは私にも分からないわね」
今のところ、相手の能力などを奪う魔法はないらしいが、独自で開発したものがある可能性も否定出来ないと叶夜は言う。
独自で魔法や術の開発をしているということに龍助は興味を覚えたが、同時に自分には程遠いとも感じていた。
「まあ、とりあえず、このまま警戒を続けましょ」
「そうだな」
叶夜の提案に龍助達は皆頷き、自分たちの学校へと向かっていった。




