四話 謎の新入生
穂春の入学式から一週間が経とうとしていた頃、龍助は異常なまでに困り果てていた。
その理由は、
「天地先輩! おはようございます!」
「あ、ああ、おはよう」
ある新入生にずっと付きまとわれているからだ。
事の発端は一週間前。
入学式が終わった翌日の日に龍助はいつも通りに学校生活を送っていた。
そんな中、昼休み時間に教室で昼食を食べていると、教室に新入生が訪れてきたのだ。
それが彼、真鳥孝介。
教室へくるやいなや龍助を呼び出しできた。
もちろん龍助は初対面で、彼のことなど一切知らない。
「天地先輩、今日は早いんですね」
「ま、まあいつもより早く起きちゃって」
「なるほど。早起きはいいですね!」
あれ以来、ずっとこんな感じで時間があれば龍助に付きまとってくるのだ。
理由は全く分からない龍助にとってこの状況は困惑しかない。
出来るだけ、孝介から距離をとるために叶夜達に報告せずに今日は早起きで登校したのに、なぜか会ってしまった。
「あのさ、真鳥くん、俺じゃなくて同級生と話したら?」
「俺は天地先輩の大ファンなんですもの! 話せる時に話したいじゃないですか」
「……」
彼曰く、龍助が中学生の時に入っていた柔道部の大会で優勝したのを見て以来、ずっと彼を強く推しているとの事。
その話を聞いて、正直悪い気もしなかったが、その反面どこの誰かも分からない人物に押されるのは不気味で怖いという気持ちもあった。
会話を適当に返していたらようやく学校に到着し、下駄箱で孝介と別れる。
いつもならすぐに着く学校だったが、今日はいつもより到着するのが果てしない、遅さを感じた。
◇◆◇
昼休憩、空腹に開放されるこの時間だが、龍助は空腹よりも今は叶夜からの圧に耐えていた。
「龍助。なんで勝手に早く行ったの?」
「い、いやあ……。ちょっと訳あって……」
「全く……。早く出るなら連絡くらいしなさい! 心配するでしょ?」
今は叶夜達と登下校しないといけないのに、無断で早く登校したことを怒られていた。
前にも報連相をしっかりしないといけないと言われたばかりなので、余計にだ。
「以後気をつけます……」
「……まあ反省しているなら良いのよ。でもなんで早くに?」
反省の色が確認できたのか、叶夜はそれ以上いうことは無かった。
そして、早くに登校した理由を聞いてきた。
質問に対して龍助が順を追って説明したら、叶夜の表情が険しくなった。
「それ、絶対怪しいよね?」
「うん。俺もそう思うよ」
付きまとうのはもちろん、なぜ伝えてもいない朝早い登校に居合わせたのか。
偶然にしては出来すぎていると叶夜は言う。
「ちょっと警戒した方が良いわね」
「ああ、気をつけるよ」
龍助も叶夜もその新入生に対する警戒レベルを上げることにした。
もしかしたら、またTBBが関係しているかもしれないからだ。
「ま、今はお弁当食べよ」
「そうだな」
今後のことが決まったところで、二人は持ってきたお弁当を食べながら楽しく会話をしていた。
真鳥孝介は一体何者なのかを考えながら。




