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宿命の力者  作者: セイカ
第一部 六章 学校編
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第二十三話 支部の空間

 TBBの支部があるという月桜高校の地下への道は抜け道を入れて三つある。ちなみにその道は知る人のみしか知らないくらい分かりにくいとされている。


 はずだった。


「いたぞ! 早く捕らえろ!」

「そっちに行ったぞ!」


 抜け道に入って数分後に、なぜか見張りの力者に見つかり、続々と現れては龍助達に襲いかかってきた。

 バレずに侵入するという目的はあっさりと失敗に終わってしまう。


 追ってくる力者と捕らえようとする力者、前後で挟み撃ちにされていたが、京を初め、龍助達も撃退していた。


「……騙したか?」

「ごめんなさい……。これは私も予想外よ」


 問い詰められる舞日は先程までの余裕がなく、かなり戸惑っていた。

 誰しもが騙されたと思うところだろうが、舞日も敵の力者を凍らせたりして迎撃げいげきしていたので、本当に予想外なのだろう。


「おそらく、指揮している力者が予想していたのでしょうね」

「なるほど」


 叶夜の予測に龍助も納得する。

 それと同時に、先程まで舞日に殺意に近い感情を向けていた叶夜とは思えない言動に一同驚いていた。


「叶夜はなんでそう思ったんだ?」

「木闇さんからは嘘が感じ取れなかっただけよ」

「もしかして覚を使った?」

「使わなくてもそう感じてるわ」


 龍助からそっぽ向いた叶夜だが、彼女は心からそう思っていたのだろう。

 あまり深追いしたら叶夜に燃やされそうなので、渋々諦めた。


「とにかく、先を進もうか。また応援が来るかもだ」

「では先に案内します」


 京に言われた舞日がすぐに先陣切って歩いていく。

 少し危なっかしい女の子だなと感じるが、叶夜と同じくらい頼りになるなとも思えた。




 ◇◆◇




 抜け道に入ってから約十数分後にようやく支部の部屋の一部へと辿り着く。

 ここに来るまで何人の力者に襲われたかもう分からないくらいぎ倒していた。


 抜け道は倒れた力者で埋まって後戻りしにくくなってしまう。


「抜け道の時点でやりすぎたか?」

「やりすぎましたね……」


 龍助が抜け道へ振り向いて小さく呟いたが、妹の穂春はしっかりと聞いていた。

 妹の発言で龍助は項垂うなだれてしまう。

 部屋へ辿り着いた時点でかなり疲労しているからだ。


「まあ、龍助の場合は精神的に疲れてるんだろうな。俺たちが部屋を調べてる間は休憩してな」


 疲れている龍助を珍しくいたわりつつ、部屋を見回していく。

 今いる部屋は特に目立つものが無いくらい白い部屋だ。


「ここってなんの部屋だ?」

「……実験台になる人を閉じ込めとく部屋です」


 舞日の口から突然非人道的な事実が出てきて、思わず龍助達は唖然としてしまう。


 舞日曰くこの部屋、正確にはこの異空間は集めた一般人を閉じ込めていたらしい。

 ここから順番に人を実験台にしていたそうだ。


 閉じ込められた挙句に、実験台として殺された被害者のことを考えると気分が悪くなってくる。


「じゃあこの空間には何も情報はないか」

「この奥が研究室です」


 まだ気持ちの整理が出来ていない龍助だが、舞日を初め、京達も続いて行ってしまう。

 着いてからわずか数分だが、能力で回復出来た龍助も後を追って行く。


 ついて行くと真っ白な空間から一転して、暗い空間へと変わる。

 暗いことに変わりはないが、データを映し出す巨大なモニター画面の光で周りが見えている。

 さらにデスクにあるパソコンの光もあったから余計に明るかった。

 デスクが何台も等間隔に置かれており、その中心には一台の手術台ベッドがあった。


(ここで薬を注入していたということか……)


 手術台ベッドを見つめて、一般人が実験台にされている場面を頭の中で想像してしまう龍助。

 考えただけでも吐き気を感じて目を背ける。


 そんな彼をよそに、京達は次々と書類などに目を通したりパソコンの内容を確認したりと物色していく。

 傍から見たら泥棒のようにも見えてくる。


「なるほど。薬は一人の力者の力から取り出し、魔法で液状化して薬草などと混ぜていた訳か」


 何やら京が一束の書類に目を通して理解している。

 彼の言葉からそれが薬のレシピのような役目をしている資料だということが伺える。


「薬はこの隣の空間にあるみたいです」


 パソコンを見ていた颯斗が次の情報を提示してくれる。

 彼によるとパソコンのフォルダの中に在処ありかが示された図があったらしい。


「よし、じゃあそこへ行くぞ」


 次の目的地が決まったということで、すぐに京が龍助達に移動するよう指示を出した。


 龍助達が京の指示通り動き出そうとした、次の瞬間。


「行かせるわけないだろ?」


 男の声一つが語りかけ、龍助達の動きを止めた。

 さらに声が響いた直後に今いる空間の出入口が壁へと変わっていってしまう。


「閉じ込められたか……」

「当たり前だな。侵入者は排除しないと」


 京のボヤキに声が答えると突然龍助達の目の前に一つの光が現れる。

 光は一瞬で広がり彼らを包み込んだ。


 目を守るように瞼を閉じてしまうが、光に慣れて徐々に開けると、そこには多数の黒服達が立っていた。

 さらに龍助達の目の前どころか周り全体を黒服達が埋めてしまっている。


 この時点で龍助達は自分たちが袋の中のネズミ状態に陥ってしまったことを悟ったのだった。

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