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宿命の力者  作者: セイカ
第一部 二章 七不思議編
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九話 謎の死体

七不思議の一つである真っ赤な部屋の正体が穂春の力を吸い取るための魔法だと判明し、阻止しようとしたが、敵である女二人に邪魔されていた。

しかし、叶夜の魔法の強さに女達は恐れていた。


「あ、あんた何者なの!?」

「ただの力者だし、仮に何者でもあなた達に答える気はないわ」


そう言いながら叶夜は手を振ると、大きな風が舞い上がり、女達を巻き込んでしまう

かなりの風圧で吹き荒れていたが、一定時間すると風は消え、巻き込んだ者をを放り出した。


「うわっ!」

「きゃあ!」


女達はお手本になるような叫び声を出して気絶してしまった。

あっさりと敵を倒してしまった光景に龍助は呆気に取られていたが、すぐ我に返り、叶夜に語りかける。


「叶夜! 大丈夫か?!」

「大丈夫よ。今魔法を解くから」


そう言いながら叶夜は龍助の足下に出現している発動式に触れながら目を瞑ると、手が発光して龍助ごと包んでいく。

光が消えると、龍助の体は自由に動かせるようになっていた。


「ありがとう。これで動けるよ」

「そうね。でもこの発動式も私が解除するわ」

「え、あ、おう」


龍助は自分が吸血鬼(ヴァンパイア)を解除するしかないと思っていたので、少し驚いていた。

叶夜は龍助の前に立つと、突然両腕を上に上げ、祈りを捧げるような格好をした。

すると、叶夜の頭上が大きな光が出現する。その光はまるで日の光のように眩しく、目を潰されそうになった。

目を覆い隠していた腕をどけると、発動式によってあたり一面真っ赤だったのが、普通の真っ暗闇の視界に戻っていた。


「叶夜、何したんだ?」

「魔法の弱点になることを行っただけよ」


聞けば発動式によっては弱点を持つものもあるらしく、今のように吸血鬼の発動式なら日の光が弱点になるので、叶夜の能力で出した光で発動式を解除したらしい。


「そういえば、あの玉に入ってる穂春の力、どうすれば」

「すぐに持って行って、千聖さんに任せましょ」


難しい説明に龍助は混乱したので、一番肝心な玉の方へと話を変えた。

玉は発動式が消えたあともずっと光っていたので、まだ穂春の力が閉じ込められているのだろう。

急いで玉を持って龍助は穂春の病室へと向かった。

叶夜も倒した女達を魔法で出した鎖で拘束して龍助の後に続いた。




◇◆◇




穂春の病室に辿り着き、急いでドアを開けた。


「天地くんに、叶夜さん? どうされたのですか?」

「千聖さん! 穂春の力を閉じ込めた玉があって……!」

「龍助、落ち着いて」


切羽詰まった龍助を落ち着かせた叶夜が代わりに説明してくれる。それを聞いた千聖は何やら納得していた。


「なるほど、穂春さんの力源が弱っていた原因の一つがこれですね」

「原因の一つ?」


原因がまだあるのかと肩を落とした龍助だが、これで一歩穂春が目を覚ますきっかけになると千聖が言ってくれたので、その言葉を信じようと思った。


「力は戻しておきますので、君たちは調査に戻ってください」

「はい! よろしくお願いします」


千聖に穂春をお願いした龍助は次の階の調査へと向かうその前に、叶夜に聞きたいことがあったので、彼女に質問する。


「そういえば叶夜、さっきの女達に放った攻撃ってなんの魔法?」

「あれは風の魔法『芭蕉扇(ばしょうせん)』。言わば暴風を起こす魔法よ」


龍助の質問にツラツラと答えていく叶夜。

彼女が持っている魔法は種類がいくつかあるので、もしかしなくても、叶夜はかなりの力の持ち主なのではと感じる龍助だった。


「それより、次は二階に行くわよ」

「あ、ああ! 行こう」


叶夜に言われ、龍助も一階の調査をすることになった。

その道中に京に連絡して、七不思議の一つであった、真っ赤に光る部屋は解決したことを報告し、次は二階の方を調査することを伝えた。


『了解したよ。二人ともくれぐれも気をつけてな』

「了解です」


京に注意された二人は急いで二階へと向かっていった。



◇◆◇




二階へ到着した龍助達は引き続き廊下を歩きながら見回っていく。

一階とは違う造りだからか、すぐに迷いそうになってしまうので、出来る限り叶夜から離れないようにしようと龍助は心がけた。

しばらく歩き回って見てみたが、なんの現象も起きなかった。


「うーーん。二階には何も無いのかな?」

「そうね。京さんに連絡しましょ」


スマホを取り出した叶夜が京に電話をかけようとしたその時だった。


「あ……う……うあ」

「……え? なんか聞こえなかった?」

「聞こえたわね……」


遠くからかすれた野太い声が聞こえてきた。

聞いているだけでも恐怖心が湧き上がってくるため、龍助は警棒を取り出していた。


「見に行きましょ」

「お、おお……」


叶夜が進んでいくので、龍助も後に続く。

先程の声が先程よりもよく聞こえてきたのがより一層怖さを引き立てていた。

そろそろ声の主が現れるだろうと予想されたが、なかなか姿を現さない。

気のせいかと思った二人は引き返そうと後ろを振り向くと、そこには白い浴衣を着て白目をむいて見開き、口を大きく開けた大男だった。


「うわあああ!」

「きゃあああ!」


二人揃って悲鳴を上げ、咄嗟に龍助が警棒で大男の弱点に攻撃すると、ゆらゆら揺れながらそのまま倒れてしまった。


「びっくりした……」

「ね、ねぇ。この人ってまさか……死体じゃない?」

「は、はあ?!」


叶夜の言葉は恐ろしいものだった。

龍助は確かに弱点に攻撃したが、いくらなんでも死には至らない。それなのに、大男が全く動かない。

龍助と叶夜が半信半疑で大男を調べてようやく確信した。


これは人形でもなく死体だと言うことに……。

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