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宿命の力者  作者: セイカ
第一部 二章 七不思議編
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十五話 非道な院長

福島病院の七不思議の一つである彷徨う人魂を追った先にいた前院長と対峙していた龍助達。


「お前が、前院長……」

「それが年上への態度かね? 全く最近の若造は」

「お前のような外道に払う敬意はないよ。服部(はっとり)修造前院長」


京の発した言葉が気に食わなかったのか、修造と呼ばれた前院長がイラついたように鼻であしらった。

どうやら外道ということについて否定はしないようだ。


「ここで何をしている?」

「自分の病院にいて何が悪い」

「もうお前の病院じゃねえだろ」

「わしがいる限りこの病院はわしのものだ」


とんでもない暴論を言ってきた修造に呆れ果ててしまう一同。

早く駆除したいという思いからか、龍助から力が溢れ出ていた。


「おや、君の力興味深いね。ぜひワシのために使ってくれ」

「ふざけるな。使うとしてもお前を倒すために使う」

「残念だね。じゃあ消えてくれ」


そう言い放った修造が指を鳴らすと、それを合図に彼の背後から人魂が勢いよく飛んで来る。

かなり早かったが、あっさり直春が張った防御用結界に阻まれてしまった。

ぶつかった際の衝撃もそこそこあったが、そこまで強い力と言うほどのものではなかった。


(これくらいなら、すぐに終わるか?)

「油断してはいけない。相手は何人も葬ってきた力者だ」


龍助の考えを読み取ったかのように注意してきた直春。

いつもの彼とは違う、軍人の力者としての側面が垣間見えたようだった。

直春の言う通り、大した攻撃でないだけで相手のことを判断するのは危険だ。それはそうだと龍助も思った。


「ほう。そこの爽やかな坊はかなり戦闘に慣れているようだね」


修造は直春を褒めつつも何度も人魂の攻撃を繰り出していた。

ただ打っているように見えるが、狭い診察室の中で自由に動けず、守りに徹させているあたり、ある意味龍助達の動きを封じているとも言える。


「よし、防御しつつ外へ出てみようか」

「そうしよう。こいつを引きずり出すよ」


京と直春の二人であっさりと決めてしまい、龍助達は当たり前のようにそれに従った。

龍助達が徐々に後退していくのに連れて直春も後ろへと下がっていく。


「逃げるのかい? そう簡単に逃がさないよ」


修造は攻撃を止めることはせず、龍助達を押していく形で追いかけていく。

診察室から修造が出てきたのと同時に直春が結界を解除して影の中へと消えていったが、代わりに今度は京が防御用の結界を張ってくれた。


「おやおや、軍人にしては臆病者だね」

「そういうあなたは力者の割に詰めが甘いな」


そう呟いた後に直春があっさりと修造の背後を取り、持っていたナイフを首元につきつける。


「……いつの間に」

「結構あっさりと捕まえられるものだね」


呆気なく捕まった修造に直春が嫌味っぽく言った。


「さあ、勝負はついた。色々吐いてもらうよ」

「これで勝ったつもりか?」


京の言葉に鼻で笑いながら言い返してきた修造。

今直春に捕まっている時点で負け確定だと誰もが思っていた。


「捕まって実験が出来なくなるくらいなら!」


そう叫んだ修造は足下に一つの紫色に光る発動式を出現させると、どこに隠れていたのか、大量の人魂が至る所から現れ、床や壁に付着すると燃えだした。


「人魂に触るな! 燃え移るぞ!」


京の指示に従おうにも、大量の人魂のせいで、龍助達はほとんど動けないでいる。

少しでも動こうものなら人魂に触れてしまう。

どうやら修造は病院を巻き込んで火事を起こし、全てを消そうと考えているようだ。


「もう! なんて面倒なことを!」

「叶夜! 頼んだ」

「分かった!」


京のお願いを受諾した叶夜は人魂が集まっているところに手をかざしながら青白い光を出すと、それをそのまま放った。

光は手のひらサイズから一気に部屋全体へと広がっていき、まるで吹き飛ばすように火と人魂を消していく。

僅か数秒しか経っていないのに、何事も無かったように綺麗さっぱり消えてしまった。


「な、馬鹿な! あれだけの火をどうやって……」


絶望したかのような声を上げて修造が落胆してしまう。

人魂の被害は全くないと言っていいほど少なかった。

あったのは燃えたところが少し焦げたというレベルだったので、修造の絶望は余程のものだろう。


「あなた、力者になってまだ間もないわね?」

「……」

「やっぱりね。通りで使い方が雑なわけだ」


叶夜に聞かれた修造は沈黙という答えを出し、それを見た京が確信を得たようだった。

おそらく修造は実験をしていく中で力を会得したが、それに慣れてはいなかったようだ。


「さて、お前はなんの実験をしていた?」

「魔眼の実験だ」

「どんな実験だ?」


次々と質問していく京の言葉は冷たく感じた。

京も修造に対して強い嫌悪感を抱いているようだ。


「魔眼を埋め込んで使えるようになるかの実験だ」


その回答に、龍助は反吐が出そうなくらい気持ち悪くなり、残る二つの現象はかなり大変なことになりそうだと感じたのだった。

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