表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宿命の力者  作者: セイカ
第一部 六章 学校編
222/232

エピローグ

 七月二十日。本格的な夏になり始め、誰しもがその暑さを鬱陶しく感じてきている日。


 龍助はいつものように叶夜と登校をしていた。


「今日も暑いね……」

「ほんとだな。まあでも、俺は今悩みから解放されてるから」

「悩みって……もしかして舞日さんのこと?」

「そうだ」


 龍助は昨日の出来事を叶夜に全て話した。

 自分たちが付き合っていた事は嘘だったことを話したが、舞日にチャンスが欲しいと頼まれ、考えた末に彼女を知ってみようと考えたこと。


 叶夜は黙って聞いていたが、龍助が全て話し終えると、彼女は暗い表情をしていた。


「叶夜? どうした?」

「そうだよね。嘘は良くなかったよね」

「? 付き合ってるって話か?」

「そうだね。だから私も正直に話すわ」

「何を……?」


 龍助が聞き、叶夜が意を決して、彼に向き合いながら話出そうとした時だった。


「龍助くん、叶夜さん! おはよう!」

「あ、ああ木闇さん。おはよう」

「……おはよう」


 いつの間にか二人の近くに舞日の姿があり、彼らに挨拶をしてきた。

 龍助も叶夜も今まで苗字で呼ばれていたため、下の名前で話しかけられたことに驚いている。


「龍助くん。昨日の話考えてくれた?」

「ああ。そのことなんだけど……」

「その前に舞日さん」


 舞日の質問に答えようとした龍助の言葉を遮るように叶夜が話し出す。


「どうしたの?」

「悪いけど、龍助を易々と渡す訳にはいかないわ」

「あら? 二人が付き合ってたのは嘘でしょ?」

「そうよ。でもね、私も龍助のことが好きなことが本当だとしたら?」

「……」


 叶夜の突然の告白に舞日は黙り込んでしまう。

 しかしこの告白に一番驚いているのは龍助本人だった。


(……え? 叶夜が? 俺の事を……?)


 まだ現実にいる感覚が戻らず、混乱している龍助を置いて、黙っていた舞日が口を開く。


「そうだろうと思ってたわ。でも、私は諦めないわ」

「そう。じゃあ、これからはライバルね」

「そのようね。負けないわよ」


 自分たちの世界に入り込んでいる二人を前に、龍助は突っ立っていることしか出来なかった。


「龍助。これから私たちはあなたを取り合うライバルだから、よろしくね」

「絶対に振り向かせてみせるからね」

「……」

「「返事は?!」」

「はい!」


 息の合った二人の圧に押されて龍助から頓狂とんきょうな返事が出てくる。

 その返事に叶夜と舞日は満足そうに頷いて、歩き出していく。


(いや……。俺の話は聞かねえの……?)


 勢いよく歩いていく二人を背後から見つめる龍助。

 自分が話そうとしていたことをすっかり忘れてしまっていることに対して思うところはあるが、二人が活き活きしているのを見てると、そんなことはどうでも良くなってきた。


(まあでも。良い機会だし、二人のことをもっと知ろうかな)


 叶夜達を見つめながら、龍助はそんなこころざしを持って後を追うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ