三十五話 京の過去
孝介とATOの契約が済み、今龍助は、京と空き部屋で話をしていたが、少し気まずい空気になっている。
しかし、彼はどうしても聞きたいことを口に開く。
「京さんとあの清って人と何があったの?」
「……まあ、一応聞く権利は君にはあるか」
龍助に聞かれた京が一呼吸置いてから少し面倒くさそうにして話し始める。
「あいつが言った通り、俺達は高校の同級生だった」
ゆっくりと語られたのは京達の高校時代の話。
京と清が出会ったのは高校一年生の時、偶然同じクラスになったらしい。
そして、この時にもう既に力者だとお互いに勘づいていたとのこと。
「まあ、苗字を聞き、力を感じ取った時点で『十三大貴族』の一員だというのはすぐに分かった」
「じゅうさんだいきぞく?」
「ああ、日本の力者の中でもずば抜けて強い力を持つ一族のことだ」
龍助の質問に京がスラスラと答える。
十三大貴族とは、日本における力者の名家達のことで、十三の家を総じて呼んだものらしい。
この一族の出身の力者は並大抵以上の力を有しているという。
「そして、俺も清もその中にある七坂家と一ノ宮家の出身だ」
「そうなんだね」
十三大貴族は文字通り、十三まであり、京と清はそれぞれ家は違うが、同類と言っても過言では無い。
そういう接点から二人はよく話すようになったらしい。
「昔のあいつは大人しく、人畜無害を絵に描いたようなやつだった」
京から話された清の人物像が意外すぎて、少し呆気に取られてしまう。
「でも……」
「……でも?」
京がそこまで言って黙ってしまう。
龍助が続きを促すと、深呼吸をしてから京が再び口を開いた。
「あいつは突然変わってしまった。なんの前触れもなく」
「どう変わったの?」
「……人を陥れるようになったんだ。最悪死んだやつもいた」
急展開な話になって龍助は困惑した。
京と仲が良く、優しい清がそこまでに落ちてしまう出来事があったかと思うと龍助は恐怖で震える。
「なんで、そんなことに?」
「こればっかりは本人しか分からない」
つまり京は、清が変わってしまった原因については何も知らないということだろう。
京に分からなければ誰にも分からない。
ただ、言えるのは今の清はかなり危険だということだ。
京があれだけ敵意を剥き出しにして殺そうとしたのだから、それだけでも危ないというのが分った。
(実際、力量が半端なかったもんな)
威嚇するだけで周りのものに亀裂を入れるだけの力を発していた光景が龍助の目に今でも焼き付いている。
狂った上に京と同等の力を持つ清はあまりにも要注意人物だと言えた。
「話せるのはこれくらいだ。そろそろ帰ろう。施設まで送るよ」
明るく仕切り直した京だったが、彼の背中からは悲しみと後悔が溢れている。
そんな風に龍助は感じた。




