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宿命の力者  作者: セイカ
第一部 二章 七不思議編
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十九話 少年の霊

最後の七不思議「屋上の幼い霊」を解決しようとしている龍助達だが、少年の霊の正体は人工的に生み出された化身だったのだ。

この事実だけでも龍助に絶大なダメージを与えていた。


「で、でも、幽霊だよね?」

「幽霊も化身の一つだ。化身は、万物の感情の塊。人が恐れる気持ちや信仰から生まれるものもある」


京によると、化身は万物の怒り、悲しみ、喜びなどの感情が具現化した存在で、それには信仰から生まれる神、恐怖から生まれる妖怪や幽霊も含まれるらしい。


「どうやって化身にしたかは知らないが、ほったらかすと大変だ」


京の言葉に龍助も賛同した。

このままでは病院だけでなく、世間に悪影響を及ぼし、死んだ少年の霊も苦しみ続けることになる。

どちらの意味でも放っておくのは大変危険だ。


「しかし、彼を倒すには少し観察しないと分からんな」

「私達でなんとかなる?」

「やるしかないね」


龍助はもちろん叶夜も颯斗も、更には京ですらどうすればいいのか分からない状況だ。

つまり、ある意味最初から詰み状態というわけだ。

そんな中、能力で肉体を強化された龍助の耳に僅かな声が止まる。


「憎い……憎い……」

(……やっぱりそうだよな)


言葉の内容を聞いて、龍助は納得し、同時にとても胸が詰まる思いをした。

病気で苦しんでいたのに、悪い人間達に実験台にされて、挙句の果てに殺されてしまったわけだから当たり前の感情だ。


(でも、それじゃあ君が辛いだけだよ……)


龍助の心は悲しみで一杯だった。

酷い仕打ちをされたのだから恨むのは当たり前だが、それをすることによって少年は苦しみ続けることになる。

現に今憎しみのあまり成仏出来ず、こんな呪いの力を生み出し続けて苦しんでいる。


「そうだ……。俺の魔眼で憎しみを消すことが出来るかも!」

「確かに名案だが、それだと君が苦しくなるよ?」


龍助はある提案をした。それは、自分の魔眼で憎しみの弱点を見抜き、そこをついて晴らそうというものだ。

京は一瞬手を打ったが、すぐに深刻そうな顔をする。

確かに龍助の案は名案だが、その分苦労するのは龍助だ。

魔眼で憎しみの弱点を見抜くとなるとかなりの神経を使うことになる。

それに誤って化身の弱点をついてしまって余計に苦しめて恨みを膨らませることになってしまう可能性も無きにしも非ずだ。


「大丈夫です。絶対に見抜きます!」

「なら、俺たちは龍助の援護だな」

「分かった! 精一杯やるわ!」

「了解」


龍助は覚悟を決め、全員の意見が一致したところで、すぐに行動へと移す。


「いくぞ!」


龍助はまず魔眼で憎しみの弱点を探って行く。

予想はしていたが、弱点である赤い丸印はいくつかあり、どれが狙いの弱点なのか分からない。


(もっと、力を注げば!)


もっと細かい所を見るために龍助は自分の中にある力を魔眼に注いでいく。

その影響で目に痛みが走り、血が流れてくる。

そんな時に、丸印の一つである胸のあたりから力を感じ取ることに成功する。

感じからして、存在の弱点ではなく、感情の弱点だと分かった。


「見つけた!」

「よし! 行け!」


龍助は一気に目に注いでいた力を体全体に巡らせ、能力を発動させる。

身体を強化し、素早く化身に近づいていく。

少年は周りに漂っている霧を集め、一つの塊にして龍助に飛ばしてきた。

しかし、どこからともなく魔弾が飛んできてそれを防いだ。おそらく颯斗が撃ったものだろう。

内心颯斗に感謝しつつ再び動き出そうとしたが、突然体が動かなくなってしまう。


(な、また俺に対処しづらいものを……)


感覚からして、死体の時に戦った達也の術と似たようなものだと考えられた。


「任せて!」


しかし、少年より、叶夜の力の方が上だったようで、彼女の魔法であっさりと解放してもらえた。

そして、動き出した龍助のところに今度はどこかの瓦礫が多数飛んできたが、これに関しては京が標的を変えて回避してくれた。


「今解放してやる!」


少年の目前にまで来た龍助は、見抜いた憎しみの弱点に警棒を突き刺そうとした。


「龍助! 離れろ!」

「え?」


京の大きな声が龍助の耳に届いたが、その瞬間、いつの間にか龍助の体に霧がまとわりついてくる。


(しまった! 霧の動きを見てなかった!)


龍助は少年を解放することに夢中で霧の動きを認知していなかった。結果、知らず知らずのうちに龍助の体を包み込むほどにまでまとわりついてきた。

霧は龍助という獲物を飲み込んだ。

龍助の精神が汚染されていくのがわかるくらい霧が体の中に侵食していく。


(ま、まずい……。このままじゃ……)


龍助の精神までもが飲み込まれそうになるその時だった。


「兄さん!」


聞き覚えのある懐かしい声が龍助の耳に止まった。

声のする方へ向くと、そこにはなんと、眠っているはずの穂春が立っていた。

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