三十話 施設への帰宅
四月の春、徐々に暖かくなってくるこの時期、ある場所で龍助達はあることを伝えられて、驚きのあまり開いた口が塞がらなかった。
病院で少年と最後の挨拶をした龍助はTPBに戻った後に叶夜と交代する形で今度は穂春とある所へ向かう。
それは言うまでもない、二人が育った施設だ。
彼らは千聖の車で送ってもらい、施設の前で降ろしてもらった。
「では、僕はここで待ってますね」
「千聖さん、せっかくですから一緒に来てください」
「え? しかし……」
「いいじゃないですか! 一緒に行きましょ」
龍助達を見送るだけのつもりだった千聖は断りかけたが、穂春の押しもあり、渋々一緒に行くことになった。
門を通り過ぎると、そこにはいつものように沢山の子供たちが遊んでいた。
「あ! お兄ちゃんにお姉ちゃんだ!」
「おかえりなさい!」
子供たちはすぐに龍助達に気づき、笑顔でこちらへ駆け寄って来た。
兄妹共に相変わらずの人気さで、あっという間に周りが子供たちで囲まれた。
「みんな元気そうで良かった」
「お兄ちゃん。後ろの人だあれ?」
子供達は龍助の後ろに隠れるように立っていた千聖を見つけ、彼の周りにも近づく。
「この人は俺たちを助けてくれた人だよ」
「こんにちは。初めまして。僕は式野千聖です。よろしくお願い致します」
目線を合わせるためにしゃがみ込んだ千聖。子供たち相手でも丁寧な口調で挨拶をする。
一瞬話しかけられた子はじっと千聖を見ていたが、やがて笑顔になりながら抱きついた。
「お兄さんは、龍助兄ちゃんと穂春姉ちゃんのヒーローなんだね!」
「そこまで凄くはないですよ」
千聖の謙虚な言葉に子供たちは目を輝かせながら彼を見つめている。
これを見た瞬間に龍助達兄妹はもう彼らが千聖のことを気に入ったのだと確信していた。
「ほら皆、お兄ちゃん達のお客様を引っ張らないの」
千聖に遊んで欲しいと言いながら彼の腕を引っ張る子供たちがいたが、それを注意する声が聞こえてきた。
高原先生が出迎えにやってきてくれたのだ。
「お菓子用意したから手を洗って食べてきて」
「「「はあい!」」」
高原先生がおやつという言葉を使って子供たちの興味を引いて、施設の中へと戻していった。
解放された千聖は少しだけ肩を回していた。
かなりの人数でかなりの力で引っ張られていたので無理もない。
「先生、せっかく来ていただいたのに何ももてなさないで申し訳ございません!」
「とんでもございません! 僕が突然来たのですから」
お互いに挨拶をし、先生が施設の中へと案内してくれた。
中に入った途端、懐かしい香りがしてきて、龍助達はとても心地のいい気分になっていた。
「それにしても、帰ってきてくれて嬉しいわ」
「まだリハビリは続くけどね」
先生が嬉しそうに龍助達にお茶とお菓子を出してくれる。
今日龍助達が施設にやってきたのは先生を気にかけてのことだった。
何故かというと、TBBに襲われた二人がいた施設なので、もしかしたら狙われる可能性もあるからだ。
「先生はどうでした?」
「私? 私はね……」
そこまで言って高原先生は黙り込んだ。
なにか言いにくいことでもあるのかと心配になる龍助だが、どちらかと言うと言いにくいのではなく恥ずかしくて言えない感じだ。
「どうかしたんですか?」
「実は、私、結婚するの!」
「……え?」
一瞬何を言われたのか分からなかった龍助は思わず何も言うことが出来なかった。




