第二十四話 出入り口の復活
舞日を半信半疑で仲間に加えた龍助達は月桜高等学校の地下へと降り立つ。
そこでは一般人を使った研究が行われいることを知った。
その薬が置いてある空間へと向かおうとするが、それを阻止するかのように何者かによって今いる場所に閉じ込められてしまった。
「のこのことここに来るなんてな。愚かな奴らだ」
「読まれてたというのは本当だったみたいだな」
黒服の敵達を率いていると思われる一人の男が前へ出てくる。
丸刈りが特徴的な彼はそこまで身長は高くないが、その分体格が良い。
しかも、その体からはとてつもない力が溢れだしている。まるで威嚇をしているようだ。
力だけで言えば、京よりも上なのは確定していた。
「君、相当力が強いな」
「薬を使ったからな」
「ここの薬かい?」
「そうだ。とでも言っておこう」
京による質問の攻撃を男は軽く受け流している。
次々と攻防が繰り広げられていたが、先に京の質問が止まってしまう。
ある程度の情報は取得出来た、とは言えないが、京は満足そうに笑っていた。
「何を笑っている?」
「んー? それは秘密」
「気味悪いやつだな」
男は舌打ちをすると、片手を上げる。
すると周りの黒服達が龍助達に手をかざしたり、持っている魔具を向けてくる。
「やっぱり生きて帰してはくれないか」
「逆になんで生きて帰れると思った?」
京のボヤキに男が呆れ果てたような顔でため息を吐いていた。
自分たちの秘密を知られて易々と見逃す人間はおそらくこの世に存在しないだろう。
「じゃあ戦うしかないか」
「俺より弱い力で何をほざく」
京の言葉に男は鼻であしらった。
自分が京より強い力を有していることを自覚している上に、彼に勝てると確信しているようだ。
「もちろん俺だけで戦わないからね」
しかし京は怯えたり、慌てたりする様子はなく、余裕があるように笑っている。
男は不快そうに舌打ちをすると、挙げていた手を振り下ろそうとした。
「君はまだ詰めが甘いよ」
男が動き出す前に京がそう言いながら指を鳴らす。
すると一度地響きが起こったかと思うと、先程まで壁に変わっていたはずの出入口が再び姿を現した。
「な?! どうやって……」
「みんな散らばれ!」
男が動揺して標的から目を逸らした隙に龍助達はそれぞれ出入口に向かって二手に別れた。
なぜこうもスムーズに動けたかと言うと、先程から京による念話で指示を受けていたからだ。
京が空間の作りを理解し、抜け道を再び出現させるから合図と共に散らばって敵を誘導するようにと。
「小癪な! 今すぐ追え!」
「了解!!」
男の指示に手下である黒服達は皆逃げ別れた龍助達を追って行った。
京の作戦は散らばった敵をそれぞれで相手をして、倒しきったら戻って男を全員で倒すというものだ。
それまで京自身が男を相手に時間稼ぎをするらしい。
この強引すぎる作戦が果たして幸をなすのかは分からないが、今は出来ることをするしかないという状況だったのだ。




