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宿命の力者  作者: セイカ
第一部 二章 七不思議編
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十六話 片目女

七不思議の内五つを解決し、残り二つとなっていたが、龍助は浮かない顔をしていた。

理由としては、先程解決した彷徨う人魂の正体であり、福島病院の前院長でもあった服部修造からの情報があまりにも悲惨だったからだ。


「多分次は片目女のところかな?」

「彼女も実験台になった犠牲者の一人でしたね」


六つ目の解決を目指して向かっていたのは片目女がいる五階の手術室だった。

噂では、片方の目から血を流しながら光を発しているといい、ずっと自分の片目と体を探しているらしい。

実は片目女の正体は修造によって実験台にされた女性らしく、片目に人工的に作られた魔眼を埋め込まれてしまった被害者なのだ。


「あの前院長から聞けたのは、片目女の正体と魔眼の力だけだったな。実験してた割にはあまり情報が多くない」

「多分、実験に失敗したからあまり興味が無かったんだろうね」


京と直春の会話に龍助の心はますます暗くなってしまう。

分かっていたことだが、あまりにも酷い仕打ちで片目女の女性に同情、あるいは感情移入をしてしまっているのだ。


「龍助。しんどいのはわかるが、気にしてばかりだと、調子が狂うよ」

「分かってる、けど」

「なら、ただ倒すだけではなく、助けると考えたら良いよ」


直春のアドバイスを素直に受け入れる龍助。

確かに助けるというふうに考えれば少しは辛い思いを誤魔化すことは出来た。


「もうすぐで手術室だよ」

「残りの二つはかなり大変かもしれないから覚悟しときなよ」


京の言っていることはおどかしではなく本当のことを言っているのだろう。

龍助達に緊張感が走る。

いよいよ手術室に到着すると、昼間は感じなかった強い力がそこから溢れ出ている。


(すごく強いけど……。それ以上になんか、悲しい力だな)


ここに来る前の話のせいか、手術室から溢れている力にそんな印象を持つ龍助は、苦しい思いをしつつ、警棒を手に取った。


「じゃあ、開けるよ?」


ドアの取手に手をかけた京の問いかけに全員頷くと、勢いよく開けた。

中に入るが、やはり真っ暗闇だったので、即座に叶夜が一つの光を天井に出現させる。

辺りを見回すが、あるのは手術台に無影灯、モニターアームなど、あとはメスなどの道具が置かれている台しかなかった。

力は感じるが、その姿を捉えることが出来ないでいる。


「いるんだろ? 出ておいでよ」


直春の声に応えるかのように手術室内の室温が低くなっていき、力の濃度も増していた。

手術室内がすっかり冷気に飲まれたのを合図に、白い煙が現れ、一箇所に集まっていく。

一定量煙が集まったかと思えば、徐々に薄くなって消えていき、次に現れたのは全身白い服で身を包んだ長髪の女性だった。

彼女の片目から血が流れて頬を伝っている。

足下は浮いており、体全体が透けているように見えてしまう。否、実際に透けているのだ。


「君が片目女だね?」

「……」


京の問いかけに答える気配が全くないと思われた瞬間、片目女の口が動いたのが僅かな光だけでも確認することが出来た。


「ゎ……た……しの、目は、体は、どこなの……」

「……」


片目女の悲痛な声に龍助は胸が張り裂けそうになった。


「残念だけど、君の目はそれしかないんだよ……」

「いや……いやあああ!」


京の言葉を聞き入れたくない片目女は周りにある手術用具を龍助達へと飛ばしてきた。

しかし、飛んできた道具は全部龍助達から逸れて、床や壁に当たる。

京が能力で助けてくれたのだろう。


「ポルターガイストが使えるのか」

「ポルターガイストってあの心霊現象の?」

「そうだよ。霊術っていう術の一つでもあるんだよ」


霊術とは霊媒師などが使うもので、主に霊にまつわる技能を扱うらしい。

片目女は血涙を流しながら発狂してしまっており、とても話が通じる気配がない。


「仕方ない。少し力ずくで押さえるよ」


京があっさりと決めてしまい、龍助は乗り気では無いが、これも彼女を救うためだと自分に言い聞かせた。

動きを封じるために、京と直春が動き出そうとしたが、片目女の様子がおかしい。

先程のポルターガイストを使ってこないまま、ただその場に浮遊しているだけだ。


「今だ!」


京が以前龍助達の前で披露したあの真っ黒い球を繰り出そうとした。しかし、


ガシャンッ。


一つ大きな音が室内中に鳴り響くのと同時に、壁や床の至る所が抉れていく。

しかも、片目女の近くにあった手術台が突然ねじ曲がった。


「な、何これ!?」

「まずいな……。魔眼まで使えるとは」


どうやらこれも片目女の力らしく、埋め込まれた魔眼を使いこなせるようになったのではと京が予測したのだった。

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