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宿命の力者  作者: セイカ
第一部 二章 七不思議編
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三話 病院の七不思議

通り魔に遭った穂春が入院している福島病院で彼女が力者だということが判明したのと同時に、目覚める方法が分かった。


「じゃあ、千聖さん、早速穂春に治療薬を……」

「待て、龍助」


興奮気味の龍助にストップをかける声があった。それは京だった。

何事かと龍助が京を見ると真剣な眼差しで見つめられていた。


「治療薬を使うのは良いが、穂春ちゃんの力は特殊だ。かなり辛い思いをするかもしれないよ?」


突然の話に龍助は戸惑う。

力者になることはかなり簡単なものでは無い。

それに穂春が持っている力は特殊らしく、使えるまで、彼女自身に負担がかかる可能性がある。

京はそこをどうするのかを龍助に聞いている。

その返答に困ってしまった龍助。

彼自身は成長していってはいるものの、やはり力者としての苦しみはまだ続いている。

それを穂春に経験させるとなると悩んでしまう。

しかし、彼の答えは決まっていた。


「治療薬をお願いします」

「良いんだね? 君自身のこともあるけど」

「……なんとかします」


龍助の答えに京は異論を唱える気は伺えなかったが、龍助自身まだ完璧に能力を使いこなせていない。

自分のことで手一杯なのに大丈夫なのかと問われている。

その回答は龍助を困らせるものだった。


「もう京さん。意地悪はそこまでにしてください」

「いや〜〜。悪い悪い。俺達を信用していないのを見てるとついね」


千聖に注意された京が先程の真剣さをなくして、いつもの軽い口調で話し出した。


「何も、お前一人でやれとは言ってないよ。俺たちを頼れ」

「そうよ。私たちだって力の使い方を教えられるわ」

「俺はどちらでも」

「颯斗も協力するって」


京を初め、叶夜も手伝ってくれると申し出てくれたが、颯斗は乗り気ではなかった。

しかし、叶夜の代弁を否定しなかったので、協力してくれるのだろう。


「みんな……。ありがとうございます」


龍助はその場にいる力者達にお礼を言うと、穂春を見てこう決心する。


(俺ももっと使えるように練習しよう)


これは不安から来るものではなく、自分を鼓舞するところから来たものだった。





◇◆◇




穂春の今後のことは決まったので、龍助達は治療薬を使う選択をした。

治療の許可はもう既に取っていたらしいので、すぐに薬を投与してもらえることになった。


「では、早速投与しますね」


そう言って千聖は持ってきたカバンを開け、そこから注射器と治療薬が入った小さな容器を取り出した。

治療薬を注射器に流し込んで、それを穂春に投与する。

分かってはいたが、注射器を刺されてもビクともしない。


「これで、薬が効くのを待つだけです」

「ありがとうございます! 千聖さん」

「とんでもないです」


龍助のお礼を笑顔で受けた千聖はまるで聖人のように感じ取れた。


「では、僕は主治医の方と院長に報告だけしてきますね」


そう言って千聖が病室を出ていき、それと入れ違いで高原先生が戻ってきた。

少し千聖と話をした後に病室へと入ってきて、手には何かを買ったであろコンビニ袋が持たれていた。


「これ、良ければ先生達も飲んでください」

「ありがとうございます! すみません、気を使ってもらって」


高原先生が袋から出して渡したのはペットボトルのカフェオレだった。

おそらく一階にあったコンビニで買ってきたのだろう。

叶夜達も有難く受け取っていた。


「そう言えばね、さっき気になることを聞いたの」

「どんなことですか?」

「この病院には七不思議が頻繁に起こるらしいの」


唐突に七不思議と言われたが、所詮噂だろうなと思ってふと京を見てみると、彼は少し難しそうな表情をしている。


「すみません。その話、詳しく聞いても良いですか?」

「いえ、私もそれくらいしか聞けていないんです」


京が詳しい情報を要求したが、高原先生もここに戻って来る途中にいた人達の会話を偶然聞いただけらしく、詳細は不明らしい。

気になるところだが、それよりも高原先生が少し様子がおかしいことの方が気になる龍助。


「龍助くん。この後予定は?」

「え、どうしてですか?」


あれこれしていると、高原先生が唐突に聞いてきた。

質問の意図を知りたくて龍助は詳しく聞いてみる。


「実は、今施設の仕事がまだ出来てなくて……。急ぎではないけど、もし龍助君がいるなら一度戻って終わらせたいの」


聞けば、穂春が通り魔事件に遭遇した連絡を突然もらったため、まだ終わらせてない仕事が多々あるらしい。

龍助としてはもちろん大丈夫投与言いたいところだが、この後の予定が分からないので、京に聞いてみようとした。


「大丈夫ですよ。龍助くんはこの後予定はないです」

「あ、本当ですか! じゃあ、お願いして良い?」

「もちろん大丈夫です」


龍助が聞くより先に京が伝えてくれたので、高原先生も安心しきった様子で龍助にお願いし、それを龍助は快く承諾した。

すぐに先生は荷物を持って病室を出ていった。

仕事を終わらせたら明日また来てくれると言ってくれた。


「高原先生、帰られたのですか?」

「ああ、仕事が残っているらしいよ」


院長達に報告し終えた千聖が戻ってきた。

事情を聞いて納得した千聖はある話をし始める。


「実は先程、この病院にある七不思議のことについてお聞きしました」

「詳しく聞かせてくれるかい?」


京に頼まれた千聖はこの福島病院の七不思議のことについて話してくれた。





◇◆◇




今まで、福島病院は普通の病院だったはずだが、一か月前から不可思議な現象が起き始めたそうだ。

現象は次の通りだ。

一つ目は夜中の病院を動き回る霊安室の死体。

二つ目は真っ赤に光る部屋。

三つ目は動き出す中庭の地面。

四つ目は彷徨う人魂。

五つ目は長くなる霊安室へと続く廊下。

六つ目は手術室の片目女。

七つ目は屋上の幼い霊。

というものだった。これらを聞いて、どれもありそうでなさそうな範囲の現象だなと思う龍助。


「調査した方が良いかもね」

「はい、穂春さんが入院していますし」


突然七不思議を調査すると言い出した京に驚きを隠せなかった龍助だが、確かに千聖の言う通り、穂春が危ないかもしれないとも思った。

ここから任務では無いが、大変な調査をすることになったのは間違いないなと察した龍助だった。

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