第三十四話 お見舞い
TBBの支部だった異空間を達春の能力によって完全に分解して消し去った後、龍助達は帰る前にTPBへと向かっていた。
京の様子を見に行きたかったからだ。
京は今回のボスだった男との戦闘で大分重症を負っていた。
TPBに戻った際に千聖の治療を受けて今は安静にしていると春永が教えてくれた。
「それにしても春永さんから許されて良かったな」
「ええ。本当に」
舞日は春永を襲った張本人だったため、TPBに行く前にお互いに話し合っていたのだ。
と言っても、千聖が話を通してくれていたから舞日が謝罪するだけで終わり、春永も今後の行動をしっかりしてくれたら良いと快く受け入れてくれた。
「あの……」
「どうしたの? 木闇さん」
「皆にも謝っておきます。今回は迷惑かけてごめんなさい」
突然舞日が謝罪の弁を述べてきた。
あまりにも急なので龍助は戸惑ってしまう。どう言葉をかけたものかと。
「木闇さん。春永さんの言う通り、本当に反省してるなら、これからきちんと働いてね」
「分かったわ。よろしくね。光金さん」
叶夜の言葉をしっかり受け入れたようで、その気持ちを表すように、舞日が手を差し伸べてくる。
それを見て、叶夜も手を差し出し、お互いに握手を交わした。
(この二人ならもしかしたら光と闇関係なく上手くやっていけそうだな)
握手している所を見て、二人が仲良くすることをただただ祈る龍助だった。
◇◆◇
TPBに到着し、すぐに医務室へと向かっていく龍助達。
京がいるという六十三号室と書かれた医務室の前に到着する。
引き戸のドアにノックしようとした瞬間、先にドアが横にスライドして開く。
「おや、天地くん達じゃないか」
「秋蘭さん」
ドアを開いて出てきたのは千聖の助手をしている秋蘭だった。
こうして会うのは数日ぶりくらいだ。
「京さんの治療してたんですか?」
「いや。彼のメンタルケアをしていたんだよ」
「メンタルケア?」
「そう。彼も強敵との戦いで精神的にも負荷がかかっていただろうからね」
本当は千聖がする予定だったが、彼にも用事があったため、代わりに秋蘭がメンタルケアをしていたようだ。
「それじゃ。あとはよろしくね」
「あ、はい」
秋蘭にあとを任された龍助達が病室の中へ入っていく。
一応ノックをしたらいつもの京の声が聞こえてきて龍助達は安堵する。
ドアを開けると、ベッドで横になっている京の姿が目に入ってきた。
「来てくれてありがとな」
「いえいえ」
京のお礼に龍助が簡単に返事をする。
そして龍助達は差し入れに持ってきたお菓子を近くの机の上に置き、京がTPBに戻った後の話をした。
「そうか。達春くんはちょっと特殊だからな〜」
「特殊?」
「本人のいない場所で話す訳には行かないからね」
龍助がさり気なしに聞いてみたが、京はいつもの調子で軽く受け流してしまう。
だが逆にその反応だけで、達春はある意味訳ありな青年なのだろうとその場にいた全員が察したのだった。




