十四話 病院の真実
人為的に起こされた七不思議のうち四つを解決した龍助達は京の元へと向かっていた。
「そういえば、五階は何も無かったんですか?」
「そうだね。五階はなんの力も感じなかったよ」
龍助が気になっていたことを質問すると、直春は特に迷いなく答えた。
根拠としてはあまり頼りない感じだが、この人の言っていることから嘘は感じ取れないと龍助は思う。
四階へ着いた龍助達は目当ての人物を探してみるが、なかなか見つけることが出来ない。もちろん電話をしてみるが、やはり繋がらなかった。
「京さんに何かあったのか?」
「でも、あの人がそう簡単にやられるとは思わない」
龍助と叶夜と颯斗の三人は京の安否が分からないので、不安が募っていくが、直春はそれを微笑ましそうに見ていた。
「心配しなくても、すぐに来るよ」
「どうして分かるんですか?」
「だって、彼の力が徐々に近づいてきてるから」
力だけで誰のかとかが分かるものなのかと疑いたくなるが、龍助はもちろん叶夜達にも分からないことがあるのは間違いはないので、直春の言葉を信じることにした。
「いやはや、俺より直春さんの方に信頼いってない?」
直春を信頼したのと同時に悲しそうな声が語りかけてきた。その声は紛うことなき京の声だ。
「ど、どこにいるの?!」
「ここだよ」
キョロキョロと姿を探していた龍助の背後からその人物の声が聞こえてた。
驚いた龍助が慌てて背後に振り向くと彼の背中に張り付くように京が立っていた。
「驚かさないでよ」
「ごめんごめん!」
龍助に睨まれた京が即座に謝罪した。
「ところで、何か現象は起こった?」
「はい、人魂があちらこちらに飛んでいましたよ」
「え、マジ?」
「マジだけど、そんな怖がる必要は無いよ」
直春に聞かれた京が現状を伝えると、龍助は少し怖くなってしまうが、その恐怖は意味が無いことを教えられる。
聞けば、この四階を飛び回っている人魂の正体が、これまた人為的に作り出されたものだと言う。
「その人魂はなんの役割を?」
「おそらく監視だね」
「誰かに見張られてるってこと?」
「そうだよ」
どうやら人魂の役割は監視カメラのように敵がいないかを見張っているようだ。
「それはそうと、龍助達の方はどうだった?」
説明する時間はあるからと現状の報告を要求されたので、龍助達から順番に話していく。
そして、直春まで終わると一番気になっていた颯斗の番になった。
彼の口から語られるのは予想を上回ることだった。
「この病院、昔は力者の実験ばかりで、本当の患者をそっちのけで、死者ばかり出していたみたいです」
情報は先程戦っていた敵の男からだった。
男の役割はこの病院に眠っている強力な呪いの力を集めるというものだったらしい。
なぜこの病院に強い呪いの力があるかというと、この病院は先程颯斗が言っていたように、力者の実験を長年繰り返しており、その犠牲者だけではなく、入院している患者たちを放ったらかしにして次々と死者を出したらしい。
「なんで、問題にならなかったんだ?」
「おそらくだけど、前の院長とTBBが事実を揉み消していたんだろうね」
龍助の疑問に対して、京がそんな予測を立てる。
そして、病死した中でも一際酷かったのが、一人の男の子の患者を病態にも関わらず、実験台に使ったというものだった。
これだけでも頭が痛くなるが、まだ終わりでは無かった。
「その男の子の実験が、死後に化身へと変えるものです」
「……酷い」
さすがに叶夜も気分が悪くなっていたようで、目に涙を浮かべていた。
結局男の子は殺されてしまったが、その後、病院では不可解な現象が頻繁に起こっていったらしい。
それは時が流れるのと共に増加していき、TBBはその力を利用しようとしていたのだ。
「なんて自分勝手な奴ら……」
「ホントに許せない」
「それが奴らだ。残念だが、過ぎたことは戻せない」
龍助と叶夜が怒りでどうにかなりそうになっていたが、京になだめられる。
今の院長がきちんとした人だということが唯一の救いだった。
「ま、情報は整理出来たね。人魂の術者を見つけ出そうか」
「そうですね」
人魂の正体も出どころも既に判明済みだったので、すぐに向かった。
到着したフロアは整形外科の待合室で、すぐ近くにあった診察室から出てきているらしい。
「それじゃ、開けるよ?」
診察室のドアの取手に手をかけた直春に問われた龍助達は一度頷くとそれぞれ戦闘態勢に入った。
直春が勢いよく開け、突撃するとそこにいたのは一人の老人の男だった。
「誰だ?」
「お前こそ、この病院で何をしている?」
「私はこの病院の院長だよ。元だけど」
京に質問返しされた老人はこの福島病院の前院長だと答えた。それによって、今目の前にいる院長はTBBに協力していた人物なのではないかと予想する龍助だった。




