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宿命の力者  作者: セイカ
第一部 二章 七不思議編
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七話 調査開始

千聖という人物のありがたみを再確認していた龍助が一つ気になることを呟いた。


「そういえば、直春さんは千聖さんに呼ばれたと聞いたんですけど」

「そうだね。僕も千聖くんにはたくさん助けて貰っているからね」


ずっと龍助達の様子を見ていた直春が答えてくれた。

直春達軍人にも千聖は役立っているようで、まさに今のように様々な所と顔見知りなので、情報収集などもしているらしい。


「千聖さん、疲れませんか?」

「大丈夫です。自分の体調管理もしてますので」


この千聖という人物は恐ろしいくらいに有能だと改めて思う龍助だった。




◇◆◇




時が過ぎるのは早いもので、もう夜中の一時になっていた。

さすがに一日で全員を移動させるのは難しかったので、今日は半分くらいの人がTPBが用意した施設に移動してくれた。

まだ人がいる入院の棟の見回りはやめておいて、今夜は診察など、一般に使われる棟の見回りを千聖以外の全員ですることになった。


「じゃあ、穂春をよろしくお願いします」

「はい、皆さんお気をつけて」


千聖に見送られた龍助達はそれぞれ担当する階に別れることになった。

龍助は三階、叶夜は二階、颯斗が一階、京が四階で直春が五階となっている。


「じゃあみんな、何かあればすぐに僕か京くんに連絡するんだよ」

「了解しました」


直春に言われた龍助達は了承してそれぞれの階へと向かった。途中まで龍助、叶夜、颯斗の三人は途中まで一緒だったが、すぐに分かれた。


「どこから回るか……」


分かれたは良いが、どこから何をすればいいのか分からず、途方に暮れていた。

とりあえず、廊下を歩いて状況を確認しようと一歩踏み出していく。


(にしても、やっぱり夜の病院は特別不気味だな)


周りを見ているのは良いが、夜の病院はまるで死後の世界かと思わせるくらい静かで常闇をさまよっている気分だった。

人がいなくなったから余計だ。

光があるとすれば非常用ボタンと非常用出口の場所を示す小さな光だけだった。それがさらに不気味さを大きくしていた。


(懐中電灯はあるけど、あまり使わない方がいいって言われたな)


懐中電灯を持っているのは良いが、その光で現象が全く起きなくなってしまっては元も子もないので、出来るだけ使わないように言われている。

しかし、龍助はあまり懐中電灯は必要としておらず、肉体の力のおかげで、早く暗闇に慣らすことが出来たのだ。

さらに目を強化させて見えやすくすることも出来る。


(こういう時は便利だよな)


能力に開花してからなかなかその力を受け入れずにいた龍助だが、ここで初めて能力がありがたく感じた。

しばらく歩いていたが、なかなか現象が起きず、それどころかなんの気配も感じなかった。


(やっぱりただの噂だったのか?)


龍助が考え込んでいると、僅かに何かの力を感じた。

近頃龍助も力やその流れ、質、濃度を感じ取ることが出来てきているのだ。

感じた力は龍助から見て右から感じたので、警戒しながらそちらへと向かっていく。

近づいてきたのか、力の濃度が先程より濃くなっており、大きさも変わっていた。


(変な力だな。まるで水が流れていくみたいだ)


龍助が感じている力は一ヶ所に留まっているが、出処(でどころ)はもっと違う場所から来ており、その場所へと流れていく。

つまり何かの力が一つの場所に集められているように感じるのだ。

流れている力を辿って行くと、ある部屋に到着した。

そこで龍助はある以上に気がつく。


(なんだ、あの光は)


龍助が目にしたのは、ドアの窓ガラスが真っ赤に点滅しながら光っているというものだった。

一定のリズムで光ったり消えたりを繰り返しており、それをずっと見ていると目がチカチカしてきて気持ち悪くなる。


(……中の様子が気になる、が)


中の様子が気になってはいるものの、勝手な行動は許されていないので、その葛藤が龍助の中で繰り広げられていた。


(いや、少し覗いてから報告するか)


結果、龍助は少しだけ中を覗くことにしたのだった。

忍び足でドアに近づくと、運良くほんの僅かな隙間くらい開いていた。

そこから覗いてみると目に飛び込んできたのは、真っ赤に光る大きな発動式と、何かの光の玉だった。

玉は光を発したり、消したりと繰り返していたので、光はこの玉から発光していたのだと分かった。


(……離れよう)


龍助は直感で、この場にいるのは危険だと判断し、音を立てずにその場から離れた。

数十メートル離れたところで龍助は京に電話をかけた。


『もしもし、龍助?』

「京さん? 一つ見つけたよ。七不思議の現象」


龍助が京に自分が見たものをそのまま伝えると、京が電話越しで唸っていた。


『ていうか、勝手なことしたらダメだろ』

「す、すみません……」

『まあいい、龍助のおかげで、これが七不思議なんかじゃなく、人為的なものだというのが分かった』


龍助の話を聞いて確信を得た京が龍助に指示を出す。


『龍助、その光は叶夜に協力して貰え。そして可能なら二人で止めるんだ』

「わ、分かった」

『じゃあ切るから。叶夜には俺から伝えとく』


そう言って京は電話を切った。

七不思議の正体が人為的なものであることが判明したからか、今夜は長い夜になりそうだと感じる龍助だった。

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