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宿命の力者  作者: セイカ
第一部 三章 入学編
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三話 魔法の練習

五月二日の朝、孤児院である四季の家で龍助は一人ベッドの上で考え事をしていた。

昨日翔平と話した内容もそうだったが、何より翔平の表情が気になっていた。

それは龍助が力者になろうと決心した理由を話した時に初めて見せた表情だった。


(なんかまるで、同類を見るかのような目だったな……)


龍助がその表情で感じとったのは蔑みや哀れみなどといったものではなく、共感や感銘とかだった。

しばらく考えていたが、このままだと頭がパンクすると思い、それ以上考えるのを辞めた。


「そろそろ朝飯の時間だな」


そう呟いて龍助はベッドから起き上がり、部屋から食堂へと向かって行く。

彼が到着した頃には他の子供たちや施設の先生たちが朝ごはんの準備をしていた。


「お兄ちゃん、おはよう!」

「おう、おはよ」


子供の一人が龍助に駆け寄って挨拶してきたので、龍助もその子の頭を撫でながら挨拶を返した。

子供に手を引かれ、席に着いた龍助は手伝っている子供たちを見守りながら待っている。


「俺も手伝おうか?」

「兄ちゃんは座って待ってて!」

「はあい」


龍助も手伝おうとしたが、子供たちに止められてしまう。

どうやら大好きなお兄ちゃんにお手伝いを頑張っている所を見ていてほしいようだ。

子供たちが持ってきてくれたのは温かいコーヒーとベーコンエッグを乗せたパンだった。


「お兄ちゃん食べてみて!」

「お、おお。いただきます」


子供たちに押されて一足先に卵ごとパンを頬張る。

ベーコンのパリパリ感と卵の黄身のトロトロ感、そしてパンのサクサク感が絶妙に合わさって絶品に感じる。


「おいしい?」

「ああ、めちゃくちゃ美味い!」

「やったあ!」


龍助が感想を述べると、子供たちが喜びながら拍手したりはねたりしている。

なんでこの子たちが喜んでいるのか分からない龍助。

実は、このベーコンエッグが乗ったパンは子供たちが協力して作ったらしい。

久々に大好きなお兄ちゃんと共に朝を迎えることが出来るので、今朝の朝食は自分たちのお手製を食べて欲しかったとのこと。


「すごいじゃないか! 最高に美味いよ。天才だな」

「ありがと!」

「美味しく出来るようにおまじないしたもんね」


龍助がこれでもかと褒めると、子供たちの内、一人は嬉しそうに笑ったり、一人は照れ隠しをするように視線を逸らしたりとそれぞれ違った反応をしていた。

しばらく食堂ではたくさんの笑顔で溢れ、微笑ましい光景が流れていた。



◇◆◇



朝食も昼食も終えた龍助は今現在、自分の部屋でメタモルフォーゼの練習をしていた。


「やっぱ、なかなか保つのが難しいな……」


いくら練習しても、維持している時間はおよそ五分から十分くらいだ。

これだけでも十分保てていると京からは言われているが、龍助としては自分の意思で解除できるようになりたいと思っている。


「これが使えれば、攻撃だけじゃなく防御にも活かせるはず」


メタモルフォーゼは自身の肉体を好きなように変化させられる魔法。

武器や道具などにも変身できるので、かなり便利なものであると考える龍助。

龍助が変化した腕を見つめていると、部屋の外から聞きなれた声が響いてくる。


「ただいま帰りました」


穂春が入学式を終えて帰ってきたのだ。

龍助も穂春を出迎えに行くと、新しい制服姿の妹がそこにいた。

今日初めて着たとは思えないほど制服に馴染んでいる。


「兄さん、ただいま帰りました」

「ああ、おかえり。どうだった?」


まだ入学式しかしていないが、穂春から見た学校の第一印象が気になったので、聞いてみる龍助。


「綺麗でしたね! それに広いですし」

「それは良かった」


なかなかの好印象のようだったので、龍助はひとまずホッとした。

なぜなら穂春が印象悪い学校に行くのは兄として見過ごせなく感じていたからだ。


「そういえば、今日学校で変な子に話しかけられました」

「変な子?」


ホッとしていたのもつかの間、変な子というワードに過敏に反応してしまう。


「その子は入学式後、私が天地龍助の妹かどうか聞いてきたのです」


明らかに龍助狙いだというのがわかる。

その上、穂春が妹だということも知っているのがなんとも怪しく感じる。


「そいつとは、あまり近づくなよ?」

「はい、もちろんです」


妹の入学式から突然不穏な空気がよどめき始めたことに龍助は心配になっていた。

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