六話 不審な影
五月の中旬。龍助達は今現在TPBにやってきていた。
本日は日曜日なので、学校は休みだったので、力を使いこなすための修行をしに来ていた。
「龍助の力、大分安定してきたね」
「本当?」
「ああ、メタモルフォーゼも前より使いこなせてる」
龍助の成長ぶりに驚いていた京に褒められて、少し照れくさくなっていた龍助。
施設でもずっと能力と魔眼、そして魔法の練習をしていたので、かなり使えるくらいには成長していた。
メタモルフォーゼの維持も解除も自由に出来るまでになっていた。
自分の成長を実感しにくい龍助にとって、とても嬉しい言葉だ。
「穂春ちゃんもまた新しい魔法を使えるようになってるみたいだし」
「流石は穂春……」
「龍助も徐々にしていけばいいさ」
龍助だけでなく、妹の穂春も前よりさらに強い魔法が使えるようになっているらしい。
しかも、龍助達に負けまいと叶夜達も頑張った結果、さらに強くなったとのこと。
全員が順調に成長していって、京はとても満足そうにしていた。
「そういえば、最近変な男の子に付きまとわれてるらしいね」
「そうなんだよ。俺たち兄妹を見張ってるみたいで……」
叶夜達からもうすでに孝介のことを聞いていた京は龍助達同様警戒をしているらしく、この間も学校に潜入して見ていたという。
(いつの間に……)
京ほどの力者なら難なく潜入は出来るだろうが、それでよく気づかれなかったなと思う龍助。
潜入して直接孝介を見た京は孝介は少なくとも味方ではないと断言している。
その言葉に自分達を見張っているだけで、何もしてこない孝介に危害はないと考えていたのが甘かったと痛感する龍助。
「俺が見たところ、多分TBBから依頼された組織のメンバーだろう」
「TBB以外にも組織があんの?」
「TBBだけだったら、そんなに苦労はしないさ」
京の言葉に龍助は納得する。
TBB以外にもそういう力を悪用している組織などがたくさんあることは前々から知っていたことだと思い出す。
「俺たちも警戒するけど、龍助達も絶対に気を許しちゃ駄目だぞ」
「うん。分かってる」
京の忠告に素直に従った龍助だった。
◇◆◇
夕方の四時、TPBでの訓練もこなせるようになってきた龍助達はそろそろ帰宅することにした。
明日からも学校なので、支障をきたさないように早めに帰るのだ。
帰り道にはもちろん、叶夜達に送って貰うことになっていた。
「じゃあ京さん、また」
「おう。気をつけてな」
京に見送られて龍助達はバスに乗った。
TPBから施設まではおよそ一時間ほどかかる。
施設の最寄りのバス停に着き、次々と降りていく龍助達。
「かなり疲れたんじゃない?」
「大丈夫。どうせ能力で回復するし」
「無理はし過ぎないでくださいね」
「穂春ちゃんも気をつけるんだよ?」
四人で他愛ない話をして、穏やかな空気が流れていた。
そろそろ施設に到着しようとした時に四人はあることに気がつく。
「近くに力者がいるわね……」
「だが、あまり力は強くないな」
叶夜と颯斗が龍助達兄妹の前後に立ちながら、辺りを見回す。
龍助も警棒を取り出していつでも戦えるようにした。
「来たな。やっぱりあいつか……」
「もう隠す気はないみたいね」
そう言った叶夜達の視線の先にいたのはあの孝介だった。
彼は不気味な笑みを浮かべながら龍助達の前に立ちはだかっていた。




