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宿命の力者  作者: セイカ
第一部 二章 七不思議編
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四話 不穏な影

穂春が入院している福島病院では七不思議が頻繁に起こるそうなので、調査することになった龍助達は早速今夜、病院で泊まることになった。

もちろん院長から承諾済みだ。

今夜は龍助と叶夜、颯斗は穂春の病室を護衛する役目を担うことになり、叶夜が病室の中に残り、龍助と颯斗が外で待機していた。

初めは龍助が中で待機することになっていたが、もしも病室内で以上が起こった時に対処出来る人が残った方が良いということになり、叶夜になった。


「京さんと千聖さんが今病院内を見回ってるんだよな?」

「そうだ。あの人達に任せとけば良い」


颯斗と二人きりになるのはこれが初めての龍助は少し戸惑っていた。

普段、寡黙(かもく)でなかなか話してくれないので、この静かな時間をどう過ごしたものかとずっと頭の中で考えていた。


「お前、妹と施設暮らしだったんだな」

「え、あ、ああ、そうだよ」


その質問の意図が分からず、咄嗟に答えることしか出来なかった。


「颯斗は?」

「俺は一人っ子だ。両親も事故で亡くなった」

「すまん……」


まさかの颯斗の情報を聞いて、どう言えば良いのか分からず、とりあえず謝ることにした。


「別に、昔のことだ」

「まあでも、俺たちも似たようなもんだな」

「そうなのか?」

「ああ、俺たちの両親は殺されたんだ」


龍助の言葉に颯斗は特に何も言わなかった。

どんな顔をしているのか横目で見てみると、特に表情を変えず、何やら考え込んでいる。


(もしかして、俺と同じ?)


颯斗も龍助の過去に対してなんと声をかけたらいいのか分からなかったのではないかと察した。


(結構わかるもんだな)


龍助はそんなことを考えつつ、気まずくなった空気を変えようと話題を探した。


「そうだ。颯斗って千聖さんの能力か魔法を見たことあるのか?」

「ないな」


龍助の質問を一言で会話を終わらせてしまった。

しかし、この短い会話の中で龍助が気づいたことがある。

それは、颯斗は喋るのが面倒というのもあるだろうが、どう答えるのが正解なのか分からないのもあるかもしれないということだ。

人とコミュニケーションを取るのはなかなか難しいことだということは龍助もよく知っている。


「まあ、なんだ。時々でいいから話し相手になってくれない?」

「……分かった」


一瞬の間はあったものの、了承してくれたことに龍助は嬉しい気持ちになっていた。




◇◆◇



しばらくすると、京達が龍助達の元へと戻ってきた。


「京さん、どんな感じだった?」

「今日は特に何も起きなかったな」

「こちらもです」


京も千聖も七不思議に遭遇することは出来なかったようだが、あることには気づいている様子だ。


「ここの病院、妙な力を感じるな」

「そうですね。それも複数」


彼らの言葉を聞いた龍助は嫌な予感しかしなかった。

とりあえず、穂春の病室に入って話し合いをすることになった。


「皆おかえり。どうだった?」


中で待機していた叶夜に今の状況を説明すると、彼女は何やら考え込んでいる。

おそらく、龍助達と同じことを考えているのだろう。


「そうなのね。もしかしてだけど、誰かの仕業?」

「そうだね。まだ確証はないけど、多分奴らだ」

「TBB?」


龍助の言葉に京が頷いた。

廃村での一件から穂春が通り魔事件までは、特に目立った動きがないらしい。


「もしかしたら、この病院をターゲットに何かをしようとしているんだろう」


この病院を狙った理由は分からないと京は言うが、おおよその検討はついているらしい。

それは龍助も同じだ。


(穂春を狙ってるんだな)


特別この病院に何があるかと言われると、一目瞭然で、そう考えると通り魔の犯人もあらかた予想がついた。

つまりは、穂春を通り魔に遭わせて、この病院へ搬送させ、何かをしようとしているのではないかということだ。


「許せない……」

「落ち着け。力が溢れてる」


怒り狂いそうな龍助を京が落ち着かせた。

無意識に力が溢れていたようで、龍助の地面が少しへこんでいた。


「まあ、怒る気持ちも分かるけど」

「で、どうするんですか?」

「穂春ちゃんの退院までしばらく夜中の病院を見回ることにしよう」


颯斗の質問に京は穂春の退院日までの間、夜中の病院を調査することにすると言い出した。

龍助はもちろん異論はなく、それは皆そうだった。

全員の意見が一致したところで、今日は眠ることになった。

龍助と千聖は念の為に穂春の病室で、京達は用意された部屋で眠ることになった。


「じゃ、お休み龍助」

「おう、お休み」


京達が出ていき、龍助と千聖と穂春だけが残った。


「天地くん、僕はもう少し起きているので、寝てください」


千聖はもうしばらく穂春の様子を見ていてくれるらしく、龍助に眠るように言った。

お言葉に甘えて龍助はベッドで横になり、目を瞑って眠りに入っていった。

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