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宿命の力者  作者: セイカ
第一部 二章 七不思議編
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十八話 最後の現象

片目女の肉体がまだ生きていることが判明し、彼女と肉体を繋ぐチャンスを龍助は見極めていた。


「あと少しだ!」


チャンスを作り出そうとしている京と直春はなんとか片目女を何重もの結界の中に閉じ込めた。

しかし、片目女の魔眼の力は強力で、すぐに結界を破壊しそうだ。

龍助は徐々に近づき、破壊された所を狙うことにし、時が来るのを待つ。

そして、


「今だ!」


片目女が魔眼で最後の結界を破ったのと同時に龍助が京達の前へと出てくる。

片目女が龍助を視界に捉えて攻撃してこようとした。


「これを見て! 君の体だ!」

「……え?」


自分の肉体という言葉に反応した片目女の動きが止まる。

龍助は彼女の体を見えやすいように持ち上げ、より一層確認出来るようにした。


「私の……体……」

「遅くなってごめん!」


龍助が悪いわけでもないのについ謝ってしまう。

片目女は自分の肉体に近づき、霊体の手で撫でると目から血とは違った、本当の涙を流した。

どれくらいの時が経ったのかは分からないが、その涙だけで、随分長い期間があったことがうかがえる。


「あ……りがとう」


片目女が一言お礼を言った後に、霊体を光らせて一つの人魂へと姿を変え、そのまま肉体の中へと戻っていった。


「あ……。私、は」

「大丈夫?」

「あ……あ……」


龍助の問いかけに片目女だった女性は口が動かしにくいのか、まだ言葉がぎこちない。


「龍助くん。大丈夫?」

「俺は大丈夫です」


直春が龍助に駆け寄り、女性の様子を見ていく。

彼女は意識が朦朧としているようで、目を何度もパチパチと開けたり閉じたりを繰り返している。


「急いで千聖くんに見てもらった方が良いね」

「じゃあ、俺が……」

「いや、直春さんに任せよう」


龍助が千聖の元へ行こうとしたが京に止められる。

彼曰く、龍助だと焦って能力で肉体を強化して早く着こうとするが、それだと女性に悪影響なので、直春が適任だろうと考えたのだ。

京の指摘は図星だったので、龍助は目を泳がせた。

龍助はどうしても早く千聖に助けてほしいと焦って能力を使おうとしていたが、それが逆に悪影響ならば京の言う通りにするのが一番だと考えた。


「じゃあ直春さん。よろしくお願いします」

「分かった。責任持って彼女を預かるよ」


龍助から直春へと女性を移した。

この後は龍助と叶夜、颯斗と京の四人で最後の現象である「屋上の幼い霊」が出るであろう、屋上へと移動しようとした。

しかし、彼らは手術室を出て、初めて気がつく。

病院の外も中も、とんでもなく恐ろしい呪いの力で満ち溢れていることに。





◇◆◇





龍助達は異常なまでの呪いの力に吐き気がした。

気を抜くと、その力が体内や精神にふれて取りみ出そうとしてくる。


「な、なんだよ、この恐ろしいくらい力は……」

「最後の幼い霊の呪いがこの病院全体を覆っているんだろう」


身震いしている龍助の疑問に答えた京。

病院全体とは言うが、京によるとおそらく入院棟のところまでは広がっておらず、今からでも対処出来るとのこと。


「そうだね。それじゃ僕が入院棟の周りくらいまで結界を張っておこう」


直春が入院棟にいる千聖のところまで行くので、対呪い専用の防御結界をを張っておいてくれるらしい。

彼の実力はまだそこまで認識できていないが、不思議と安心感はあった。

直春が女性を抱え、入院棟へと向かい、龍助達と別れた。


「それじゃ、屋上に行こうか」


京に言われ、屋上へ向かうことになったが、これだけの力を持った存在と対峙しないといけないとなると、かなり苦労するだろうと龍助は思う。






◇◆◇







「ここだね。開けるよ?」


力を辿って、出処である屋上に到着した龍助達は警戒をしながらドアを開けた。

開けてみたところ、特に何の変哲もない屋上だが、明らかに強い力が集中している。


「出ておいで。いるのはわかってるんだよ」


優しいようで冷たい言い方をした京の言葉に反応するかのように紫色の霧が姿を現す。

霧は屋上全体を飲み込み、ずっと漂っている。

霧のせいで視界が見えにくくなっている中、子供の鳴き声が聞こえ、気がつくと龍助達の視線の先に幼い男の子が半透明の姿で現れた。


「あれが、最後の七不思議……」

「そうだね。最後の最後で化身のご登場とは。しかも人工の化身だ」


聞き間違いであって欲しかったが、その願いも届かず、京の言っていることが頭の中で理解してしまう。

人魂の一件の前に中庭で、颯斗から聞かされたことを思い出してしまう。


『男の子の実験が、死後に化身へと変えるものです』


つまり、今目の前にいる霊の化身は人工的に生み出された存在だったのだ。

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