第二十六話 追い詰められた京
多数いた敵の手下達を一気に倒した龍助達が京のいる空間へと戻ると、彼が押されている姿を目撃してしまう。
服はボロボロ、腕や足だけでなく頭からも血が流れて赤い線を作っていた。
「京さん!」
龍助達が京に近寄り、体を支えて立たせる。
近くに来た時に気がついたが、息もかなり上がっている。
「大丈夫?!」
「ああ……。なんとか。だが、かなり負傷してしまったよ」
「すぐに治癒魔法を」
龍助の質問に笑顔で答えた京だが、至る所が負傷していたため、すぐに舞日が治癒魔法で直していく。
「よそ見してる場合か?」
京に気を取られていた時に男が光線を繰り出して龍助達に攻撃してきた。
しかし手が空いていた叶夜がすぐにオハンを展開して防いでくれる。
「ふんっ。裏切り者を排除しなくてはならないのに……。邪魔だな」
「そう簡単に事を進ませないわよ」
鼻を鳴らした男に言い放つ叶夜。
その態度が気に食わなかったようで、男の体から力が溢れ出ていた。
「ならお前から消してやろう」
そう言いながら男は手をかざす。その瞬間に叶夜の目の前が一瞬光ったと思えば、爆発した。
「きゃっ!?」
「叶夜?!」
叶夜のピンチに龍助が助太刀しようとしたが、今度は龍助の背後に先程と同じように光が現れ、同時に爆発する。
「ぐあッ!」
予想だにしなかった現象に龍助は対処しようとしたが、まともに食らってしまう。
爆発で起こった煙がその場にいる者達の視界を覆っていく。
「二人は?」
「まだ動いてはダメです!」
「だが、俺だけ休んでいるわけにはいかない……!」
舞日に止められるも、それを振り切って立ち上がる京。しかしその足は覚束ず、しっかりと立てないでフラフラしている。
「さて。そろそろお前にもトドメを刺してやろう」
煙の向こうで力を身体中にまとった男がゆっくりと一歩一歩京達に近づいてくる。
そして力を集め、固めて作った巨大な弾を京達に向かって飛ばした。
禍々しい力を持った弾が京達の目前にまで来て、絶体絶命となっていた。
しかし、
「だから簡単には事は進ませないわよ」
叶夜の声と共に黄色く光る防壁が京を守るように周りに現れる。
この防壁は紛れもなく叶夜のオハンだ。
オハンと力の弾がぶつかり合う。一瞬オハンが押されているように見えたが、徐々に押し返していく。
「さっきよりも強化されてる……?」
「本当だったら颯斗の役割だし、あいつほどじゃないけど……!」
今度は龍助の声が聞こえてきた。
「二人ともどこだ?」
「ここだよ」
京の隣にいつの間にか龍助が立っていた。
いつもの京なら力で感知して見つけるのは容易い。
しかし今の彼の状態ではそれすらも困難になってしまっていた。
「龍助! 無事だったか!」
「京さんに比べたら全然平気だよ」
ダメージを食らっていた龍助だが、実は反射的にヘラクレスで強化した腕で防御していたのでそこまでではなかった。
「京さんは大丈夫?」
「ああ。だいぶ回復した」
龍助に心配された京は先程よりもしっかりと立ち上がり、肩をぐるぐる回して見せる。
舞日の治癒魔法でだいぶ回復出来たようだ。
「クソッ。厄介者が復活したか。なら……」
龍助達の様子を見て痺れを切らしたのか、男が手から電撃を放とうとする。
油断した龍助達がすぐに動き出そうとした。
しかし、それより前に男に向かって複数の魔弾が直撃する。
さらに彼の足下には緑色の霧が現れ、男にまとわりつくと、彼の体を石化していく。
「兄さん! ご無事ですか?!」
「無事みたいだな。ダメージは負ってるみたいだが……」
龍助達とは反対側の出入口を見ると、そこには穂春と颯斗が立っていた。
二人はすぐに駆け寄り、龍助達の無事を確認する。
「ようやく作戦通りに動けるな」
「皆構えろ」
全員集合したことで当初の目的に戻ることになる。
ここからは龍助達全員が男を倒すべく動き出すのだった。




