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宿命の力者  作者: セイカ
第一部 二章 七不思議編
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八話 真っ赤に光る部屋

穂春が入院している病院、福島病院で起きている七不思議、その正体が人為的なものだということが判明した。

京から指示を受けた龍助は叶夜と合流していた。


「龍助、大丈夫なの?」

「大丈夫。開いてたところから覗いただけだから」

「心配させないでよね……」

「ご、ごめん……」


叶夜の様子から彼女が必死に走って龍助のところに来てくれたことが伺えた。

自分の勝手な行動で人に心配をかけてしまうことになることをこの時に学んだ龍助は、これからはちゃんと報連相をしないといけないなと思った。


「で、例の部屋はどこ?」

「こっち」


叶夜に聞かれた龍助はあの部屋へと案内した。

先程の部屋の前に到着すると、やはり真っ赤に光って消えての繰り返しだった。


「これ、力を吸い取る魔法が発動してる」

「力を吸い取る?」

「そう『吸血鬼(ヴァンパイア)』よ」


ヴァンパイアというワードに龍助はよく聞く西洋のお化けを頭の中に浮かべていた。

どうやら吸血鬼という魔法で何かの力を吸い取って集めているらしく、集めた力を龍助が見た玉に閉じ込めていると叶夜は言う。


「とりあえず、そっと入るわよ?」

「おう」


叶夜に問われた龍助が返事をすると、叶夜は能力で自分と龍助の姿を隠し、ドアをゆっくりと開けた。

ドアを開けた先は龍助が先程見たのと同じ光景が広がっていた。

見れば見るほど真っ赤で、まるで血で塗られたような光景で気分が悪くなりそうなくらいだ。


「これをどう止める?」

「大丈夫。すぐに解除するわ」


そう言って叶夜が手をかざしたその瞬間、

どこからともなく数本のナイフが龍助達に向かって飛んできた。

間一髪で龍助が警棒で防いだが、突然の攻撃に戸惑いを隠せなかった。

姿を消しているはずなのに、的確に龍助達に飛んできたナイフは罠にしてはあまりにも出来すぎていた。


「そこにいる侵入者は誰?」

「もうバレてるから姿を見せな」


二人の女の声が龍助達の背後から語りかけながら姿を現した。

一人は真っ黒なキャットスーツをきた長髪の女で、もう一人はワンピースに上着を羽織った姿をしたポニーテールの女だった。

もうバレていることを告げられた龍助達は仕方なく能力を解除することにした。


「あら、随分可愛らしい子達ね」

「けど悪い子たちよね」


龍助達の姿を見た女達はそれぞれ違う印象を抱いた様子だが、どの道悪意を感じたことに変わりはない。


「あなた達、ここで何をしているの?」

「その言葉、そっくりそのまま返すわ」


ポニーテールの女の質問に対して叶夜が言い返したが女達はニヤニヤと気味悪く笑っているだけだ。


「ガキに教えるわけないじゃん」

「あっそ、大体予想はつくけど」


今度はキャットスーツの女があざ笑いながら言ってきたが、叶夜はなにも動じることなく言い返した。

その態度が気に入らなかったのか、女は不機嫌そうに舌打ちしたが、それより龍助は気になることがあった。


「結局こいつらは何をしているんだ?」

「穂春ちゃんの力を吸い取ってるのよ」

「……は?」


ここで穂春の名前が出てきたので、龍助は聞き捨てならなかった。

叶夜の言葉に女達は一瞬たじろいだ。どうやら図星だったようだ。

叶夜が言うにはこの吸血鬼は穂春の力を吸い取っているらしく、これを続けたら穂春が危険な状態に陥ってしまうらしい。これを聞いた龍助は腹の底から怒りが湧き上がってきた。


「なら、この玉と発動式を壊せば……」


そう言って龍助が警棒を持って真後ろの標的二つを攻撃しようとしたが、突然体が動かなくなってしまう。


「龍助大丈夫?!」

「体が、動かない」

「そんな簡単にさせるわけないでしょ?」


ふと下を見てみると足下にはいつの間にか発動式が仕掛けられていた。

おそらく女のどちらかが何かしらの魔法で龍助の動きを縛ったのだろう。


「さて、残ったお嬢さんはどうするんだい?」

「私は……」


龍助から叶夜にターゲットを変えてきた女達二人とも手をかざしながら発動式を展開し、そこから何本ものナイフを飛ばしてきた。

龍助は助けたかったが、体がいうことを聞いてくれないので、足下の発動式すら何も出来なかった。


「逃げろ! 叶夜!」


龍助の叫びは届いていたはずなのに、叶夜は逃げる気配がない。

叶夜が刺されてしまうと誰もが思った瞬間だった。

ナイフの先端が彼女の前で音を立てながら溶けてしまった。


(な、なんだ今の?!)


驚きのあまり声が出なかったが、あることに気がついた。

叶夜の周りからとんでもなくあつい熱気を感じるのだ。

おそらくだが、なにかの魔法で自分の周りの温度を高温にして、ナイフを溶かしたのだと予測が出来る。


「な、なんて力……。ムスペルヘイムを使いこなすなんて」

「ムスペルヘイムだって!?」


叶夜が使った魔法を分析したポニーテールの女が驚いて口をパクパクと魚のように動かしている。

それはキャットスーツの女も同じだった。

詳しい仕組みは分からないが、おそらくムスペルヘイムの力を加減して使ったということだろう。

女達の反応で余程ムスペルヘイムという魔法はとんでもなく使いずらい魔法なのだと認識した龍助。

同時に、それを使いこなす叶夜は一体何者なのかと疑問に思っていた。

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