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宿命の力者  作者: セイカ
第一部 二章 七不思議編
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二十一話 解決後の片付け

龍助の妹である穂春が入院している福島病院で起こっていた七不思議も最後の一つになり、それも解決までに至ろうとしていた。

現象を引き起こしていた幼い少年の霊は自分の両親と再会し、思いを伝えることができた。

両親二人も我が子と最後のお別れが出来たようだった。


「僕も、行かないと……」

「そうだね。ここまでよく頑張ったね」


少年はそう呟くと、体を光らせて端から少しずつ消えていく。

少年の目の前にいた穂春を始め、龍助達もそれを見守っていく。


「お姉ちゃん、ありがとう!」

「いいのよ。気をつけてね」


穂春の言葉に少年は笑顔で頷く。もうその頃には恨みで作られていたおぞましい力は綺麗さっぱり少年から消えていた。

そろそろ体が全て消えそうになった時、最後に少年が思い出したかのように龍助の方へと顔を向ける。


「お兄ちゃん達もありがとう! 痛いの撮ってくれて」

「……どういたしまして」


お礼を言われたことには素直に喜べた龍助だが、なぜか彼の心は悲しい気持ちでいっぱいになっていた。

だが、そうは言っていては少年に申し訳がないので、精一杯の笑顔で見送る。


「どうか。安らかに眠ってくれ」


龍助が心から思っていることを伝えると、少年は嬉しそうに笑って頷く。

そしてその笑顔を最後に少年の姿は隠され、その場には一輪の彼岸花だけが残っていた。


「さようなら。次は、幸せな人生を歩めますように……」


消えた少年が立っていたところに咲いている彼岸花に近づき、そっと触れながら龍助はそう呟き、それに呼応するように彼岸花が僅かに光ったのだった。





◇◆◇




長い夜を過ごした龍助達は今現在、病院内や中庭などの修復をしていた。と言っても、京の無名の魔眼で壊れた事実を無しにしてもらっている。

しかし、龍助達でも直せるところは京に頼らずに片付けていく。そうでもしないと京の目にとんでもない負荷がかかってしまうからだ。


「そういえば穂春ちゃんは、大丈夫なの?」

「今は千聖さんに診てもらってるから大丈夫だよ」


叶夜が本や散らばっている資料などを片付けながら聞いてきた。

今龍助達は赤く光る部屋だった資料室の片付けをしている。

ほとんど叶夜がやってしまったことだが、龍助もその場で戦っていた事に変わりはないので、一緒に片付けをしていた。


「にしても、穂春ちゃんの魔法はすごかったね」

「……そうだな」


穂春はあの後、目覚めたばかりで力を使ったせいで倒れてしまったのだ。

龍助は最初、それはもう慌てたが、駆けつけてくれた千聖がきちんと診てくれたお陰で取り乱さずに済んだが、龍助には気がかりなことがあった。


(穂春と俺の力ってそんなに強いのか?)


それは穂春が倒れた後に言った京のセリフだった。


あの時、力を使って倒れた穂春を京は今までにないくらい真剣な表情で彼女を見つめていた。

そして言った言葉が、


「兄妹揃ってとんでもない力を持ってるね」


だった。

この言葉を聞いてから、龍助はこの間の廃村での出来事を何度も思い出していた。

その時にも京はなんの力なのか分かっている様子だったので、後から聞こうとしていたが、訓練などで忙しく聞くことが出来なかった。


(また後で聞いてみるか…….)


今京は別の所で片付けをしているので、後で聞くことにした。




◇◆◇





病院の片付けが全て完了するのに二時間ほどかかったが、京の魔眼を使わなければもっとかかっていたらしい。


「目がチカチカする……」

「お疲れ様。助かったよ」


魔眼を使いすぎたからか京が鼻根を揉んでいた。

そんな京に龍助は例の質問をしてみることにした。


「京さん。俺と穂春の力のことだけと……」

「ああ、その前にまずは穂春ちゃんに力者のことを話さないと」

「それは、そうか」


京にはぐらかされたが、彼の言葉も一理あると考え、穂春の病室へと向かった。


病室に到着した龍助達がドアを開けると、そこには診察を終えた穂春が千聖と話しているところだった。


「兄さん!」

「穂春、具合はどうだ?」

「ええ、大分良くなりました」


千聖に診てもらっていたので、特に心配は無用だったろうが、念の為に聞くと元気よく答えてくれた。


「それで穂春。話があるんだ」

「はい、なんでしょう?」


龍助が真剣な表情で聞いてきたので、つられて穂春も真剣な表情になる。


「その……実は……」

「力者のことですよね?」

「え? なんで知って……」

「実は、夢を見ていたんです」


龍助が言う前に穂春が話してくれる。

実は彼女が眠っている時、ある場所で一人の少年が現れたそうで、その子から力者のことを聞いたそうだ。


「その少年って……」

「はい、あの方でした」


その言葉だけで龍助は誰だか分かった。

それは龍助も夢で見た、昔良くしてくれたお兄ちゃんのことだった。

そのお兄ちゃんから、力のことを教えてもらった後、今龍助が大変なことになっていると伝えれ、穂春に早く目を覚ましてほしいと言われたらしい。

そして突然目の前が暗くなったのを最後に目が覚めたらしい。


(ずっと俺たちを守ってくれてるんだな……)

「あのーー。感動しているところ申し訳ないんだけど……」


自分の時や妹の時にも夢に現れて助けてくれたことにありがたみを感じていた龍助だが、それを遮るように京が話しかけてきた。


「力者のことが分かっているなら話が早いから、そろそろ君たちの力のことを話すよ?」


ずっと聞きたかったことを聞けるが、兄妹二人とも、一体どんな内容なのか分からないので、身構えていた。

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