第二十八話 抑えるための力
前回ボスの男を倒そうと奮闘していた龍助達。
しかし男が大掛かりな魔法で空間ごと崩そうと企んでいた。
絶体絶命のピンチの中、龍助達は半分諦めている。
京はかなり疲労しており、龍助と颯斗はこの魔法の解除と阻止する方法を知らない。
誰もが判断が出来なくなってしまっていた。
しかし、
「……まだだ! 絶対、諦めない!」
龍助が自分にかけていたネガティブな言葉を振り切って、前へ出る。
「よせ! 龍助!」
「京さん、弱くても良いからこの空間を抑えるように意識してください!」
「えっ……。あ、なるほど! 分かった!」
京が止めようとしたが、龍助が逆に大声で押し切ってしまった。
京は何を言われていたのか分からなかったが、すぐに理解し、了承して力を使い始める。
「龍助、何を……!」
「颯斗! 今は能力を全力で使って俺の力を強化するんだ!」
「ッ! 了解しました!」
京に言われた颯斗もすぐに理解したようだ。
すぐに京の力の流れを能力で限界まで強化していく。そして更に、龍助はヘラクレスを使って強くしていった。
そう、龍助が立てた作戦は単純明快。
今京の力が弱っているなら、自分たちの能力と魔法を使って男より上回ろうというものだった。
問題は、元から力だけで言えば男の方が上であり、能力と魔法だけで越えられるか、ということで。
(どこまで上げれるか分からないけど、今はこれしか出来ない!)
これは完全な賭けになる。
どこまで上げれているのか数値化したいところだが、今は力を注ぐことに集中する龍助。
三人の力が合わさり、力が大きくなってきたのか、瓦礫と床の津波が少しずつ小さくなってくる。
大津波程の大きさがさざ波程度の小ささまでには。
(よし! この調子で……!)
もう完全に波がなくなってきて、余裕が出来てきたその時だった。
「隙だらけだな」
男の声が聞こえた瞬間龍助達は我に返った。
慌てて男の方を見たが、その姿が見当たらない。
「上だ」
声のする方へ視線を向けると、そこには空中で仁王立ちをしている男がいた。
さらに男の手には稲妻の槍が握られている。
「その魔法は囮だ」
そう言った男は稲妻を握っている手を振りかざし、それを思いっきり振り下ろそうとした。
「させない!」
だが、突然少女の声が聞こえてきた直後に男の手が凍った。
「ぐあっ!?」
「あの氷は!」
男が冷たさのあまり凍った手を抑える。
その様子を見て、龍助達は混乱の渦に飲み込まれるが、先程まで抑えていた津波の力が無くなっていた。
「もしかして……」
「おーい! 大丈夫?」
龍助が何かを察したのと同時にまた別の少女の声が聞こえてきた。
いつも明るく自分を励ます声が。
声のする方へ振り向くと、そこには予想通り、叶夜達三人が立っていた。




